最初に。
戦火の下にあるウクライナの人々への連帯の想いをこめて、再度かの国の国旗を
掲げておく。

まずは、私事から。
2月24日。プーチンが自国民に向けてドネツクのドンバス地方で軍事作戦を実施
すると発表したというニュース、事実上のウクライナ侵攻を、私がテレビの
ニュースで聞いたのは、ブログに『ロシアはウクライナ侵攻までやるだろう』と
書いていたまさにその時だった。
それが昼の12時過ぎ。
いったん記事を書くのを中断して昼食を食べようと、電子レンジのオーブン
機能を使っていたら、ブレーカーが落ちて家中の電気が消えてしまった。
うっかりしてしょっちゅうやってしまうのだが、我が家は契約アンペア数を低く抑えて
いるために暖房とオーブンなどを使うとすぐヒューズが飛んでしまう。
しかしいつもなら、分電盤を開けて、ブレーカーを押し上げれば、再びすぐに
電気はつくのだが、昨日はなぜか、いろいろやってみても待ってみても、回復しない。
困ったな。今はまだ昼間で明るく、そう寒くもないけれど、もし今日中に回復
させておかないと、暖房なしになって夜は大変だぞ…
我が家は福島第一原発事故とその後の姿勢への抗議の意味を含め、東電と
決別したくて、電気も東京ガスにまとめてあるのだが、さて、困った、東京ガスの
相談窓口に電話かけてみようと思って受話器を取ったが、電気が通っていないので
電話が使えない。それでは携帯、と思ったら、充電が切れていた!!!
私はもうほとんど人との付き合いというものがないし、外にも出て行かないので、
ガラケーさえ実はほぼ使わない。それで、充電が切れているということが
しょっちゅうなのだ。 なんと、いざ災害という時の心構えのないことか!!!
近くに住む娘のところに行って電話を借りるか。でも今日は留守だ。
それに、今は、コロナ拡大中だから……
仕方ない。幸い歩いて3、4分のところに公衆電話があるので、そこに行って
かけようと思って家を出たら、慌てていてマスクをつけるのを忘れていた!
まあ、ひとともそうすれ違わない通りだしいいか、と思って(横着だ!)財布を覗くと、
百円玉がなく、50円、500円玉しかない。公衆電話では十円玉か百円玉
しか使用できない。十円玉では何枚入れてもすぐ切れてしまうだろうし。
さあ、また、困った! 家まで戻るか? そうだ、近くの自販機でジュースでも買って
千円札を崩せばいいじゃないか。
で。さっそくそうして、再び公衆電話に戻った。
だが。いまは、こういったことはほとんどすべて自動音声による案内である。
操作案内に従ってボタンを、1,2、などと押して進むのだが、やっと通じた!と
思っても、『ただ今電話が大変混みあっていますので、このままお待ちになるか
おかけ直しください』という例のメッセージが延々と続くだけである……。
その間に2枚3枚と入れた百円玉はあっという間に消化して、ああ!電話が
切れてしまった!また最初からやり直しだ。5,6枚入れておけばよかったなあ…
でもあの調子では、千円、二千円使ったとしてもはかばかしい答えを得るところ
まではたどりつけないかもしれない…
公衆電話が一向にらちが明かないなら、仕方ない、携帯を使えるように
電気店に行って、モバイルバッテリーを買うか。その方が早いかもしれない。
東京ガスの復電の操作方法を聞き取るにも、携帯がないと不便だからな……。
家電店に一応充電切れの携帯やケーブルも持って行った方がいいかもしれないな、
そう思って、家に取りに帰って、念のためもう一度操作してみると、電気がつくように
なっていた!
単にブレーカーが落ちて、すぐには元には戻らなかった、日ごろの心がけ悪く、
携帯も充電切れだった、それだけのことである。
しかし。
福島第一原発事故の際、電気がつかない、暖房も電話も使えない、ということが、
現代の生活ではどれほど心細く不便なことか思い知ったはずなのに、この始末。
再び暖房がついて暖かくなった部屋で、なにかこう…しみじみと一人で生きて
いくことの大変さを思った。私のように、自由で豊かで安全な国にいてさえ。
さらには、我が家の電気は東京ガス。東京ガスの発電の80%ほどはLNG(液化
天然ガス)によるものであり、そのLNGの輸入先はオーストラリアが最も多いが、
ロシアからも一割ほどは輸入しているという。
つまり、私が電気がつかないと今困っているその電気の一部はもしかしたらロシア
からの液化天然ガスによるものなのかもしれないのである…
と書いても、ロシアとウクライナの戦闘が長引けば、ロシアからのLNGが止まり、
電気代やガス代が上がるかもしれない、などということを怖れているわけではない。
一人暮らしの我が家では、その値上げ分くらいは他を削ってなんとかできる。
(だが、寒冷地の人々、企業、商店など、電気代の値上げが大変に響く人々も
多くいらっしゃることだろう…。)
私が憂えたのは、そして切実に思ったのは、このたびのロシアによるウクライナ
侵攻は、決して遠い国の出来事ではないぞということである。あらゆる面で。
なによりも。しみじみと思いを馳せたのは、今、戒厳令下にあるウクライナで、
ロシア軍の砲撃を怖れて、地下鉄のホームなどに避難している人々のことである……
ウクライナのキエフあたりは、調べてみたら、今、およそ札幌ほどの気温である。
住み慣れた暖かい家を出て、吹きさらしの風も入ってくる地下鉄のホームで
毛布にくるまって極寒の夜を過ごす人、人、人、人………
どんなに、どんなに寒いことだろう!!!しかもそれはいつまで続くかわからないのだ。
なんと!この地下鉄の駅で、この間、赤ちゃんが三人生まれたのだそうだ。
勿論地下鉄の駅には医療装備などない。赤ちゃんの一人は亡くなったという…
同じく住み慣れた我が家を捨てて、ポーランド、ルーマニア国境などまで
幼い子供などを連れて避難する人々の長い車列。歩いて避難する人の群れ……
中には私よりもご高齢の婦人もいた…。
さぞ寒かろう…食事やトイレはどうしているのか…
国家総動員令がかけられ、18歳から60歳までの男子は国外に出ないように、
命令されているそうだ。いざとなれば、彼らもまた兵士として戦う。
国境の町で、家族と別れを告げる青年…涙で見送る家族…
いのちの危機に怯えながら、いつ帰れるかわからない旅路に、彼らは理不尽にも
追いやられてしまったのである。
数日前までは、家族とともに、暖かい家であたりまえのように暮らしていけて
いたのに……。
家に残るにしても、長引くかもしれない戒厳令下の退避生活。食料や生活必要品を
備蓄しておくにも、おそらく、じき通常の流通はストップして店の棚は空になるだろう。
よそに避難するにも多額のお金を用意しておくことが必要だろう…だが、
もたもたしていると、現金の引き出しも出来にくくなってしまうかもしれない…
カード、電子マネーなども、ロシアのサイバー攻撃によって使えなくなるかもしれない…
今はまだライフラインは切断されていないが、それが切られれば、電気も暖房も
勿論使えない…それは即、この極寒期、ウクライナの民の生命の危機を意味する。
こんなことに一体なんの正義がある?
プーチンがどんな理由を言い立てようと、いったい彼にどうしてそのような
権利がある?
プーチンが長い期間周到にウクライナ侵攻を計画していたにしても、 なぜ
今のこの時期に侵攻に踏み切ったのか、ということに関してはいろいろな専門家が
その考えを述べているけれど、彼はこの酷寒の季節だからこそ今を選んだのでは
なかったのか、と、家の電気が止まってあたふたしながらも私は思ったのであった。
酷寒の季節の戦闘状態。それは、ウクライナの人々を極限状態に追い込み、
意気を阻喪させるだろう…プーチンが排除したいゼレンスキー政権への批判が
ウクライナ市民の中で高まる可能性もある…
ドイツなど、天然ガスをロシアに多く依存するEUの国々、NATOの加盟国には、
寒さの中、ガス輸出を止めるぞ、ということは大きな威嚇になるだろう……
もう一つ、これもまた、私のまったく私だけの考えであるが、このたびの北京冬季
オリンピック。そこでのあの女子フィギュアスケートのワリエワ選手のドーピング
問題に関し、世界の目がロシアに大変に厳しかったということ。そもそも
ロシアは国ぐるみのドーピング疑惑で、オリンピックやその他の国際大会で、
『国』としての参加が出来なくなって、選手個人の参加、となっているということは
周知のとおりだと思うが、プーチンのような『強いこと』『国の威信』に対する情念の
非常に強い政治家にとって、世界の仕打ちを許せない!と思う気持ちは、
さらに増して、憎悪を募らせたのではなかったろうか、ということである。
私はこの二回の記事のサブタイトルを、『理に基づかない政治』とつけた。
そして、私がここで使う『理』という言葉の意味として、
「人間が長い間に培ってきた知恵、倫理に照らして、深く徹底的に考えれば、
当然こういう結論が導き出せるだろう』と思われるような、『ことわり』『道理』のこと
である」と断り書きをしておいた。
それでは、その『理に基づく政治』の反対は何かというなら、私は『情念の政治』という
ものではないかと思っている。私だけの定義だが。
「え?『情』は大事なのではないの?逆に、『理』詰めの政治というと冷たい感じがする」
という疑問は当然抱かれるだろう。
確かに。
ただ、私のここで言う『情念の政治』とは、「他人を思いやる、弱者を大切にする、
などという『情』の普通に使われる意味とは少し違う。
いわば、政治家個人の『私的感情』、『私的怨念』というものが先に立つ政治のこと
である。
プーチンという政治家の個人的生い立ち…大国であった旧ソ連への想いなど、
プーチンという人物の過去や人となりが今、いろいろに掘り返され報道されている。
KGB情報将校として忠誠を誓ったソ連という国家が、あっけなく崩壊していくのを
目の当たりにする…アメリカを中心とした自由主義国というものが、敗者である
ソ連に対しどういう態度をとり続けてきたか……
私は、旧ソ連が崩壊した時、
『ああ・・・!これで、世界は、アメリカを中心とした自由主義国、資本主義国の
価値観一色になっていくのだろうな…』
と、嫌~な予感がしたものだ。
なにも、旧ソ連を中心とした共産主義陣営とアメリカを中心とした自由主義陣営の
間で冷戦状態が続き、下手をすると一触即発、核戦争も起こりかねない、といった
時代がよかった、というのではもちろんない。
だが、あまりにも急速な価値観の一本化は、それが共産主義であろうが、そのあとに
世界が組み込まれた新自由主義的世界であろうが好ましくない、と私はずっと
思ってきた。
だから。プーチンの主張もある意味で、心情的に理解できないことでもないのだ。
(プーチン自身には私は何の好感も抱かないけれど。私はああいう風に
『マチズモ(男性性の誇示、男性優位主義)』を振りかざす男が苦手である。はっきり
言って、好きでない!)
しかし。その旧ソ連崩壊への無念さ、西側世界のその後の思い上がりに対する
『怨み』の感情、などの個人的『情念』を、世界の政治に持ち込むのは筋違いだ。
ましてや、今では独立国として対等であるウクライナに、このように一方的な
侵攻を企てることの正当性などどこにもない!
プーチンが2月21の夜、自称「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」
を国家承認するに際し、自国民に向けてその理由を一時間の長きにわたり
テレビで演説(ビデオ演説)したのだが、クレムリンの公式サイトが発表したものが
英語に翻訳され、さらにそれを日本文に訳してくれた人がいらして、
https://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20220224-00283560それを私も読んでみたのであるが、英語で4万6千語ほどもあるその長い演説で、
プーチンが何を語っているかというと、
太古の昔からのロシアとウクライナの歴史を、共産主義時代の歴史も含め
その演説の前半部で長々と語っている。そこで。
ロシアとウクライナは同じ民族であるということ、ウクライナは旧ソ連の私たちが
作ったものである(?)などということ。
NATOは、冷戦終結後の互いに領土拡大しないという約束を破って、旧ソ連の一部
であった国々を次々にNATO側に組み込み、それがロシアの安全にとって非常な
脅威であり続けてきたこと。
さらには、言わば同胞であったウクライナまでがNATO陣営に入ろうとしている!
それらのことについての、積年の恨みつらみ、怒りをぶちまけている、という
印象であった。
プーチンの自国民に向けて語るこのいわば侵攻への決意表明を読んで感じたことは、
その論理展開の無茶なこと、歪んでいることとともに、
「…それでもプーチンにもプーチンなりの言い分、想いがあるのだな」
「それぞれの国や地域の歴史というものは、簡単に他者の理解の及ぶものではない。
今度のことも、その長い歴史の経緯と現状を、両方の側から見るようにしてみないと
本当のことはなかなかわかないな」ということであった。
ロシア、ウクライナ問題に限らず、国境問題、民族感情の問題などなどというものは、
その当事者それぞれの深い想いや利益問題、また宗教などなどが複雑に絡みあって
いて、どちらが正義、どちらが間違っている、などということは、今更再確認する
までもなく、簡単に黒白をつけられるものではない。
逆に言えば、ウクライナが『まだ』NATOに加入していないからと言って、(その実、
NATO自身がウクライナ加入を保留にし続けてきたのに)ウクライナが無縁孤立の中で
超強国ロシアと決死の戦いをしているのを当初静観し、子供を含むウクライナの
人々が殺されて行くのを見過ごしにし、『我々にはウクライナに出兵する予定はない』
と冷たく言い続けていたNATO、アメリカも、なんと非人道的な組織なのであろうか。
(と言っても、勿論、アメリカ、NATO軍に参戦せよ、という意味ではないが)
プーチンに言われるまでもなく、英米を中心とするNATOが歴史上これまで
してきたことは、イラク戦争、コソボ紛争介入などなど、絶対の『正義』などとは
到底言えないのである。
この記事のテーマに戻るが、もうどうしようもなく複雑に絡み合ったこの世界の
諸問題を、一つづつほぐし、妥協点、着地点にどうにかして辿り着くには、
『理に基づく解決』を探っていくしかないではないか。
そのまず第一の要諦は、『人を殺すな』ということ。『人のものを奪うな』ということ。
人類が長いその歴史で培ってきた究極の、基本的な『理(ことわり』に従って考えて
行くということである。
プーチンに限らず、政治家も人。それぞれのひとには、自分の出自や経歴、
などなどによって培われてきた思想、歴史観というものがそれぞれにあろう。
しかし。今、この地球に住むわたしたちに突きつけられている待ったなしの問題、
地球温暖化やそれによる異常気象や大災害。今回のコロナパンデミックなど、
グローバル化したことによって人類が直面することになったその他の危機。
貧富の格差のどうしようもない拡大と、そこからも引き出される人心の荒廃や
分断…紛争の激化……などなど、今すぐにも、全人類を上げて取り組まねば
ならない直近の課題が私たちの前には山積している!
そしてそれらの諸問題は、切実な利害問題も絡んで、解決の糸口さえつかめない、
もしかしたら永遠に解決などない問題なのかもしれない。それぞれの言い分があり。
個人の…、国家の…、エゴとエゴがぶつかり合って。
だからと言って、それを今回のプーチンのように、力でもって相手国をねじ伏せる、という
ことが許されるものではない。
それは、『理に基づかない』、いわば、『私怨』『私情』に基づく強引な解決法である。
プーチンは、ロシアの歴史やそれが置かれてきた不遇を盛んに語り、自分が
民族の代表者、その想いの代弁者のごとくふるまい、国内の、世界の、理解と共感を
求めているように見えるが、もしかしたら、今回の暴挙は、単にプーチン個人の
権力へのしがみつき、単に自分の築いたプーチン王国を失いたくない、という
個人的欲望、『私情』に基づく行為にすぎないのかもしれないではないか?
現に、今回のウクライナ侵攻に関しては、ロシア国内、そして海外に住むロシア人たち
自身からも悲憤と抗議の声が大きく上がっている。ウクライナの同胞への(おそらく
その『同胞』という言葉は、同じ地球市民としての『同胞』という感覚に近いのではないか)
連帯を叫んでいるのだ。言論の自由、集会の自由などを厳しく制限しているプーチンの
国。そこで反政府、抗議の声を上げれば治安部隊にたちまち捕縛される恐怖を抱えつつ
なお声を上げ続ける人々…
決して、プーチンの私情が、ロシア国民皆の想いを代表しているわけではないのだ。
私が、『理に基づかない政治』『情(私情、私怨)に基づく政治』の危険さをここで
述べているのはそういうわけだ。
この、『私情に基づく政治』のこの世に多いことは、一人プーチンの問題だけでは
ないだろう。
いつも持ち出して申し訳ないが、安倍元総理が憲法改正に執着するのも、
日本軍のしてきたことの一部をなるべくなかったことにしたい、日本の貶められた
名誉を回復したい、というような歴史修正主義の政治家であることなども、
その『家の歴史』というようなものに大きく影響を受けているからとは言えないだろうか。
尊敬する祖父(岸信介元首相)の名誉を回復したい、その悲願を自分の手で成就
したい……
その安倍氏個人の『情』の部分は、私などにも理解はできる。だが、安倍氏に限らず、
国の政治、世界の政治に『私情』は持ち込むべきでないのではなかろうか。
ましてやそれが、自分の権力維持のため、という私利私欲のゆえの権力執着
権力行使となればなおさら、政治家であろうと企業のトップであろうと、
上に立つ者としての資格はないように思う。
だが実際は、世界の国々の政治を見渡してみれば、それがたとえ非道な方法で
あろうと対外的に強硬な姿勢を取ることで国民の人気を維持し、なんとしても
権力にしがみつく政治家のなんと多いことか。
(そういう強い政治家を求めるのもまた国民なのである。)
しかし。そう言った私情を抜きにしても、複雑に絡み合った世界の直面する
現在の問題を解決していくのは本当に至難の業である。それでも、徹底した話し合い
以外に、それらを解決に導く方法はないであろう。「消極的現状維持」、などという
曖昧な方法も含めて。
断じて!断じて今回のプーチンのような圧倒的武力を振りかざすことによる解決など
許されることではないし、それはおそらくプーチン自身を『孤立』に導くだけに終わり、
その政治生命さえ結果的に奪うことに、少し長い目で見ればなっていくのではなかろうか。
プーチンは、NATOの拡大を怖れている。だがしかし、NATOの拡大を阻止するための
今回の暴挙によって、実は、彼の思惑とは逆に、欧州におけるNATO加盟国、賛同国は
増えていく動きが既にみられる。EUに加入してはいるがNATOには参加していず
中立の方針をこれまで取ってきたフィンランド、スウェーデンなどの国も、今回は
ウクライナ支持を鮮明にし、フィンランド政府はウクライナにライフル銃などの
武器を供与。スウェーデンも既に対戦車砲などの供与を決定しているという。
プーチンの武力による解決という選択は、思惑とは逆の結果を引き出している
だけなのだ。
その解決法は、彼自身が『同胞』と位置付けているウクライナの民の犠牲、彼自身の
国の兵士たちの命を賭してまで行う意味のあるものなのだろうか?
それでは、貴女にどんな解決法があるというの。それを示しなさいよ。
と、あるいは言われるだろうか。
正直、私にも、そんな難しい諸問題への解決法などわからない。
それでも、人間は、その知恵の限りを尽くして、ものごとの究極の『理』に沿って、
辛抱強く、力を合わせて、この同じ星に住むものたちの命を守るために
道を探り続けていくしかないではないか。
私が、ウクライナ侵攻の直前のことだったが、新聞で見つけた小さな記事…、
それは、2月24日朝日新聞の朝刊に載っていた、ケニアのキマ二国連大使が
ウクライナ情勢をめぐる安保理での会合で行った演説についての記事だったが、
彼は、ロシアの行動は正当化できない、と言い切ったうえで、
『この状況は我々の歴史と重なる』(アフリカがかつて欧州の国々によって
勝手に「分割」され支配された歴史を指す)
『アフリカの国境は、植民地時代のロンドンやパリ、リスボンなど遠い大都市で引かれた。』
『それでも国連のルールに従うのは、「国境に満足しているからではなく、平和に
作り上げられた、より偉大な何かが欲しかったからだ』
『我々は新しい形の支配や抑圧に手を染めることなく、いまは亡き帝国の残り火から
立ち直らなければならない』 と語ったという。
この考え方こそが、私がここで書くところの『理に基づく』考え方の、典型的例だ、
そう思って、私はその小さな新聞記事を切り抜いておいた……
世界には欧米諸国によってかつて勝手に侵略され、支配され、ときに利害が
ぶつかり合う彼ら欧米諸国の思惑で、勝手に分割され国境線が引かれた地域
というものが、たくさんある。世界地図上で不自然な直線で引かれた国境線は
おそらくほぼそういうところだ。アフリカ、ケニアはもちろんそういう国の一つ。
中国なども、イギリス、ドイツ、さらには日本、などなどによって、かつてその国土の
一部を切り取られ奪われた…その怨みを中国の民は忘れてはいまい。
ロシアも、ウクライナ、ポーランド、ルーマニアなどなど旧ソ連とその周辺の地域も
長い歴史の間、多くの侵攻や戦いや、その結果としての分割、統合などの
大きな力に蹂躙され続けてきた、あるいは自ら蹂躙してきた、そういうところで
おそらくあったろう。世界はおそらくそういうところだらけだ。
けれどもそれを、その怨みを、その想いを、蒸し返したところで、何が生まれる?
いったいどこまで歴史をさかのぼれば、これが双方にとっての正義だ、という
ところに辿り着けるのか?その間の失われた時を取り戻せるとでもいうのか?
地球人は、同じ地球人として、今ある、すでに顕在化しこれからもっと悪化していく
であろう危機的な問題に、力を合わせて、知恵を総集して向き合っていく、
そういう時期に来ているのではないだろうか。
ケニアのキマニ国連大使の、『(自身の、自国の恨みを超えてなお)それでも
国連のルールに従う』と言うのはそういうことだろう。
このたびのロシアによるウクライナ侵攻によって、対抗手段としての厳しい経済封鎖措置
などが採られて行くのだという。
それは、世界の経済をおそらく冷え込ませ、例えば、欧州などで進められていた
再生エネルギーへの転換などをも後戻りさせることになるだろう。
既にネットなどの議論では、原発の復活を唱えている人々もいるようだ…
あのチェルノブイリのロシアによる占拠は、これからどういう恐ろしいことを生む?
チェルノブイリに今かろうじて管理されているきわめてまだ高濃度の核物質。
その施設を意図的に破壊し、冷却することをできなくすれば、恐ろしいほど多量の
核物質は再臨界することだってありうるのだ。ウクライナの他の原発についても
同じことは言える。
(原発の復活を唱える人々には、『原発を持つということは、今回のように
不測の戦争勃発の際には、原発が盾に取られ、それが破壊されることによる
悲惨な核爆発が起こることだってありうるということ』も考えてほしい。)
プーチンの暴挙は、あらゆる意味で、一気にこの世界を不幸な時代に
後戻りさせるものだ。
今、私達に出来ること。
ウクライナの悲劇は、遠い世界のどこかの我々とは関係ない出来事ではない。
プーチンのような独裁政治家を止めるには、ウクライナは勿論、ロシアのこころある
民とも力を合わせて、声を合わせて、今すぐ愚かな戦争をやめるよう、発信を
続けていくしかないのではないだろうか。
(ウクライナへの連帯の意を示すため、ウクライナの国旗の色にライトアップされた
ドイツ、ベルリンのブランデンブルグ門。)最後に。
アメリカもNATOも、そして国連など世界も、ウクライナに刻々とロシアの砲撃の手がのび、
ウクライナの無辜の民が殺されて行くのを、ただ見ていていいのか。
今、一番大事なのは、とにかくすぐにも停戦して、一人でも双方の犠牲者を減らすこと。
そのためには、何を差し置いても、プーチンに何度でも呼びかけて、落としどころを
見つけることだろう?憎むのはあとでいい。
私は、まずは双方が交渉の場につくことから始めるしかない、辛抱強く着地点を探って
いくしかないと思う。その交渉の場には、あるいは交渉前のすり合わせには、
ウクライナ、ロシア双方の代表団は勿論だが、その双方が納得するような第三者
としてのオブザーバー、公平な仲介人、というものが必要なのではないか、と
思っている。
当事者のロシアとウクライナだけによる交渉では、あらゆる意味で立場の弱い
ウクライナがプーチンのロシアに恫喝されるだけで、交渉が決裂するか、あるいは
圧倒的に不公平な条件を吞まざるを得ない、ということが容易に起こりうる。
その仲介人としては、ウクライナの窮状をすぐに救うことは無論のこと、同時に
プーチンという政治家の、ロシアという国の、『面子』と言ってしまえば軽いが、
『プライド』を、あまりにも叩きすぎないで交渉の落としどころを探るための、
老獪な知恵者が必要。
それには、これは私の、まったく荒唐無稽なアイデイアかもしれないが、
例えば一方は、中国からの老練な立会人などを考えていいのではないかと思う。
この困難な状況を解決した、という名誉を、プーチンと同じく今、世界にとって脅威に
なりかねない中国に逆に与えることによって、対立の激化でなく融和を図るのだ。
ウクライナは実は、中国のあの一帯一路戦略にとって大事な要の国でもある。
中国にとっては、ロシアもウクライナも重要なパートナーなのだろうから。
西側諸国からの立会人。私はそれに適任なのは、アンゲラ・メルケル氏では
ないかと考えている。彼女は旧共産主義圏の出身で、プーチンの生きてきた
世界への知識もある意味の理解も持っている。ロシア語も堪能。
肝の据わり方は、世界の政治家の中でも群を抜いている。知的で状況の変化に
対応できるだけの柔軟性もある。長い間欧州とロシアの間に立って、プーチンと
自らタフな交渉にあたった経験もある。プーチンとの個人的対話も成り立つ人物である。
いま彼女が政治の世界から離れているのも、プーチンにとっては一つの、拒否感を
少なくする要因となるのではないだろうか。
プーチンのような強権的な政治家を私は忌むし、このたびのウクライナ侵攻を、
心の底から憎む。だが世界が今こころしておかねばならないことは、
彼を『追い詰める』だけではだめなのではないか、ということである。
プーチンの引っ込みどころを含めて、この危機の終息への落としどころを
探っていかないと。プーチンを追い詰め、窮鼠猫を噛む、の状態、
捨て鉢になった末の核使用、と言った恐ろしい結末にならないよう、交渉は
本当に辛抱強く続けていかねばならない。
…とはいっても、交渉は想像を絶して難しいだろうが。
これを書いているのは(アップしたものに何度も手を加えている)2月28日午後5時。
もうすぐ、ウクライナ、ロシアの停戦協議が始まるようだ。どのようなメンバーで行われるのか
知る由もないが、なんとか、なんとか…いい方向に行くといいが。
多くのアスリートなども世界の各地で抗議の声を上げてくれている。
中国においてさえ、学者有志が戦争反対の声明を出してくれたという。すぐに
削除されたらしいが。
国連も大きく動き出した……。
私は名もなき一人の老女にすぎない。
年齢から言って自分の命はさほど長くはない。
だから、自分のいなくなった世界のことを心配したってしようがない、ようなものではある。
しかし。私は、それでも地球の未来、世界の行く末が心配だ。
勿論、政治や軍事にも知識などない。それでも、居ても立っても居られないので、
一所懸命考えてみた・・・・・・・・・