『共謀罪法案に反対する』

『共謀罪法案』。
政府が言うところの『組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する
法律等の一部を改正する法律案』が、いよいよ19日中にでも衆院法務委員会で採決可決され、
来週23日頃には、衆院を通過しそうである。

みんな、この法案のことをいったいどのくらい理解しているのだろう・・・
政府は、委員会で30時間審議した、もう十分だ、と言うつもりだろうが、このような曖昧な、
しかも、現在から将来にわたって大きな禍根を残すことになるかも知れない法案を、
わずか30時間の審議、それも、皆様ご存じのように法務大臣自体が法案を本当に
理解しているのかどうなのか、へろへろの答弁と、官僚の代弁ばかりでいたずらに
時間をつぶしてしまったそんなお粗末な審議で、通してしまおうとしている。

この法案を通したいと急いでいる人々は、この法が成立しないと、日本は
『国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約』(略称『国際組織犯罪防止条約』
パレルモ条約とも。)に入れない
、と言う。
『テロを含む組織犯罪を未然に防止し、これと戦うための国際協力を可能にするための
この条約を締結することが必要不可欠であります』(安倍首相の演説より)
そして、世界の百数十の国および地域がすでにこれを締結していて、まだ締結していないのは
日本とどこそこだけ、と言うような言い方をして国民を煽る。

だが。本当にこの共謀罪(テロ等準備罪を含む)法が成立しなければ、日本はテロ対策が
出来ないし、国際組織犯罪防止条約にも入れなくて、世界から取り残されていくのだろうか?
そもそも、共謀罪法を通したら、テロ対策はそれで成った、と言えるものなのだろうか?

私たち国民は、わかりやすいプロパガンダに概して弱い。
この共謀罪法を、『テロ対策』と2020年東京オリンピックのため、と言われると、
「ああ、そうか。それはひつようかも」と思い込んでしまいそうである。

だが待ってくださいよ。

5月5日の朝日新聞朝刊にこんな記事が載っていた。
米ノースイースタン大のニコス・パッサス教授は、国際刑法の専門家で、2000年に
国連総会で採択された同条約に関連し、各国が立法作業をするための指針を示した
『立法ガイド』の執筆で中心的役割を担った人であるが、その人自身が、
そもそも、『テロ対策は国際組織犯罪防止条約の目的ではない』と語ったというのだ。
また、条約に加わるために新規の立法が必要なのか、と言う問いに対しては、
『既存法で加盟の条件を満たすのであれば、新法の必要はない』と語ったと言う。

http://www.asahi.com/articles/DA3S12923852.html
朝日新聞の記事は、途中までしか読めない。
だが、5月18日のテレビ朝日系列「報道ステーション」で、この件について詳しくやっていたので
そちらを是非見てほしい。

https://www.asahi.co.jp/webnews/ann_g_000100921.html

こちらの説明から引用しよう。

『「国際組織犯罪防止条約の目的はテロ対策ではない」と明言。条約は、マフィアなどの経済犯罪を取り締まる目的で制定されたもので例外的にテロリストが対象になるのは、資金集めなど金銭的な利益を得る目的で犯罪を行った場合だけだという。パッサス教授は、過激派組織「イスラム国」などに対する制裁措置を定めた国連決議がテロ対策としてすでに機能していると指摘。日本は、国連の主要なテロ対策条約13本についてもすでに批准、法整備まで完了している。パッサス教授は「テロなどの犯罪に対して、現在の法体系で対応できないものは見当たらない」と話す。さらに、「それぞれの国は、完全に条件を満たしていなくても条約を批准することは可能と指摘。「どの国の政府も、国際条約を口実にして国内で優先したい犯罪対策を実現させることは可能。(国内法の整備においては)法の支配にのっとり公正でなくてはいけない。日本国民の意向を反映させるべきだ」と忠告する。


つまり簡単に言うと、今、日本政府が、『テロ防止やオリンピックの安全な開催のためには、
国際組織犯罪防止条約に入らなければならない。そのためには、新しい法を作る必要がある。
(つまり共謀罪法が必要だ)と言って、十分な中身の審議もないままに、国民への十二分な
衆知も図っていないままに、この法案をしゃにむに通そうとしているのは、おかしいと言うことだ。

私は、この共謀罪法案の本質は、テロ対策やオリンピックの名の下に、国家が
国民の言論や思想の自由、集会・結社の自由など、現行憲法で保障された権利を
制限しよう、萎縮させようとしている、というところにあると思っている。

大げさすぎ、恐れすぎじゃない?と思われるだろうか。
だが、それは、自民党の改憲案と比べてみるとよくわかるのだ。現行憲法では、主権者たる国民に、
生存権、自由権などさまざまな権利が保障されているが、それに対し、自民党改憲案では、
いたるところの条項に『公益及び公の秩序に反しない限り』という文言が付け加えられている。

『公の秩序に反しない限り』と言う文言にとりわけ注意してもらいたい。
今共謀罪審議で、何度も何度も『一般人は対象とならない』と法務大臣以下は答弁しているけれど、
『一般人』という言葉の定義は何か。
自分は一般人だから関係ないな、思っている人でも、捜査当局が『公の秩序に反した』と
判断したら、共謀罪の対象になりかねないのが今度の法案なのだ。
とりわけ、国民を縛る意図を秘めた共謀罪法案に関連して、自民党改憲案の中で象徴的なのが、
第二十一条の改憲案である。
現行憲法は、『第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。』
となっているだけだが、自民党改憲案では、
『2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、
並びにそれを目的として結社をすることは、認められない
。』
という条文が付け加えられているのである。

また、第一次安倍政権以来の、この政権の『教育への干渉』の強い意志や、秘密保護法など
を含む諸法・諸制度の改悪の方向を合わせて考えると、よりはっきり見えてくるものである。

私は、デモなどにも行かないし、一切の危ない政治活動などはしないから、共謀罪の
対象になどなり得ない、とお思いだろうか。
だが。本当は、今回の共謀罪法案の怖さは、自分が実際にその対象になるかならないか、
などという問題ではない、と私は考えている。
これは、国民の『知る権利』の問題である。国民が、国家のくびきから自立した存在で
いられるかどうか、というぎりぎりのところで、大きな禍根を残すことになる法案だ、と
考えているのである。

本当は、このことについてしっかりと書かねばならないだろう。次の記事でそれについて書く。

だが、この記事では、ニコス・パッサス氏の言葉に添えて、氏が起草した、当の
国際組織犯罪防止条約のための『立法ガイド』の中の、次の一文を、とりあえず
掲げておこう。

43. 国内法の起草者は、単に条約文を翻訳したり、条約の文言を一字一句逐語的に新しい法律案や法改正案に盛り込むよう企図するよりも、むしろ条約の意味と精神に主眼を置くべきである。法的な防御や他の法律の原則を含め、新しい犯罪の創設および実施は、各締約国に委ねられている(第11条6項)。したがって、国内法の起草者は、新しい法が国内の法的な伝統、原則、および基本法と合致するものとなることを確保しなければならない。これによって、新しい規定の解釈において裁判所や裁判官の違いにより対立や不確定要素が生じる危険性を回避することができる。


今度この政権が無理矢理通そうとしている『共謀罪法』は、犯罪実行前の幅広い摘発を、
それも捜査当局の恣意を許す恐れのある危ういものだ。本来、日本の刑法は、実行後の
処罰を原則としてきた(既遂処罰原則)のに、この共謀罪法案は、その日本の刑法の体系を
大きく変えるものになっている。
上記に引用した『立法ガイド』の、『国内法の起草者は、新しい法が
国内の法的な伝統、原則、および基本法と合致するものとなることを確保しなければならない』
とする、その『国内の法的な伝統』と合致しないどころか、国内法の体系を根本から
破壊する恐れさえある法
だと私は思う。
さらに。
同じく上記立法ガイドで、『基本法と合致するものとなることを確保しなければならない』とある
その基本法、すなわち、日本にとっては『日本国憲法』の保障する
国民の内心の自由までもを奪いかねない醜悪かつ稀代の悪法を、
私たちの国は今、通してしまおうとしているのだと
言うことを
しっかりとここで言っておきたい。


『立法ガイド』の訳文は、こちらのサイトからお借りしました。
『国連立法ガイド』を読んでみよう
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/8f36e10fcd09bb4e6962c52da297b697


(この記事続く)







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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

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