『キャンドル・ナイト 76』


76回目のキャンドル・ナイトだ。


キャンドル・ナイト76③




実は、義姉が亡くなって、その葬儀に行っていた。
と言っても、家には介護の必要なつれあいがいる。
一人残していくのは心配だったが、食べるもの必要そうなもの、みな身近なところに用意しておいて
早朝4時台の始発に乗って新幹線に。
そして葬儀にだけ出てまた新幹線でトンボ帰りという慌ただしさだった・・・
家に帰り着いたのは、夜10時過ぎ。
ふ~ぅ・・・

しかし、義姉は、15年間病いと闘って、雄々しく美しく逝った・・・
若い頃、元ミス○○○というような経験もあったひと。病と闘った痕跡も、年齢の刻む
残酷なしるしも感じさせないような、ふくよかで美しいとさえ言える死に顔だった・・・

兄とも15年以上会っていなかったが、義姉と同じ歳の兄は、体つきも昔のまま、大きな声も
昔のまま、あまり年齢による衰えをきたしていないのを今回知ることが出来て、少し安心した。
お互いに年を考えれば、もしかすると兄と妹としてのこれが別れになるかも知れないと
覚悟して行ったのだが・・・

否応なしに迎える老いのこと・・・
無論。6年前の大震災と原発事故のこと・・・、九州の大雨被害・・・
命について いろいろ思ってしまう旅であった・・・

心楽しむ旅では無論なく、家に残してきた体の不自由なつれあいのことを案じつつの旅。
それでも家から離れて一応『旅人』の境遇に我が身を置いてみれば、家に居ては考えない
だろうこともあれこれの思念となって胸の内を通り過ぎていく・・・

と言っても、新幹線の行き帰り、と言うだけの景色しか見ていないのだが。
新幹線の車窓からだけ見る景色は、たいして面白いものでもないのだけれど、
なにかいつも好きだ・・・。
新幹線の窓と同じ高さにあるオフィスビルの一室の窓の内に働く人の姿・・・
向こうはもちろん新幹線の窓から私に見られているなどとは知りもしないわけだが、
今の今、眼下の交差点を渡っていく白いワイシャツ姿の青年の顔や仕草がはっきり
見えたりもする・・・
まあ、なんと工場群がいっぱいあることか・・・超一流企業のも、小さな工場も・・・あそこでは
やはりそれぞれに暮らしや日々の想いを抱えた人々が、今日も働いているのだ。

ずっと昔…
高校を卒業してわずか3か月の間だけ、会社勤めをしたことがある…
母校が探してくれた東京の株式一部上場会社の技術課勤務だったのだが、
大学にやはり行きたくて、学費のあても受験しても通るあても何もないまま、
若さの勢いで、3か月で退職してしまって、不安定なアルバイト生活に入ったのだった・・・
だが、その3か月の間のOL経験は、いつも妙に懐かしい。
お昼になって社員食堂に行くときのあの感じ、お昼を食べ終わってわずかの残り時間に
同じ課の人間たちが輪になってバレーのトスを楽しんでいたことなど・・・
新幹線から見えるあれらの工場の一つ一つに、若い頃の自分自身がいるような、
そんな気がすることがある・・・。
沿線に続く田んぼの光景。その青田の中に一軒だけぽつんと、民家とも倉庫とも
つかぬ建物が立っていたりする。
あそこにひとがもし住んでいるのなら、夜はさぞかし寂しいだろう…でも、なんていいのだろう!

決して美しいなどとはお世辞にも言えないそうした沿線の景色に、いつも私は、美しい
観光地に行った以上の旅情というか、旅の興趣を感じる・・・

東京駅を出てすぐの巨大なビル街で以外は、実はいつも新幹線沿線に人間の姿というものは
案外少ない。稲が青々と育っている田や耕作放棄された畑地や、人気の見えない工場群や、
東南側にぐるりと小山が重なってあって、なにかこう・・・見ていて寂しさと圧迫感を感じてしまう
ような土地に、ひっそりと立つ新しい建売住宅の数々・・・それらにも人の姿は見かけない。

だが。当然のことだが、車窓から姿は見えずとも、それらに人々は生きている・・・
新幹線と並行して走る農道を行く軽トラックにだって、当たり前だが誰かが乗っているわけだ。
そう思うことは、なにかふっと涙ぐんでしまいたくなるような感動というか、人々への共感を、
いつも私の胸に引き起こす。

いつ見ても同じように見えて変哲もない新幹線からの光景ではあるけれど、実は気をつけて
見ていれば、そこに今の日本の現状の、さまざまな姿が、様相を変えて現れていたりもする。
一年前に乗った時よりは明らかに増えているように見える沿線の太陽光発電施設の広がりは、
一種の異様さと非現実感を持っていきなり目に飛び込んでくる・・・
ああ・・・耕作放棄地が増えているようだなあ・・・
ああ・・・ニュースにもなった静岡の河川の異常渇水。今も解消されていないようだ・・・
それに比して、木曽川、長良川は豊かな水量を見せて流れていて、ほっとさせる・・・
東京は空梅雨で、我が家の裏の川も白い河床が見えてしまっている。 だが、
どこでだったかな、関東の少雨と晴天続きが嘘のような雨の光景もいきなり現れた。
それほど距離のない山々が見えなくなるほどの激しい雨の中に新幹線が突っ込んで、
私ののぞき込む窓にも雨が横殴りに吹き付けていたかと思うと、10分後くらいには、
乾いた道の光景が来たりもする・・・

それらの脈絡もない光景を通じてなぜかそれでも感じるのは、日本の『疲弊』である・・・
日本も老いたのだな、という想いである・・・
無論、新しく勃興してくるものもなくはないのだが、また、日本経済の土台骨を長く支えてきた
有名企業の広大な、美しく整備された工場敷地なども次々に窓外には現れてきて、日本経済の
底力というものは信じられるのだが、それでもそれらの力や勢い、というよりは、やはり
過去には新しく生き生きしていたであろうものらの否応無しの老朽化のほうが、どうしても
目についてしまう・・・。
さび付いていろいろなものが剥がれ落ちたままに、外装のメンテナンスもされていないような
建物や工場群のなんと目につくことか・・・

それらの光景から感じるのは、『あきらめ』にも似たある種の静けさ、だ。
その一方で、それでも生き抜いていこうという人間のたくましい意思だ。

新幹線沿線の景色を見つめ続けていると、いつでも私は、そこに確実に生きている
姿の見えない人々への共感に、胸がいっぱいになる・・・

そうして。また、政治のあるべき姿のことを思ってしまう・・・

支持政党とか思想信条とか、派閥論理とかそんなものを超えて、政治は、生きている現実の
人間を大事にしなくてどうする!と思ってしまうのである。
それは、つい頭でっかちに理想を語りがちな自分への痛い認識でもある・・・

新幹線に乗ると、いつも、一億三千万分の一の暮らしが、ほんの一部だが、見えてくる
ような気がしてしまう…  
その中に私も無論いる・・・東京郊外の、小さな我が家の窓の灯りもその中の一つだ・・・

そして。
ああ・・・!このあたりは、2年前、娘と共に乗っていて、うたた寝から覚めたら急に雪景色に
変わっていたあそこだな、などとも思う。娘が隣で、連日の仕事に泥のように疲れて眠っているのを
『雪だよ』と言って起こしたことなども・・・。

私のように、たった一度トンボ帰りしただけで疲れてしまう人間などお笑い種。
仕事で日常のように東京ー大阪間を一日のうちに往復する勤め人なども新幹線には
当然乗っている。そういう人種らしききちんとした背広姿の一団も整然と乗り込んできたり
するのだが、そういう人々の旅慣れした振る舞いは、いつも美しいなと思ってしまう私である。

いつも東京に帰り着くのは7時過ぎだ・・・横浜あたりからの大都会の夜景は、文句なしに
華やかで美しい。高層ビル群の窓窓には煌々と明かりが点り、まだ仕事をしている
男女の姿も新幹線の窓からは見えたりする。
これまた私には縁のない世界だったが、この華やかな姿も日本の一つの現実ならば、
わずか数時間の日本一部縦断で見た光景の一つ一つもまた現実の姿。 

難しいことを言おうとしているのじゃない。
生きていくというのは、なんと愛しいものか、と、新幹線に乗るたびに思う。
そのことだ。



















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心ひとつに キャンドルナイト








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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

ペシャワール会
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国境なき医師団
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