『鯉のぼり』

昨日から少し風邪気味。心にも多少の屈託がないわけではないが、
折角晴れた五月の日に家にばかり閉じこもっていてもと、散歩に出た。
いつも紹介するうちの近くの川原では、今、鯉のぼりの川渡しが行われている。
もう、日本全国のあちこちの川で行われているので珍しくもないが、
これは、川沿いの町の町会などが、子供が大きくなっていらなくなったりした鯉のぼりを
各家庭から寄付してもらって、川にロープを渡してつるし飾るもの。

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私の家の川向かいの町は、なかなか町会活動が盛んで、桜の季節になると、
先日紹介したように、桜並木に赤い提灯を灯してライトアップしたり、
また端午の節句にはこうして、鯉のぼりの川渡しを企画する。
規模はまあさほど大きくはないが、川の大体2つの橋の間くらいに
そうだなあ、何匹くらい掲げるだろうか…200~300匹くらいはあるかな、
真鯉、緋鯉、子鯉、そうして吹き流しをつるす。

橋のたもとには、これも町会の人々が綿菓子、焼きそば、などの屋台を用意して、
子供らが群がる。まあ、ささやかなお祭りである。

ところが2年ほど前から、この屋台などに加えて、ここでよさこいソーランを
やるようになった。
今日も、鯉のぼりの写真を一応撮っておくかなと思って、橋の袂まで行ってみると
まあにぎやか!
よさこいソーランの歌がすごいボリュームの音で流され、そろいの衣装を身にまとった
人々が町民センター前の道路で踊っている。多くの見物人も群がって。

私は、今日本全国で大流行の、このよさこいソーランというものがどうも好きでない。
夏の祭りの季節がくると、あっちの町でもこっちの町でも、よさこいソーラン祭りが
催される。それぞれに揃いの派手な衣装を着た婦人たちが幾組も、踊る順番を待って
待機しているのに行く手をふさがれて、私はいつも、あああ、などと思いながら、
そこを大回りして素通りする。踊りを見る気もしない。
「…ソレソレソレソレ!』などという掛け声が後ろから聞こえてくる。
この掛け声もどうも……

なんで嫌いなのかな、やってる本人たちは楽しいのだろうな、とは思うが、
音楽といい踊りといい、何より、暴走族の特攻服を思わせるような衣装が
どうもなあ。

でも、高知のよさこい祭り、北海道の『ソーラン節』は別に嫌いではないのである。
よさこいソーランが苦手なのだ。
私はひねくれ者なので、一体に、流行しているものが苦手。

でも、鯉のぼりは違う。
鯉のぼりは、私はこれは、日本が世界に誇れる文化の一つだと思っている。
何より発想のスケールが大きいではないか。
後漢書にある、鯉の滝登りが立身出世を象徴するという考えを敷衍。
川で泳ぐ鯉を布で作って、それを5月の空に泳がせるという発想。
それがすごい。


2010_0503_151410-CIMG1946_convert_20100505012526.jpg

今日はあまり風が強くなかったので、鯉は五月の薫風をはらんで
天高く泳ぐ、という感じではなかったけれど、
それでも、鯉のぼりを見るたびに、この発想はすごいよなあ、と思わざるを得ないのである。

日本の文化はどちらかというと、盆栽やトランジスタラジオなど、
ちまちましたミクロ視線のものに特質美質があるというように思われがちだが、
なかなかどうしてこの鯉のぼりの発想はスケールが大きいではないか。

私はこの鯉のぼりと花火は、江戸時代に発展をみた2大壮観だと思っている。
花火の文化もすごい。
もともとは日本発祥ではないにしても、大きく菊花を咲かせるいわゆる割物花火というやつ、
その大きさ、色の複雑さ、変化…、日本人は花火を、世界で最も優れて華麗な花火芸術にまで
発展させてきた。

鯉のぼりと花火。どちらも、大空をその舞台としている。
気宇壮大でいいなあ。


唱歌『鯉のぼり』の歌詞もまたいい。
『屋根より高い…』もいいが、私はこちらの方が好き。

甍の波と雲の波
重なる波の中空を
橘香る朝風に
高く泳ぐや鯉のぼり

http://www.youtube.com/watch?v=C6pB0SCgTm4


ところでこの小さい橋には、近辺の幼稚園保育園の子供たちが作った小さな
鯉のぼりも飾ってあり、夜になるとそれらもライトアップされる。
なかなか綺麗である。その写真も撮っておけばよかったな。
陽が落ちて、ライトアップされているけれど人気のないこの橋を
通っていると、カジカガエルが綺麗な声で鳴くのが聞こえて来て、
初夏の気分をかきたててくれる。
それもまたなかなかいいものである。

[追記]
ちょうど新聞の地方版にここの記事が出て、それによれば、
鯉のぼりの数は700匹だそうです。結構な数ですね。
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ジャンル : 学問・文化・芸術

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Re: 乙山さんへ

うちは男の子がいないので、鯉のぼりとは無縁でしたが、
生まれていても、やはり大きな鯉のぼりは立てなかったでしょうね。
マンションのベランダなどに小さく飾ってあるお手製の鯉のぼりも、
微笑ましくていいものです。

今は、鯉のぼりを掲げられるような庭がなかったり、
あっても電線のこともあったり、鯉のぼりという文化も
いずれ消えていくものかもしれませんね。
この川渡しに下げ渡すためにわざわざ買う人はいないだろうし、
売れなければ作らなくなるから…

でもこの、5月の薫風をはらんで、大空を悠々と泳ぐ鯉のぼり。
このような素晴らしい発想のものは消えて欲しくない気もします。

島田祐子さんの『鯉のぼり』の歌、5月の空のように晴朗な声で、
突き抜けた感じがして、なかなかいいと思いアップしてみました。

こいのぼり

こんばんは。
こいのぼり、こうして見るといいですね。
ですが、乙山の近所ではこいのぼりを揚げている家が、
ほとんどなかったのではないかと思います。

家(うち)でもこいのぼりの用意がありません。
家族が紙で作ったミニチュアこいのぼりを、
ベランダに垂らしていたことがあります。
だけどそれが、なんか記憶に残ってるんですね。

Re: れんげさんへ

ぷぷっ!
確かに大漁ですねえ。
思わず噴き出してしまいました。
はい。今晩うちは、鯉のあらいに、鯉こく、鯉の甘露煮…

気持ち良さそうでしょう。
空を泳ぐれんげと彼岸花。なんだか可愛いなあ。
あ。かなづちですかあ。私もです(笑)。

No title

ギョ!大漁だねぇ~。今日は、鯉のあらい?(笑)
大空で泳ぐと気持ちいいんだろうなぁ~♪
れんげ、カナヅチだけど。(笑)

Re:依里さんへ

依里さんもお体不調ですか。風邪かな。
私も、昨日は少し体の節々が痛く喉もいたかったけど、
今日は大丈夫になっていました。
どうぞ、お大事になさってくださいね。

鯉のぼり、綺麗でしょう。他の地域でもっともっと大々的にやっているのに比べれば、
一町会レベルですから、そう大規模ではありませんが、
これを見ると、ああ5月だな、と、初夏の季節感を感じさせられます。

今はね~。鯉のぼりを立ててやりたくても、そう。場所がなくなってるんですよね。
依里さんが本来の鯉のぼりの姿をあまりごらんにならなかったのも
無理ありませんね。我が家は東京は東京でも、はずれの外れにあって、
少し歩けば昔ながらの農家の造りの家と庭なども無くはないんですが、
それでも、鯉のぼりを掲げている家はほんとに少なくなりました。

いつか、この川に渡す鯉のぼりが、本当に姿と思われるようになるかも。
そうすると、買う人がいなくなってしまうから、う~ん、鯉のぼり、というものも、
いずれ近いうちに、日本から消えてしまうのかもしれませんね。

四国のある町では、鯉のぼりを川の水の中で泳がせるところもあるそうです。
それは見てみたい気がします。

コメントいつもありがとうございます。

Re: 手帳さんへ

手帳さん、ありがとうございます。
手帳さんは私の性格、お見通しみたいですね(笑)。

そうなんです。よさこいソーランがどうも苦手なのは、
その二番煎じ感かもしれません。
私は、『人真似』ということが身震いするほどいやなのです。
いつかこれについても書きますね。
娘を育てる際に、私は余りあれこれ言わない方の母親だったと思うけれど、
『人真似は嫌いだよ』ということは、顔で表現してきたと思います。
そしてそれは、その顔つきの怖さで、娘には十分伝わってきたと思います(笑)。

だからね。ほんとはこの鯉のぼりの川渡しも、本来の鯉のぼりの姿、
各家の庭に、翩翻とひるがえる鯉のぼりの姿、ほどには好きじゃない。
アップしといてなんなんですけど…(笑)。

いや、これを発想した最初の人はすごいと思うんですよ。
今は、電線などが多くなったり、親たちが高齢化したり、
さまざまな事情から、昔のように鯉のぼりを家で飾れなくなっている。
その不要になって眠っている鯉のぼりを集めて川で泳がせよう、
そう考えた人は、すごく偉い!と思う。
高知県高岡郡四万十町十川というところが最初にこれをやり始めたとか。

でも、あちこちでこれを真似し始めて、それも規模が小さかったりすると、
「とほほ」感がありますよね。うちの近くのこの催しも、
「とほ」くらいです(笑)。
と言っても、私は庶民のささやかな楽しみを否定しているわけではありません。
なんでもやらないよりはやった方がいいというのが基本姿勢だし。
「とほほ」なものも結構好きです。自分でやろうと思わないだけ(笑)。

民衆の力も手帳さんが想像なさったとおり、で、「ええじゃないか」まで行くと、
私は諸手を挙げて、賛成というか、拍手喝さいしたくなります。
手帳さんはほんとに私の性格をお見通しのようですね。

ああ、凧も大空を背景の、気宇壮大な遊びですねえ。
それを忘れていました。
中国の凧上げ文化もすごいけど、日本の凧上げはまた、
独自の展開と発展をしてきたようですね。凧上げもいいなあ…。

No title

こんにちは。
私は連休の最後、体調を崩してゴロゴロしています。
すごい鯉のぼりですね。
実際に見たら、圧巻じゃないかと思う程。
私は所謂ベッドタウンで育ったので、ベランダから遠慮がちに泳ぐ、ミニ鯉のぼりしか見た事がありません。

No title

発想のすごさがカッコイイ!と反応する彼岸花さんのユニークさが楽しいです。
普通はきれいに反応すると思うので。
ヨサコイが嫌いなのはきっと2番煎じを評価したくない気持と、クヲリティの問題かも。
いっそ、ええじゃないか位まですごいことになったら
彼岸花さんも気に入るんだと思います。

私の暮す地方では五月に大きな凧をあげるお祭りがあります。
混むから行かないけれど、凧が上手く飛ぶといいなと天気予報が気になります。
面白いのは凧合戦で切れて飛んだ凧は必ず、
町内会の者がどこまでも取りに行く習わしがあるんですよ。
県外だろうとどこまでも行くのです。子供の成長を願う大切な凧であるからですね。
地方のお祭りは面白いです。


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彼岸花さん

Author:彼岸花さん
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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

ペシャワール会
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