『泣いて血を吐く…』

今年もホトトギスの初音を聞いた。
と言っても、私にとっての初音だが。

2,3日前、午後、用があってあって出かけたとき、
自転車に乗って、家の一つ先の角まで来て、ふと自転車を停めた。
ホトトギスの声だ!

毎年今頃、いや、いつもはもう少し遅いかな、夜、し~んとした部屋に
一人で起きて本など読んでいると、窓の外の上空をホトトギスが
一声、悲しげな声で鳴きながら渡っていくのを聞く。

『テッペンカケタカ!』と聞きなしされる声は、一人の夜を
さらに物悲しくするような、何やらこの上なく寂しげな鳴き声である。

母が昔、よく、母子二人の生活の夜話に、このホトトギスの話をしてくれていた。
母の生まれた九州の山奥に伝わる民話。似た話はあちこちにある。
私が中学のときには、国語の教科書にも載っていた。

貧しい兄弟がいた。兄は目が見えない。
弟は毎日山に出ては、山芋を掘ってきて二人で食べる。
その年は、作物は不作で、山芋も探しても細い固いものがわずかに掘れるばかりだった。
弟はいつも兄にいいところを食べさせ、自分は尻尾の固いところばかりを食べていた。
ところが目の見えない兄は、弟が自分に隠れて美味しいところを食べて
いるのではないかと邪推する。
そうしてとうとう兄は弟を殺して、その腹の中を探ってみる。
ところが弟の胃の中から出てきたのは、硬い小さな芋の尻尾だけだった…

「それで、その兄さんは、後悔して後悔して、泣きに泣いているうちに、
とうとうホトトギスの姿になってしまって、それで夜な夜な、
弟の姿を探し求めて、夜の空を飛ぶんだよ。
あんまり泣いたから、ホトトギスの喉は赤いんだよ。
『鳴いて血を吐くホトトギス』、と言ってね。」

そんな悲しい話を子供の頃から聞いていたものだから、
ホトトギスの声は、私には母の思い出とも重なって、常に物悲しく聞こえる。
でも、深夜、その声を聞けば、「ああ、今年も来てくれた!』と嬉しいのである。

珍しく今年は、その声を昼間聞いた。
高い空のどこを行くか、姿は見えなかったが、声は明らかに。
ああ、いいなあ。
ホトトギスの声は大好きだ。

私にとってのホトトギスの声は、弟を探し求める声でもなく、
中国の故事にあるように、死んでホトトギスの姿になった望帝杜宇が、
自分が再興した蜀の国が秦に滅ぼされたのを知って嘆き悲しみ、
「不如帰去」(帰り去くに如かず。帰ることが出来ない。)と鳴きながら血を吐いた
と伝えられる、その声でもない。
『ひらすら恋人を探し求める、生きものとしてのせつないほどの憧憬の声』である。

ああ、彼は、今年恋人に巡り合えるのであろうか…
こんなに森も林も少なくなってしまったが…


百人一首のこの歌も好き。

ほととぎす
鳴きつる方をながむれば
ただ有明の月ぞ残れる   
(後徳大寺左大臣)


この歌や、『菜の花や 月は東に 日は西に』などという句などを思い浮かべると、
鯉のぼりもそうだが、かつて日本人は、自然の中にゆったりと身を置いて、
大きくものごとを捉えていたんだなあ、と、きわめて近視眼的になってしまった
今の暮らしぶりのせせこましさを、ふと情けなく思ってしまう。

http://www.youtube.com/watch?v=UbdGxgxbBEc
(動画は koimo9koimo さんのものを使わせていただきました。)
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ジャンル : 学問・文化・芸術

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Re: あさぎさんへ

あさぎさん。こんにちは。
どくだみ荘へようこそ。

山のふもとにお引っ越しを。それではこれから、鳥や虫や小動物や、
いろいろなものとの出会いがおありになるだろうと思います。
覚悟していらしてくださいね。なんて、脅しちゃいけませんね(笑)。
あさぎさんはこれまで、街中にお住まいでいらしたのですね。
ホトトギス。我が家の上を夜中や明け方に飛んでいくのは、ほんの2声3声。
だからとても風情があるのですが、ホトトギスのたくさんいるところでは、
それこそずうっと鳴き続けに鳴き続けるのだとか。
それでは、風情どころではなく、うるさいだけかもしれませんね。^^

でも、昔のひとも、あの悲しげな鳴き声を愛していたのでしょうねえ。
聞きなし、としては『特許許可局!』の方が近い感じがしますね。

ヌートリアは、私、まったく知りませんでした。
動物自体は知っていたけれど、まさか日本にいるとは。関西圏に多く繁殖
したようですね。関東では、私、知らなかったなあ…
ヌートリアの赤ちゃん。そんなに可愛い鳴き声ですか!聞いてみたいです。
親の鳴き声は、You Tubeで聞くことが出来ましたが。
逆に、こちらの近くの川べりを散歩しているときに、ヌートリアがいきなり
出てきたら、びっくりするだろうな、と思います。
でも、可愛い姿ですから、いつか会ってみたいな。

あさぎさん。ありがとうございます。
またお気が向かれましたら、どくだみ荘、お訪ねくださいませね。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。




肝を潰す

こんにちは、彼岸花さん。
こちらの方では、はじめまして^^。

僕は最近になって山の麓に引越ししたのですが、つい2~3日前から真夜中にホトトギスの声を聞くようになりました。
声のパターンは知っていたものの、真夜中に聞くのは初めてだったもので、大地震の前触れだろうかと肝を潰していました。(数時間も鳴きっ放しなので非常に奇異に感じました)
単なる無知が原因と知り、安心いたしました(笑)。
以前は街なかで暮らしていたので、本当に新鮮な体験です。

けれど、どう「聞きなし」をしてもあれが「てっぺんかけたか」には聞こえませんねぇ。

以前、釣り場でヌートリアの子どもの鳴き声を聞く貴重な機会があったのですが、凄くキュートでぐっとくる声でした。
YOUTUBEでも発見できなかったので、恐らく日本でも僕を含めてほんのわずかな人しか聞いたことがないと思います。

個人的に、あらゆる動物の子どもの鳴き声中、最もキュートな鳴き声だと思います。
河原をお散歩する際には、ぜひとも聞き耳を立ててみてください。^^

Re: さかごろうさんへ

ホトトギスの声。おわかりになりましたか?
わからなかったこと、すっきりしてよかったですね(笑)。

夜、一羽だけ鳴きながら飛んでいるのを聞くと、切なげで
たいへん風情がありますが、娘がいうように、毎朝4時半から
ホトトギス、カッコウ、コジュケイの大合唱で起こされたのでは
風情もなにもないかもしれません。
あ。コジュケイは『ちょっと来い!ちょっと来い!」と鳴くので
すぐわかります(笑)。

お家の近くにそんなドングリや杉の林があるっていいですね。
私は樹木が見えないところでは生きていけない人間です(笑)。
だから、今住んでる家も、自分のとこの庭はせまいけれど、隣の
お庭があまり手が加えられてなくて広くて、素晴らしい杏の木があるのが
決め手になって買うことにしたのだったくらいです。

その杏の木が切られて、ヒヨもあまり来なくなってしょぼんとしている
私です。

ありがとうございました。キジもいたなんていいなあ…

Re: 依里さんへ

> 言い伝えなどは、残酷で悲しい話が多いですね。

そうですよね。日本のも世界のも、民話とかって残酷なものが多い。
昔は人間が自然の中に身を曝していたので、自然のわからないところに
今以上に恐怖したのだろうし、人間同士も、より動物に近い感情を
持って生きていたと思うの。だから、残酷。というよりは、人間の本性を
より、突いているんじゃないですかなあ。

> そんな私の育った場所では生き物はあまり見掛けなかったので、どこかに行った際に見かけると、逃げ惑ったりなんかします(笑)

ここのところ読んで、悪いけれどちょっとだけクスッとしてしまいました。
小さな小さな羽虫が電車の中にいても、逃げ惑っているお嬢さんなどがいて、
あ、依里さんもそうか!と(笑)。
笑っちゃいけないかな。虫などが嫌いな人は、本当に恐怖しているんですものね。
私は、どちらかと言えば、割合平気な方です。ものによりますが。

白、黒、グレーの三色の鳥は、たぶん、ハクセキレイという鳥ではないかと思います。
スーパーの駐車場などをよちよち歩いている鳥ではありませんか?
人を恐れず、わざと人の先へ先へとよちよち歩いて行くようなことをする。
尾っぽを上下します。

『とりネタ』『虫ネタ』でぞぞっとしたいなら(笑)、講談社から出ている『とりぱん』
という漫画は、私の大好きな漫画です。作者は、とりのなん子さん。
でも、あんまりぞぞっとしたくはないですよね。

依里さんは都会っ子さんなんですね。
よし、これから、植物や虫、鳥のことを彼岸花さんが教えてあげる。
あ。遠慮します?(笑)

No title

『テッペンカケタカ』
一体どんな鳴き声なんだろう? と思っていましたが。先日、休日の朝にいつも聴きなれている鳥の鳴き声が・・・。
それこそ『テッペンカケタカ!』と鳴いていました。

あ! あの鳴き声はホトトギスだったのか。

私が住んでいる所は、小高い丘(・・・・・というか山、かな?)だったところを切り崩して作られた住宅地で、近所には面積は小さいですがどんぐりの木や杉林などがあります。
そのせいかなのかどうか、ホトトギスやカッコウなどの鳴き声をよく耳にします。
2年ほど前はキジの鳴き声もありました。
姿も何度か見かけたことがあるのですが、最近はさっぱり・・・。
キジも鳴かずば・・・。なのかな?

ホトトギスの話から離れてしまいましたね(笑)

No title

言い伝えなどは、残酷で悲しい話が多いですね。
ところで、私は今まで何箇所か移動しているのですが、どこもベッドタウンです。自然はなく、自分も含め、住んでいる人々は都心との行き来だけで、住んでいる所にそれ程関心がなさそうに思えます。

そんな私の育った場所では生き物はあまり見掛けなかったので、どこかに行った際に見かけると、逃げ惑ったりなんかします(笑)

鳥は苦手ですが逃げる程嫌いではありません。ホトトギスやカッコウは近所にはいない気がします。例え鳴き声を聞いても、私には区別がつかないのかもしれません。。。
最近住み始めたこの土地では、白、黒、グレーの三色の鳥をよく見かけます。すずめより大きく、カラスほど大きくない。今まで見かけた事がなかったので、何の鳥だろう?とよく思います。
ちなみに水辺が近いので、よく鴨も見ます。鴨はまあまあ可愛いですね。鳴き声はいまいちですが。。。

Re: ららさんへ

ホトトギスの声、いいですよね。
ららさんの、風景のお写真見ているといつも、
そこで鳴き交わしている鳥の声はどんなだろうと想像してしまいます。
ららさんのお写真はいつも、風や光や、匂いも画面から鮮やかに立ち昇ってくるの。
写真って、不思議に、なぜか無音の世界、という気がします。
私だけのイメージかな。

ホトトギスの声はとりわけ、『いのちの限り』の鳴き声、という感じがして
好きなのです。
今日あたり、鳥の記事、アップしますね♪

ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば
ただありあけの 月ぞ残れる

凄い歌ですよね。
本当に壮大。その言葉がぴったりします。

昔の人は、自分も自然の中の一つの存在とちゃんと認識していて、
宇宙と自然の壮大なドラマに、今の人より敏感に感応していたような気がします。
人間は、その宇宙と地球の大自然に比べれば、本当にちっぽけな
存在なんだけれど、それを認識するのも人間、
そうしてそこからこのような大きな歌を詠み出せるのも人間…
そう考えると、ヒトが人として生きていくことの意義を強く感じさせられますね。

No title

ららも先日ホトトギスの声を聞きました
ホトトギスの声は
届かない想いを歌い続けているような
痛ましいほどの切なさがあります
不思議な民話があるのですね・・・
悲しみに溢れたお話しで、ますます悲しく聴こえそう・・・

後徳大寺左大臣の歌も好きです
夜明けの月はとても澄んでいて
ホトトギスの声が響くこの世界と月の残る遠くの宇宙が
心のなかで一体になった壮大な歌ですね

Re: 乙山さんへ

ホトトギスの声。
記事内にお借りしていたYou Tube 動画が、一番その声の感じを
捉えてくれている気がしますので、ぜひ、お聞きくださいね。
夜の空を鳴きながら近づいてきて、家の上空を飛んで過ぎる。
そうして明け方の空の遠ざかっていく…、
その感じがとてもよく出ています。

私が聞くのは大抵深夜1時ごろです。
一度聞いたら忘れられない鳴き声です。『特許許可局!』という聞きなしは
とてもその声をよくとらえていると思います。

『自己批評!』(笑)
なんの鳥でしょうね。いろいろ考えてみたのですが思いつきません。
でも、愉快ですねえ。乙山さんの語り口が愉快でクスッとしてしまいました。
ヒヨドリはいつもキーッキーッとうるさいのですが、春3月ごろには、
「ええ月や(ん)け!』といいます。月の出ていない時間にそう言われてもねえ(笑)。 

Re: morinof さんへ

morinof さんも、お父さまから、ホトトギスの話を
お聞きになられたんですね。
木の細工物をなさりながらだったでしょうか。それとも
お膝の上でだったでしょうか。

母の語り口は、大分弁と博多弁が混じったものでした。
もう、母の語り口やその声をうっすらとしか思い出すことができません。
でも、歯切れのいい話し方をするひとでした。
声を何かの形で残しておけばよかったな。

ホトトギスの話はほんとに悲しい物語。
毎年、2,3回しか聞けない声なのですが、その声を聞くのが
楽しみなのです。母の思い出と固く結びついているから。

鳥の鳴き声には

こんばんは。鳥の鳴き声はいろんなふうに聞こえてきますね。
じつはホトトギスの声を、
「あっ、これがホトトギスだ」
と、ちゃんとわかって聞いたことがないのです。
正直に告白しておきますね。

乙山の住む近所で、たまに聞く鳥の鳴き声で、
「ジコヒヒョー=自己批評」
と聞こえてくるのがあります。
それを聴くたび、複雑な気持ちになるのです。

あゝ、よく似た話し

 ホトトギスの話し、幼いころ父から聞きました。
それぞれに脚色しながら話していたのでしょうが
なんて悲しい話しなんでしょうね。
今、思い出しても胸がきゅっと痛くなります。
プロフィール

彼岸花さん

Author:彼岸花さん
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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

ペシャワール会
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国境なき医師団
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