『未来を見据えて ①』

とにもかくにも、衆院選の結果はあのように出てしまいました。
もう、敗因をいろいろ分析したって仕方がない。
負けは負けです。それも完膚なきまでの負け。
民主が微増したとかそんな問題ではなく、要するに安倍政権に信任を与えてしまった。
その事実は重いのです。途方もなく重い……
だが、今は原因究明などより、これからどうしたらいいのか、そのことを考えていかねばと思います。
日本の国情は、前の記事にも書いたとおり、いろんなことが待ったなし。

でも、一応選挙戦に対し私が思っていたことは書いておきましょうか。

1.解散総選挙の目的はアベノミクスを問うことなんかじゃなかった。

今回の安倍首相による解散・総選挙は、はっきり言ってその目的は、『安倍政権の延命を図ること』
だったと、私は思っています。
巷では随分、消費税増税の先送り判断がどうのとか、アベノミクスへの評価だ、とか
いや、大義がない、とか、いろいろなことが言われ、街頭などでの市民へのインタビューでも
『景気を良くしてほしい』という声が大きかったようで、何やら経済問題に争点が特化された
選挙戦になってしまった印象があります。
その陰で、国民にとって、経済問題と同等に大事なはずの憲法改定問題や、集団的自衛権問題、
秘密保護法施行などと言った問題は、印象がぼやけてしまいました。

しかし、これほど解散の目的がはっきりしていた選挙などなかったじゃないですか。

安倍さんははっきり言って、解散前はだいぶ追い込まれていました。
安倍政権にとってまずい要素が次から次に出てきていました。

①閣僚、とりわけ彼が看板のひとつに掲げていた『女性』閣僚の相次ぐ不正事実発覚。
 それが宮沢洋一経済産業大臣周辺の政治活動費流用問題や江渡聡徳防衛相の関連政治団体から
 江渡氏個人への寄付問題など、不祥事問題がほかの閣僚などにも飛び火して追及されそうになっていた…
②北京でのAPEC首脳会談での、あの、安倍総理が習近平氏から受けた冷たいあしらいは、
 この上なく大きな侮辱だったでしょう 。しかし、安倍氏が傷ついたとすれば、
 あの握手場面そのものよりもむしろ、日本国民の冷めた目線によっての方が大きかったのじゃなかろうか。
 普通なら、もっと周囲がわあわあ『失礼だ!』とか総理の代わりに騒いでくれそうなものだが、
 案外周りの反応までが、冷たかった。『まあ、あんな態度取られても仕方ないよなあ…』というような…
 オバマ氏からも日米関係の緊密さと比例するほどの親しい扱いを受けたわけでもなく、
 APEC,続くG20での安倍氏は、非常に孤独だったのではなかったろうか。
③北朝鮮の拉致問題は譲歩すれども進展なし。
④首相在任中の大きな外交成果にしたかったプーチン来日もとりあえず当分なし。
⑤自衛隊と米軍の役割分担を定めた防衛協力の指針(ガイドライン)交渉でも、日米間に
 微妙な姿勢の違いが仄見えることも、安倍氏にとっては一つの焦り要因であったろう。
 つまり、自衛隊の集団的自衛権行使容認を、閣議決定によって強行するという荒技まで
 使って、日米間の軍事協力を確固たるものにし、尖閣などで一旦ことあったときには
 全面的にアメリカの支援を取り付けたい日本側に対し、中国との関係をも悪化させたくない
 アメリカ側は、尖閣諸島をめぐる有事、という日中間の問題に巻き込まれたくないという
 思惑から、日本ほどガイドライン改訂にも積極的でないように見えること。
 http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0M601B20140309
⑥TPP交渉も進捗しない。
⑦滋賀県知事選。沖縄県知事選での敗北。福島県知事選で、民主・社民が建てた候補に
 相乗りしてまで、『負けることを避けた』ことに、自民党の危機感が見えた。
 来年の統一地方選を前に、負け癖を国民の前に見せることはできなかった危機感の表れ。
⑧何より政権にとって決定的にマイナスだったのは、11月17日、7〜9月期の国内総生産
 (GDP、季節調整値)の速報値が、2四半期連続のマイナスで、年率換算で1.6%減となったこと。
 (12月8日、実はそれよりさらに0.3ポイント低く、1.9%減であったことが発表されている!)
 安倍政権にとっての一番の売りの、アベノミクス効果までが危うくなってきていた…!

以上のような、安倍政権にとってのさまざまな問題が次々に表に見え始めていて、
G20の頃の安倍さんは、顔色が土色になっているように見えました。
すわ、再び首相の体調悪化か、などと囁かれたのもこの頃です。
首相がG20でまだオーストラリアにいるころは、解散の大義が、与党内部からも経済界からも
マスコミからも問われていて、安倍さんのこころは揺れていたのじゃないかと思います。 
安倍さん自身が、過半数取れなかったらやめる、などという弱気な言葉を吐いたのが、
その表れと私は見ていました。

ところが。ご本人の考えか、周りによほどの知恵者がいてアドヴァイスしているのか、
(そもそも2012年夏、安倍さんに総裁選立候補を進めた菅現官房長官は、すごい策士だと思います)
安倍さんは開き直って、選挙の争点を『アベノミクスの評価』という一点に絞ります。
国民が一番関心を持っているのは『景気回復』の4文字だと見て取って、その他の
争点は、殆どわざと語らずに、選挙期間を走り抜きます。
集団的自衛権も憲法改正も、原発再稼働も、沖縄も、秘密保護法も、TPPも、本来ならば
国家を揺るがすような諸問題は自分からは争点に取り上げない。
最初の内は、それでも『国民にとって大問題である消費増税問題は、やはり国民の皆さんの
信を問わないと』、などと言っていました。原発再稼働とエネルギー問題、集団的自衛権行使、
秘密保護法、TPP、沖縄の基地問題…
そのような重大問題は勝手に進めていく政権が、消費税増税問題だけには、国民の信を問う、
というのはおかしいじゃないですか!
というような声が聞こえたかどうか知りませんが、自公政権は、そもそもの消費増税論さえ
あまり語らずに焦点を上手くぼかしてしまいます。
ひたすら『アベノミクス』。『アベノミクス』だけを連呼します。
『この道しかない』という訴えは、景気回復をただ願う国民には、実にわかりやすい
シンプルかつ、国民の思考力を封じて文句を言わせない強さを持っていたと思います。

新聞などマスコミの選挙前予測は、ことごとく自公の勝利を報道して、
『なんだ。投票しても変わらないのかぁ』と、選挙民の投票意欲を奪い、結果的に
安倍さんの後押しをします。
実際国民に行った事前アンケートの声がそういう結果ではあったのでしょうが、
この選挙前予測が、さらに国民の『選挙に行っても無駄だ』というあきらめを生んだ影響は
否めなかったと私は思っています。負けは負けだと思いつつも。

安倍さんの表情が変わってきました。
自信に溢れ、勝利を確信した顔になって行きました。

結果的に、安倍さんは、衆院の三分の二議席以上を自公で得て、悲願の憲法改正に、
プラス2年の時を稼ぎました。
あと2年で任期が切れるところを、あと4年という時間の猶予を得たのです。
4年あれば、安倍さんの在任中に、憲法改正という、祖父もかつて歴代自民党総裁の誰も
やり得なかった憲法改正という大仕事を、やり遂げることができるかもしれない!…
そういう見通しになってきました。
そうして、女性閣僚の不祥事から見え始めたさまざまな安倍政権にとってのマイナス要因を、
これですべて、チャラにしてしまうことに成功
しました。
さらにさらに、これで安倍政権は、『国民のお墨付きを得た』のです!
憲法改正でも、原発再稼働でも、なんでも堂々と胸を張って出来る。
なにしろ、国民は、安倍政権を支持したのです!彼の手法に、あともう4年の信任を
与えたのです!
あとになって、『もう少し自民党票が少なくてもよかった』『自公の勝ち過ぎだ』などと言っても無意味です。

この時期に解散総選挙をしたというのは、まさにまさに起死回生の策でした!
お見事というしかないくらいです。
今回の解散劇は、少々経済政策の先行きや人気に影の差し始めた安倍政権の延命を図り、
そうして悲願の憲法改正を成し遂げるための、まさに素晴らしい安倍氏プロデュースによる、
『安倍劇場』における、『安倍独演劇』だったと私は思っています。見事でした。
この時期を逃していたら、安倍政権の人気はもっと下がることを続け、肝心の経済問題ででも
数々の問題が浮上して、安倍さんはこれほどの選挙勝利は得られていなかったかもしれないと
思います。こんなことは言いたくないし言っても仕方ないのだけれども…大雪さえ、安倍さんの後押しを
したように思えます………

しかし。『結果がすべて』です。
あとでぐじぐじ「あの時こうしていればよかった」とか「何何のせいだ」とか、「そんなはずじゃなかった」
などと言っても仕方がない。
『あの時こうしていれば』などという、『現実には起こらなかった不確実なもの』と、『現実』は
比べることができないからです。
政治も個々の人の人生もそうですが、常に、選択した道が『すべて』なのです。




2.安倍劇場の行方

上に書いたように、安倍政権にとって、今度の解散総選挙は、これ以上のタイミングは
ありませんでした! 消費増税延期の決定と、解散総選挙のタイミングも過ちませんでした。
これより早くても遅くても、選挙はもっと自公に厳しい結果を出していたかもしれません。

とにかくこれで、安倍さんにとっての悲願の改憲の準備は、盤石の形でもって整いました。
もう、おそらく、誰もそれを止めることはできないでしょう……
国民の多くは、『経済』には関心があるが、『憲法改悪』には関心もなく、危機感を抱いていません。
現憲法が自分たちの生活の諸権利をどれほど保障してくれているか、ということを
実感として知らないからです。

さて。これから、第三次安倍政権は、私たち国民をどういうところへ連れて行こうと
しているのでしょうか。
私には2つの道が見えます。『この道しかない』、ではなく。
一つは、安倍さんがいう、いわゆる『この道』です。
安倍政権がこのまま続いて、大企業や大口投資家など、いわゆるお金持ちのための政治が
続いていく。景気はなんとか持ち直す傾向を見せ続け、多少の、…ほんの多少のトリクルダウンは
あるかもしれないが、大筋においては、貧富の格差が今以上に拡大していく。
その間に、日米の軍事協力体制は整い、日本は、人員面、資金面で、今までとは
比べ物にならない便宜をアメリカに対してさらに図ってやるようになる。
憲法は改正され、日本は『アメリカから押し付けられた憲法をこれでようやく取り戻した!』
と胸を張りつつ、実は、その主張とは裏腹に、アメリカへの隷従をさらに強めていくのです…

選挙後すぐに、この道ははっきりその姿を私たちの前に現実に見せています。

12月15日。
2015年度介護報酬引き下げ
『政府は15日、介護サービス提供事業者に支払われる介護報酬を2015年度の改定で引き下げる方針を固めた。1月半ばの15年度予算案閣議決定に向けて調整する。ただ深刻化する人手不足に対応するため、介護職員の賃金アップ分の報酬は確保し、1人当たり月額1万円程度引き上げる方向だ。』
『利用者の自己負担は軽くなるが、特養など事業者は大幅な減収となる。』(共同通信)

12月17日。
防衛省、武器輸出企業の資金援助制度の創設検討
『防衛省が、武器を輸出する日本企業向けの資金援助制度の創設を検討していることが分かった。国の資金で設立した特殊法人などを通して、低利で融資できるようにする。また輸出した武器を相手国が使いこなせるよう訓練や修繕・管理を支援する制度なども整える。武器輸出を原則容認する防衛装備移転三原則の決定を受け、国としての輸出促進策を整備する。』

12月21日。
集団的自衛権 安保法制に地理的制約なし 政府方針 
『 政府は21日、来年4月の統一地方選後に国会提出を目指す安全保障関連法案に関し、集団的自衛権を行使できる範囲について「日本の周辺地域」のような地理的制約を行わない方針を固めた。』
『10月に日米両政府が発表した日米防衛協力の指針(ガイドライン)の中間報告では、これまで事実上の地理的制約と理解されることもあった概念「周辺事態」を削除している。』

関連記事も載せておきます。

『アベノミクスで株で大儲けした議員たち』

『安倍政権のうちに…勢力拡大加速 改憲派荒い鼻息』
『改憲派が勢いづいている。「美しい日本の憲法をつくる国民の会」「憲法改正を実現する県民の会」などの新組織を次々と結成するとともに、一千万人署名活動を展開する。その中核をなすのが、日本最大級の右派運動体「日本会議」である。安倍政権の間に国民投票を実現し、過半数の賛成を得て新憲法を制定する-。これが改憲派の戦略だ。』

『原発再稼働、安倍路線に追い風 安保法制、憲法改正も』
『与党の衆院選勝利を受け、安倍晋三首相は安全保障法制や原発再稼働など世論の反対が強い課題にも「信任を得た」として、積極的に取り組む構えだ。「安倍カラー」と呼ばれる保守色が強い政策も推し進め、第1次政権で掲げた「戦後レジーム(体制)からの脱却」の実現を目指す。
 最初に取り組むのが、年明けに予想される九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働だ。政権は4月に策定した新たなエネルギー基本計画書で原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働推進の姿勢を鮮明にしている。
 原子力規制委員会の審査は、関西電力の高浜原発(福井県)や大飯原発(同)、九電玄海原発(佐賀県玄海町)でも進んでいる。来年以降、次々と再稼働する事態が予想される。』

『(政権2年を問う)雇用 「雇用100万人増」増えたのは非正社員』




そう。
選挙運動中は、これらのことに関して殆ど語らず、自公圧勝の結果が出た途端に、
本性を発揮して、やりたいことを強引に実行する…憲法さえ無視。国民主権など無視無視。
それがこの政権のやり口です。
安倍政権を勝たせたということは、このようなことが、今後着々と日本で進行していくということです。

その他に、辺野古移設、TPPなども、国民の反対の声など無視して、どんどん進められていくでしょう。
これが、『この道しかない』という、この道の実相です。

霧のかなたに見える第二の道はこうです。
経済でひたすら日本国民を引っ張ってきた安倍政権は、その経済問題によって
足元をすくわれ、失権する。
安倍政権の終焉を乞い希う私ですが、日本人自身にとってこれもそう嬉しい未来図ではありません…。
安倍さんには、どうぞどうぞと辞めてもらいたいけれども、日本の経済が破綻するというのは
さすがに見たくありません。
自公政権は選挙期間中、『アベノミクスを前に進めるか、それを止めてしまうか、それを問う選挙だ』
と言い続けてきました。『アベノミクスが止まれば、株も国債も暴落する』と、いわば国民を不安に
おとしいれ、アベノミクスしかもう日本を救う道はない、という心理に追い込んだのです。

しかし、安倍政権が続けば、ほんとうに日本経済はなんとか破綻せずに、わずかずつながらも
上向きの発展を続け、政権が言うように、大企業の好成績のおこぼれが、末端の零細企業で
働く非正規雇用の従業員や、シングル家庭の母子などにまで達するのでしょうか?
三橋貴明氏。私はこの方の言説に必ずしもいつも同意しているわけではないのですが、
こんなOECDの調査結果を示してくれています。

『反トリクルダウン的政策を』
『蔓延している所得格差の拡大が社会・経済に及ぼす潜在的な悪影響が懸念されている。最新のOECD 調査によると、所得格差が拡大すると、経済成長は低下する。その理由のひとつは、貧困層ほど教育への投資が落ちることにある。格差問題に取り組めば、社会を公平化し、経済を強固にすることができる。 』
『 さて、間もなく発足する第三次安倍政権は、いかなる政策を推進していくでしょうか。
・円安により株価を引き上げ、トリクルダウンを期待する
・円安でも実質輸出が増えない中、輸入物価引き上げを放置する
・法人税を無条件で減税する
・消費税を増税する
・労働規制を緩和する
・配偶者控除を廃止する
・外国移民(=外国人労働者)を受け入れる
・農業やエネルギー、医療保険等の規制を緩和する
 上記は全て、国内の実質賃金を引き下げると同時に、国内の所得格差を拡大する政策です。
 OECDのレポートの結論は、「トリクルダウンは起きない」という話になります。トリクルダウンなど、所詮は政府の株価引き上げ政策や富裕層減税、人件費削減による利益拡大、配当金拡大、自社株買い拡大を望む「一部の国民及び外国人」のための政策を実施する際の「方便」に過ぎないのです。』


こちらは、同じOECD報告についての、東京新聞の書き方です。
『経済協力開発機構(OECD)は今週の火曜日(12月9日)、「多多くの国で過去三十年間で所得格差が最大となった。格差拡大は各国の経済成長を損なっている」との最新の分析を発表した▼推計によれば、格差拡大のために成長率はここ二十年間で米国で6%、日本で5・6%押し下げられた。つまり金持ちはより豊かになったはずなのに、貧しき人は貧しいままで、経済全体の活力もそがれてきたというのだ。欧米有力紙はこの分析を大きく伝え、英紙ガーディアンは一面トップでこう断じた。<OECDはきょう、トリクルダウンという考え方を捨て去った>』

それでも、その現実を直視しようとしないで、このグローバル化する世界において
さらに規制緩和を進めて大企業にさらに肩入れしてその競争力を支え彼等が稼いでくれさえすれば、
末端にもなんとか恵みがいきわたる…、そう政治家も経済人も学者たちも、…そして我々一般国民も
なんとなく淡い期待をまだしているように見えます。
しかし、そんな淡い期待など、グローバル化した世界の留まるところを知らぬ欲また欲の
経済のダイナミックな動きの中では、本当に脆いものではないでしょうか。
 『アベノミクスの大胆な金融緩和は物価や資産価格を押し上げ、資産を持つ高所得者は
株や土地の値上がりで潤う。しばらくすれば成長戦略が軌道に乗り、経済全体のパイが大きくなる。
給料も上がるからそれまで待ってほしい』と安倍さんは訴えます。
一方で低所得者は物価の上昇でむしろ苦しくなるのみです。
安倍政権が目指している法人税引き下げも、利益を計上していない7割の法人には恩恵が及びません。
法人税は基本的に今、企業の利益に対して課せられるからです。だから大企業でも、赤字であれば
法人税を払っていない、などというところが出てくる(それでも法人住民税などは払っているケースも)。
法人税引き下げの恩恵を受ける残り3割の法人が、引き下げによる利益拡大を内部留保の充実や
自社株買いに充当してしまえば、あるいは海外工場の拡張や海外企業の買収に使ってしまえば、
従業員のベースアップや中小企業への下請け代金引き上げなどには回らず
「トリクルダウン」は発生しないのです。

現にそうした傾向が明らかであるからこそ、安倍政権は、11月20日、経団連の榊原定征会長などを
呼び、円安で収益が向上している企業に関して「賃金支給総額の増額や、設備投資などの
積極的対応が求められている」と述べ、昨年に続いて賃上げを要請しましたし、
また、つい先日12月16日にも、関係閣僚と経済界、労働界の代表が意見を交わす「政労使会議」を開き、
安倍首相自ら「来年春の賃上げに最大限の努力を図っていただきたい」と再度要請しているのです。
政府がこのように、本来は労使間で行われる賃金交渉に積極的に介入し、何度も賃上げを
要請する、ということは、それだけ、大企業の財布のひもが固く、法人税減税や円安・株高の
恩恵で会社自体が潤っても、それは内部留保になっていき、なかなか労働者の賃金や
設備投資や、まして下請け企業に支払う価格に回されていかない、ということの証拠でもあります。

アベノミクスは、一見、株価をつり上げ円安を招いて、効果を上げつつあるような『ムード』を
この国に醸し出しました。
そのために、日銀と協力して異次元の規制緩和を行い、国民の年金の株に投資する比率を
上げるというテコ入れまでしています。
2014年10月、約130兆円の公的年金の積立金の運用基準見直しを検討する
「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」は、国内株式と外国株式の割合を倍増させ、
合わせて全体の5割程度にまで引き上げることを発表しています。
従来の運用基準は、国内債券が60%を占め、国内株式と外国株式は12%ずつとなっていて、
ほかは外国債券が11%、現金などの短期資産が5%。新たな基準では、国内株式と外国株式を
それぞれ20%台半ばにまで増やし、国内債券を大幅に減らすことにしたのです。
これに先立つ4月22日、政府は、この年金積立金管理運用独立行政法人の運用委員会の委員7人
の人事を刷新しています。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39160

そもそもこの年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)とはどういう組織なのでしょうか。
厚生労働省が所管するGPIFは、厚生年金と国民年金の積立金約130兆円を有する世界一の
公的年金資金運用機関です。その規模は、米国最大の公的年金基金「カルパース
(カリフォルニア州職員退職年金基金)」が30兆円であることからも、いかに巨額な年金マネーであるかが
わかります。
それなのに、安倍政権は、なぜ、人事まで刷新し、今年株での運用比率を上げたのでしょうか。
『安倍晋三首相は、1月、ダボス会議でGPIF改革を公言しています。
海外の機関投資家は長らくGPIFの資産構成の見直しを強く求めてきた。
昨年末段階の資産構成割合は国内債券が55%、国内株式が17%、外国株式が15%。
安倍首相が「Buy Abenomics」(2013年9月のニューヨーク証券取引所でのスピーチ)と言うのであれば、
GPIFは国内株式の運用比率を20%程度に引き上げるのが先ではないかと主張しているのだ。』
『そうすれば、我々も「日本買い」を推進する。そうなれば、アベノミクスの成否の鍵を握る
東京株式市場の日経平均株価も上昇する』と。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39160?page=2
安倍政権は、この、海外機関投資家たちの要求を飲んだごとくに、年金運用における
国内・国外の株式投資の比率を増やし、彼等が言うとおりに、東京株式市場の日経平均株価は
上がりました。
安倍政権の強引な経済政策のその効果はあったように、見えるかもしれません。
現実に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が25日発表した7~9月期決算では、
収益が3兆6223億円となり、運用資産額は過去最高の130兆8846億円になったといいます。
国内株の値上がりに加え、円安で外国資産の評価額が膨らんだのが要因。
http://blogos.com/article/99814/
ここまでは大成功です。年金資産はおかげで増えたのですから。

しかし、株価など、淡いバブルのようなものです。
現に、今選挙が終わったばかりの12月16日、石油価格の暴落とロシアルーブル暴落の影響を
すぐさま受けて、日本の株・先物取引は、16,000円台に暴落したじゃないですか。
経済に力を入れる安倍政権の安泰が確認された総選挙の2日後、普通は、それを好感して
株価は上昇するのが予測されていました。
ところが…日本国内のそんな状況などとは関わりなく、世界のどこかで何かが起これば、
世界の株価は連動してこのように乱高下します。
アベノミクスのこれまでの一見の成功の様相など、たまたまアメリカの経済が回復基調に
あるからだけなのではないでしょうか?

しかし、安倍政権は、その危なっかしい『株価上昇』というものを、今回の選挙戦でも、ほとんど
唯一の売りにして、『株価は上がったじゃありませんか』と何度も何度も繰り返すことによって、
まるでアベノミクスが功を奏しているような幻想を盛んに振りまきました。
そして、『景気回復』を夢見る国民もまた、その幻想の甘い文句に乗っかって、『それじゃあ、
現政権にアベノミクスをもう少しやらせてみようか』と考えたのが、今度の選挙戦の結果となった
のではないでしょうか。

しかし、…
安倍政権は、国民全体のことなど考えているでしょうか?
上記に縷々書いてきたように、この政権の目は、自分等も属する富裕層の方にしか
向いていないのではないでしょうか。
そうしてまた、アメリカの圧力には極めて弱い。
年金積立金管理運用独立行政法人の運用委員会の人事なども、公的年金の運用を国債
中心としてきた厚生省という岩盤を崩し海外機関投資家への道を開く…、
いわばTPPにも通じる、外国資本とりわけアメリカの大企業や巨大投資家が日本での活動が
しやすくなるようにすることと、
もう一つ、国家が公的年金の株運用比率を上げることによって、株価そのものを引き上げ、
自分たちの政権の実績として国民に向けて宣伝するという目的の2つがあったからではなかったでしょうか。

アメリカでは、国民の将来を支える公的年金は、株式投資などリスクの高いものの比率は少なくし、
安全運用を徹底していると聞いています。
あのアメリカでさえ。

世界は動乱期に入ろうとしているように思えます。
『世界の警察アメリカ』を自他共に謳っていたアメリカは、今、世界の紛争から手を引きたがっています。
プーチンに率いられて好調であったかのように見えたロシアも、ウクライナ問題などから世界からの
孤立化を深め、中東の石油価格引き下げのショックから、ロシアが頼る天然ガス、石油資源の
価値が下がってルーブルは暴落。
中国は世界の中における中国の存在をますます強化する道を邁進。北極海の開発にも
戦略的に積極的に加わり、また、南海においても自国の権利拡張を進めています。
経済はアメリカやヨーロッパなどの先進諸国が動かしているように見えますが、その流れにも
恩恵にも属さないイスラムの国家の一部では、テロリストが増殖していき、今や
『イスラム国』の脅威は、遠い中東などの地域のことではなく、アメリカ本国、フランス、イギリス、
オーストラリア…アメリカと軍事行動を共にする国々の国内での恐怖となって拡大していきつつあります。
北朝鮮のサイバー攻撃の疑いなどで、アメリカは再び北朝鮮をテロ支援国家に指定。
北はすぐに反発。アメリカと強調する国への報復を表明しています。
………
そのように、世界は今、どこかで何か異変が起これば、一瞬にして世界金融もまた脅かされる
不安定な時期にどんどん移行しつつあるのです。
リーマンショックのように、行きすぎた金融バブルも怖いです。

今、日本は、安倍政権の元、その金融バブルをひたすら政官経済界上げて起こそうとしているようにしか
私には見えません。
『株価が上がる』…そんなもの、あっという間に、何らかの要因で『株価大暴落』。
国民の年金運営も破たん、などということになりかねません。

日本は、今も相当無理をしている。なにしろ歳入の倍の支出を国債発行などで、
なんとかかろうじて支えているのです。前の記事にも示したように、50兆の歳入の国が、
100兆の支出をしているというのがこの国の経済状況です。

『アベノミクスはモルヒネと同じだ』
ニューライトの若手論客として 売り出し中の中島岳志北海道大学准教授が11月28日の
毎日新聞のオピニオン欄で述べた言葉らしいです。
今、耐えがたい痛みのために、モルヒネにさえ頼らなければならないご病人も現実に
いらっしゃるであろうことを考えれば、迂闊な例えは慎まねばとは思いますが、それでも
アベノミクスは、モルヒネ、とはうまく言い得ていると思います。

私が、心配をもって想像するのは、その危なっかしい日本経済の足元を、グローバル経済の
大波が掬いにくることです。

『野村総合研究所の1万人のアンケートをもとにした推計では、昨年8~9月時点で株式を持っている個人は約11%、投資信託は約9%にとどまった。日本証券業協会の調査でも、2012年10~11月時点で株式や投資信託、公社債などを持つ個人は約17%だ。
株高の恩恵を一番受けているのはだれなのか。東京証券取引所などの調査によると、今年3月末時点ですべての国内株式のうち外国人が保有する比率(時価総額ベース)は30・8%と初めて3割を超えた。国内の個人投資家の比率が18・7%と、6年ぶりに2割を割り込んだのとは対照的だ。
機関投資家も含む外国人は、安倍政権が発足する直前の12年10月から昨年末まで一貫して買い越すなど、アベノミクスに期待して持ち株比率を高めてきた。財務省の8日発表の統計でも、海外に住む人による日本株への投資は11月、2兆6471億円の買い越し。昨年4月以来の大きさで、10月末の追加緩和を機に買いを加速させている。
 足元の日経平均は安倍政権発足時より8000円近く上昇。多額の含み益を得ている外国人も多い。』
『日経平均1万8千円超え、最も恩恵受けたのは誰?』

日本の株式のおよそ30%を占めているという海外の投資家が、日本という国の政治や
先行きに見切りをつけたら、壮絶な日本売りが始まる…
アベノミクスなどひとたまりもないだろう…
そもそも、アベノミクスの3本の矢など、実質のない幻のようなものにすぎないのだから。
株価は急落。
国民の年金の一部をつぎ込んだ相場は、大損だ。その責任はだれが取る?
そんな程度の問題じゃない…日本をかろうじて支えている金融システムそのものが崩壊。
その国民経済を、TPPが無情に襲う。
食料品がうなぎ上りに高騰…。食糧自給の確保という大事な大事なことを自ら捨てた国の国民は、
世界の食糧市場の思惑にいいように翻弄されるようになります…

『まさかそんなことは!』と思いますか。
私も、安倍さん個人への好き嫌いは別として、そんなことにはなってほしくありません。
しかし、リーマンショックもそうでしたが、実需によるものでない金融市場の好況というものは、
ちょうどねずみ講のようなものです。
なんとかそれが回っているうちは、人々の欲望をいやが上にも刺激し、人々に、まるで何か
確固とした実態があるかのような錯覚を起こさせ走り回らせますが、いざ、それがストップすると…
ネズミ講の最後の人のように、末端の大多数の人間は、大きな大きな損害をこうむるのです。
そうして、その狂騒をしかけた人間たちは、さっさと売り抜けして自分たちだけ利益を確保して
あとは知らん顔です。
リーマンショックのようなものを経験していながら、まあだ人間は懲りないのでしょうか。
アベノミクスは実態のないバブル。
それに海外の機関投資家が見切りをつけたとき、日本はどうなっていくのでしょうか。




希望のないことばかり書くつもりはありません。
次には、私が小さな頭で精一杯に考えた、第三の道、というか、思いつくままの提言を
書いてみたいと思っています。


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Re: 鍵コメさんへ

ふ~ぅ……
一日ばたばた忙しくしていて、今ようやく炬燵に入ってパソコンに
向かえました。

本年も、鍵コメさんにはいろいろなことを教えていただきました。
それなのに、私の方からは、ろくなことは言ったり書いたり出来ず。
鍵コメさんをかえって煩わせてしまったのではないかと思います。

でも、目指すところはきっと同じ。少なくとも同じ方向。
方法は違っても、とにかく自分にできることをそれぞれやっていきたいですね。

ありがとうございました。

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Re: ひげさんへ

ひげさん、こんにちは♪

コメントありがとうございます。
私も株価が上がって悪いことはないと思っています。ただ、その実態が問題。
中小企業なども含め、製造業など実質のある産業が堅調で、それで株価が
徐々に上がっていくというのならいいのですが、異常な規制緩和や、株価操作と
思われかねない国民年金厚生年金などの巨大マネーの株への投資など、危ない綱渡りを
国家を上げてやっているというのは不安です。
株などの投機は、それを持っている人が勝手に損をしたり儲けたり、ということだけではなく、
その振れ幅が極端に大きく下がれば、株など持っていない人の生活までおびやかします。
アベノミクスは、そうした第一の矢だけ。
いわば実態を伴わないバブルのようなものです。
それでもそれが回っている間はいい。それが動きを止めたとき……

国民は、もっと自分たちが生きているこの世界の実相を知った方がいいのじゃないかと
思います。
でも、とほほ…かく言うこの私も、数年前までは、あまり世の中のことに関心が
なかったんです…(苦笑)
少し目を向けるようになったのは、やはり東日本大震災があってから…
とりわけ、原発というものの背負う歴史や原子力ムラというものの実態を知ってからです。

素晴らしいお写真、このごろよく拝見させていただきに伺っています。^^
北海道は憧れの地ですが、現実にはとても行けそうにありません…。
お写真拝見して、行ったような気分に。^^
私は、『霧』に憧れているのですが、いま住んでいるところでは全然見られません。
ひげさんの霧のお写真、うっとりして何枚も辿って見ていました♪

ありがとうございま~す!


No title

彼岸花さん おはようございます。

仰られる通りです。

国民それぞれが自分が、今立っている舞台が、いかなものか理解して欲しいものです。

自らが、二百億という株長者になったという説もあります・・・完全に土台は固まりつつあります・・・。

そろそろ初孫が生まれますが、手放しで喜べない爺ぃ予備軍です・・・。笑)

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彼岸花さん

Author:彼岸花さん
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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

ペシャワール会
http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/pekai/signup.html
国境なき医師団
http://www.msf.or.jp/donate/?grid=header02
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