『東京』

『東京』…

『東京』、っていったい私にとってなんなんのだろう。

40数年前、九州の高校を終えた私は、何が何でも東京に出なくっちゃ、
と思って、とにかく東京に出てきた。

高校が工業系だったので、電子部品を作る、大田区の一応東証一部上場企業の
会社に就職。技術課に配属された。
40数年前の今頃。私は花のOLだった(笑)。
母が工面して買ってくれた、渋い良い色合いの金茶色のスーツや、綺麗な赤紫色の
ツーピースなどを着て、歌にもなったあの『池上線』に乗って通勤していた。
髪は短くして、いまよりほっぺたなどもふっくらとして。
お昼時になると、技術職などデスクワークの社員も、工場の方の社員も、
一斉に大きな社員食堂へ。
食事が終わると、芝生の上で、お定まりのバレーボールを課の人々と(笑)。

住まいは、田無というところ。東京の西の方にあるので、今は西東京市、と
名前が変わっている。大田区からはずいぶん遠い。
なぜそのような遠くに住んだか、というと、次姉が結婚してそこに住んでいたから。
やくざな気質の次姉はあてにできないと知りつつ、やはりあてにして、
一緒に住ませてもらったのである。

義兄は穏やかないい人だった。2歳になったばかりの男の子を目の中に入れても
痛くない、というほど可愛がっていた。
それなのに、姉と義兄は、私が行って一か月もしないうちに離婚。
夫婦間のことは余人にはわからないけれど、どうしてあんないい義兄さんと
別れたいというのか、若い私にはまったく姉の気持ちが理解できなかった。
私が行く前から、夫婦間は揉めていたのだろうが、私が同居したことが
その時期を早めたようで、やさしい義兄になにかすまない気がした。

義兄は会社を辞めて九州に帰り、姉と私と小さな甥が東京に残った。

そこからさあ、糸の切れた凧のような姉は、本来のやくざな性格丸出し。
私と子供を連れて、転々。

この姉といっしょにいては、自分の生活もだめになると思った私は、
一人で小さなアパートを借りて、一人暮らしを始めた。
3畳一間の小さな私の城。
そして、梅雨がもうすぐ始まるという、ちょうど本当に今頃の季節だったな。
私は、大学へ行く勉強をするために会社を辞めた。

そこから先は長くなるので話しません(笑)。

それから約半世紀。
いま、私は、東京と言っても、都心に出るのに小一時間もかかるようなところに
住んでいる。『花の都』に住んでいる、という実感は全くない。

ああ。東京って、私にとってなんだったのかな。

私にはそんな人はいなかったけれど(本当?)、これからご紹介する歌のように、
付き合っていた男性(ひと)のもとを去って、ひとり東京に出てきた女性(ひと)は
たくさんいただろうな。逆に、付き合っている女性(ひと)をこころならずもあとに残して、
東京に出てきた男性(ひと)もたくさんいただろうな。
残された者にとって、東京は、遠い憧れの街、愛する人の住む、
その名を耳にするさえせつない『花の都』だったんだろうな。
また、残して来た者にとっても、生きていくのにせつない街東京、だったんだろうな。

なんでこんなことを思い出したか、というと、会社を辞めたのがちょうど
季節が今頃であったし、ある映画を見たから。
『ボッカチオ’70』という、オムニバス映画。
60年代に作られた映画だが、当時を代表する名監督デ・シーカやフェリーニ、
ヴィスコンティ、モニチェッリが競作している。
その中に、会社が終わってわ~っと大勢の労働者が出てくるシーンがあって、
その空気感が、まったく私が勤めていた頃のことを思い出させたからである。
普段、たった2カ月しかいなかった会社のことなど思い出しもしないのに、
ふと珍しく懐かしくなったのである。
何しろあそこで私の『東京』は始まったのだったから。

ああ。『東京』…。
住んでいながら、私には遠い街である。

こんな歌、お送りします。
これは、さかごろうさんの記事のトラックバックと言えるかもしれません。

さかごろうさん。いきなりずっと前の記事http://fairground.blog78.fc2.com/blog-entry-908.html
の利用させていただきますが、ごめんなさい。


それでは、歌をどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=LPoiY0jlyWE


東京タワー…。
この映像に出てくるけれど、いくらスカイなんとかが出来ても、
私には、東京はやはり東京タワーだ。

私は東京タワーを愛し続ける…。
『東京』をいつもちょっぴり複雑な想いで見つめる…。

だって、私は『東京』に恋して失恋したから。
そうして、いまもなお、『東京』に恋し続けている気がするから。
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テーマ : 思うこと
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Re: 依里さんへ

> ただ、マイノリティでも、独りモノでも、変わりモノでも、あらゆる多様性を受け止める都市、東京には愛着を感じます。

そうですね。東京にはいろいろなものを受け入れる許容性がありますね。
どんな格好をしていても、どんな風変わりなことをしていても、許される街。
なんでもあり、ですものね。
「愛着」という言葉、わかる気がします。

でも実は、私には愛着を感じる場所がないの。生まれ故郷に愛着を感じるわけじゃないし、
今住んでいる郊外の街にも別に愛着は感じていない。
どこにいても何か自分は余所者、という気がしてならない。
敢えて言えば、今住んでいるところの川べりの風景だけかな。
それだって、自分の~、という感じはないの。

でも、恋する街はある。それが『東京』。
現実の街、というよりは、イメージの『東京』。
『江戸』の頃からの東京を、恋しています。

そうだな。私ももう少し、歩いてみよう。
きっともっと好きになりそうな気がします。ありがとう。


No title

私は自分が都会人だとは思わないけれど、首都圏人であるとは感じています。
なぜなら、都心の生活の一部に、自分がすんなりと組み込まれている気がするからです。
私は都心のトレンドは知りません。お洒落な場所も、お姉さま方につれて行くがままに行くだけです。
ただ、マイノリティでも、独りモノでも、変わりモノでも、あらゆる多様性を受け止める都市、東京には愛着を感じます。
東京が好き、と言うのとはちょっと違う気がするのですが、ホッとする気がするのは確かです。

Re: morinof さんへ

『池上線』に反応してくださり、ありがとうございます。
ちょうどうまい具合に、『東京』の歌と同じページに入っていましたね。

私も池上線に乗って会社に通っていたその頃は、そんな恋をすることもなく、
ただ環境に慣れるのに必死でした。
同じ技術課の女性の先輩の家に遊びに行ったとき、私と同じ年で、働きながら
大学の二部に通っているその人の従妹がいて、「そうか!そういう方法があったか!」
と、がぜん進学したくなりました。

若き日のmorinof さんも東京にいらしたんですね。当時の京王線はどうだったでしょう。
私の利用した、池上線も西武新宿線も、住宅のすぐそばをかすめるように
電車は走っていました。とてもローカルな感じだった。
『東京』は、その頃からずっと、私にとっては遠い街、という存在であったような
気がします。東京の幻影におびえていたんでしょうね。
『東京』は今でも、私にはなにか『痛い』ような気のする街です。

池上線

 本文から外れて『池上線』に反応してしまい、久し振りに聞いてみました。
私は京王線でしたし、こんな恋も経験してはいませんが何だか胸が熱くなり
若き日々を思い出してしまいました。

Re: さかごろうさんへ

さかごろうさん。
早速お越しくださり、また、快くトラックバックお許しくださり、
ありがとうございます。

さかごろうさんが『東京』の歌のことをお書きになった時、あっ、と思って
コメント入れようとして、その時入れなかったので、こういう形に
させていただきました。いい曲ですよね。
私はこの人の歌い方がとても好きで。「はなのみやこ~♪」と歌って、後ろにちょっと
引くでしょう。そんな歌唱の仕方が、歌をとても大事にしてる人に思えて、
声も明るくナイーヴなんだけど、でも基礎のしっかりした発声に思えます。
画像もこれが一番いいと思って。
若い頃のも、同じページにありますから、よかったらご覧になってくださいね。
森田さんの髪、ふさふさしています。
でも、この年代になった森田さんが、芝公園で、東京タワーを背景にして
歌っているのがせつなくていいかな、と思いました。

喜んでいただけてよかった。SIONのも聴いてみたいんですが、
You Tube には無いんですよね。

『東京』。私にはつかめなかった街でした。
でも、今でも都心にたまに出ると、きゅ~んと胸のどこかが痛くなります。
特に、ビルの谷間から青空を仰ぐ時や、夕暮れが近づきネオンが灯り始めた街を
西陽に向かって帰るとき。
そんなとき、「ああ、私は東京に今でも恋してる!」と思います。

いま、東京に住んでいなくても、『東京』という言葉に何かの想いを抱く人は
たくさんたくさんいらっしゃるでしょうね。
さかごろうさんにとっては、どんな『東京』なのでしょうか。

いろんな人の熱くてせつない想いの交錯する大都会。『東京』……

No title

彼岸花さん、森田貢さんという方が歌う「東京」聴きました。

これです! まさしくこの曲なんです。
そうかぁ、この方なんですね、元祖は(笑)
この曲には個人的に思い入れがありまして、いま聴きながら涙腺が緩みそうです(苦笑)

それからトラックバックの件ですが、もちろんOKです!(^^)! 目を留めて下さってありがとうございます。
でも、あんな記事でいいんでしょうか?(汗)

彼岸花さんも「東京」に恋しているんですか?
私も「東京」に対して、いろいろと複雑な想いがありまして、ときどき南の空を見つめることがあります。(住んでるところが東北なもので.....)
「東京」と聞いて思いを巡らす人は、ほかにもたくさんいらっしゃるんでしょうね。
プロフィール

彼岸花さん

Author:彼岸花さん
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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

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