『天使の歌声』?

土曜日の朝。
爽やかに晴れ渡っている。今日は全国的に晴れたところが多いのかな。
夏の到来をおもわせるそんな朝。
今日も、美しい歌をご紹介します。

こんな名前の歌手をご存じだろうか。

ロベルティーノ・ロレッティ。

Wikipedea の『多数の言語版にあるが日本語版にない記事/人物/9言語版』。
そこに彼の名前が出ているくらいだから、海外では知られていても、日本ではあまり
知られていない歌手だったのではなかろうか。
彼が活躍したのは、1950,60年代。
彼がティーンエイジャーだった頃だけである。彼はその、少年の声が売り物だったから。

彼は私より一つ上。まったく同年代だから、もし彼が日本でも有名だったのなら、
私は知っていなければならないはずなのだが、さて。困ったことに、私は昔も今も、
あまり音楽や映画に詳しくないのである。だから、彼について、リアルタイムには語れない。

私は彼を偶然見つけたのである。
自分の心が汚れてきたなと思うとき、自分の心を水鏡のように澄ませたいとき、
私は美しいものに照らし合わせて、それを鎮めたくなる。
無心に顔を洗う可愛いうさぎの顔、ひっそりと咲く花…
素晴らしい歌や映画などの芸術も、そうした力を持っている。
で、イタリア民謡やオペラのアリアなどを聞いているときに、彼の歌声に出会った。

その時私は、カルーソーやデル・モナコ、現代を代表するパバロッティや
アンドレア・ボチェッリなど。世界の至宝とでもいうべき名テノール歌手の歌を聴き漁っていた。

ところがその過程で、ふとロベルティーノ・ロレッティという子供のような顔をした歌手の
写真にぶつかった。よく見ると、まったくの少年である。
が、その歌を聴いてすぐに、胸にじ~んと何かがこみあげてくるのを感じた。
こんな声、聴いたことない。
大人のテノールなら、カルーソーのように卓越した声の歌手は数多い。
逆に、ウイーン少年合唱団のような、美しいボーイソプラノの声も
何回も耳にする機会はある。
しかし、その声は、少年のボーイソプラノでもない、と言って勿論変成期を過ぎた青年の
若々しい声でもない。変声期中の日本の中学生の男の子のような、黄色い声でもなかった。

それは、何とも言えず清潔な、何とも言えず味わいのある、
子供が大人の青年になる前のほんのわずかな間の、奇跡のような、少年期の声。
本当に、『間(あわい)の美』とでも表現したくなるような声である。


まずは、素晴らしい歌声を、じっくりお聴きください。
一曲目は有名なイタリア民謡『帰れソレントへ』。
私がよく水仕事をしながら、無意識に口にしていた曲らしいです。
「らしい」というのは、娘が小さい頃、ママが歌う歌、というと
この曲だったらしいので(笑)。
ロベルティーノ、最初は少年らしくあっさりした歌いぶりから入ります。  

http://www.youtube.com/watch?v=3_0pcI-yHLE

http://www.youtube.com/watch?v=7vqlR-CaBc4

二曲目。Guaglione(ガリオーネ)とは、ナポリの街で、顔見知りではあるけれど、名は知らない、
などという人に親しく語りかける、「やあ、若者!」というくらいの意味らしいです。

彼がどんな人か知りたい方は続きをどうぞ。

彼がどんな人だったのか、ウィキの英語ページから簡単にご紹介しよう。

ロベルティーノ・ロレッティ。1946年、ローマに生まれる。
家は貧しく、兄弟が他に8人もいた。彼が10歳のとき、父親が病気で倒れてしまう。
彼は家を助けるためにパンなどをレストランに配達する仕事をしていた。
なんとなく『フランダースの犬』のネロ少年を思い起こす。
歌が大好きで、配達の途中でも、道々民謡を歌いながら行っていた。それが人々の耳に止まる。
それが大変にうまいということで、複数のレストランの結婚式で歌うことを求められるようになる。
カフェ・グランド・イタリアで歌っていたとき、たまたま居合わせていたナポリの俳優、そして、
デンマークのテレビプロデューサーとその妻の目に止まる。
そうしてデンマークのテレビショーに出演する。

それからは、イタリアだけでなく、ヨーロッパ、アメリカでも人気が広がり、
特にフルシチョフ時代のソ連では大人気だったという。女性宇宙飛行士のテレシコワさんは
宇宙に滞在中彼の音楽を聴いていたといわれている。
アルバムもいくつか出しているが、彼の声の人気の秘密は、変声期途中の少年としての魅力。
やがて人気は衰えてしまう。
2010年、今年のことだ!2月に、カナダのトロントであるイタリア人が逮捕されたが、
彼はロベルティーノを殺害しようとしていたそうである。
彼はロベルティーノとは数十年来の知己で、女性関係のことから彼を殺そうと計画していたらしい。

まあ、なんという!
彼はいったい、輝かしかった少年の日々以降、どういう暮らしをしていたのであろうか。
50代くらいの彼の歌声も聞けたが、少年の日の輝きはもうそこになかった。


私は彼の歌声の清潔さに驚く。ウイーン少年合唱団のような、
清らかなボーイソプラノの声を『天使の歌声』と例えるならば、
このロベルティーノの歌声は、私には、『悲しい堕天使』の歌に聞こえるのである。
罪を犯して天界から追われた天使。この世の汚濁にまみれかかりながらも
こころは穢れておらず、天空をせつなく仰ぎ見る堕天使の少年。
(と言っても、ロベルティーノがこのとき堕ちていた、という意味ではない。比喩的表現。)
10歳から19歳くらいまでの、微妙な年頃の少年の、こころの清潔さ。
それがこのあっさりした、気負いのない歌い方に表れている。
でも決して単調でないのである。歌の心のわかった人の歌声である。10歳とほんの少しにして!…

このような顔をした少年が、家で焼いたパンの大きな包みを小さな体で抱えて、
ローマの街を配達して歩く。彼は歌うことが大好き。そんな中でも、
彼の口からは、このような清らかな、けどりのない歌声が・・・

そんな姿の少年…、それを想うと、私は、
長い長い地球の歴史の中の間(あわい)に、一瞬、美しい星のように
きらりと輝く人やすべてのもののいのち、というものの尊さを思って、
自然と涙が湧いてきてしまうのである。

http://www.youtube.com/watch?v=ASuQ7oVH2yE



スポンサーサイト

テーマ : 思うこと
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

彼岸花さん

Author:彼岸花さん
リンク、トラックバックご自由に。

『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

ペシャワール会
http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/pekai/signup.html
国境なき医師団
http://www.msf.or.jp/donate/?grid=header02
最新記事
最新コメント
リンク
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード