参院選に向けて⑩ 消費税と軽減税率その5』



選択肢3.消費税以外の全く新しい方法を探る

ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツは、消費税よりも、二酸化炭素の排出量に
応じて課税する『環境税』の方が、税収を得られる
し、この地球の環境を守るのにも
同時に貢献する
と言っている。
実は、このことは、ここを訪れてくださるMATZ-TSさんから、『炭素税の可能性』という
テーマで、教示をいただいている。このテーマは、別のところでしっかり扱わせていただいた
方がいいように思う。近々記事にしてみるつもりである。


                   ***






貧困率②
2014年7月に発表された「平成25年国民生活基礎調査」による



財政難や貧富の差は何も日本の問題だけでなく、世界中の国々で共通に抱える問題である。
世界中の経済学者、政治学者、社会学者、哲学者など知者たちが、新しい仕組み、賢い解決法を
探っているが、なおこれぞ!というものは見つけていないと言っていいと思う。
いろいろな先進国の例をここで上げてきたが、一見うまくいっているように思える国でも
内情はいろいろな問題を抱えているのだろう。

昨年8月に出された経済協力開発機構(OECD)の報告書は、
『新興諸国を中心に拡大しつつある所得格差が経済成長を妨げるとしている。
OECD加盟34カ国を対象とした所得格差は、人口の上位10%の富裕層と下位10%の貧困層の
所得格差は9.6倍で、
この数字は1980年代の7倍から、2000年代の9倍へと拡大し、
今回の調査時点である2013年に更に拡大したというのである。
広がりゆく格差の問題は、貧困層の社会保障対策が待ったなしの段階に来ていること、
そして富の再分配をどうやって行うか(公平な税制度を含む)ということが喫緊の課題であることを
示している。

今、アメリカなどを除けば、140カ国以上の多くの国が消費税を取り入れているが、
消費税以外に、方法はないのだろうか。この世界の経済の不均衡を糺すいい方法は
ないのだろうか。
実は、世界の知恵者たちの提言は、ある部分はアベノミクスと一致するのだ…。

アメリカのノーベル賞経済学者のポ-ル・クルーグマン、ジョセフ・スティグリッツ、
インドのノーベル賞経済学者アマルティ・セン、フランスの経済学者トマ・ピケティ、…
これらの人々は左派、リベラルの経済学者たちである。
これらの人々が一致して、アベノミクスの第一の矢『大胆な金融政策』と第二の矢『機動的な
財政政策』は、評価しているというのである。
ただし、これらの人々がアベノミクスで評価するのは、安倍政権と黒田日銀が
インフレ目標を掲げて、『第一の矢』=『大胆な金融緩和』でつくりだしたお金で、
『第二の矢』=『財政政策(政府支出)』を行おうとしたこと。
ただし、アベノミクスのそこから先は、これらの人々が主張することとは大きく離れている。
これらの人々が共通して勧めるのは、そうやって金融緩和で作りだしたお金で大胆な社会事業を
進めて行くということである。貧困層救済、格差拡大阻止のための社会福祉や、子育て支援、
教育の充実、医療政策などを積極的に行って、社会の下支えをして、社会に希望と活力を
生み出すこと。

『所得格差が経済成長を妨げる』とした、上記のOECDの提言内容もほぼ一致する…

安倍政権の政策は、大胆な金融緩和をしたところまでは、これらリベラルの経済学者たちの
提言と同じなのだが、その金融緩和で生み出したお金が、大企業や大株主など富めるもの、
富める人々のところへさらに集まって行くような富者優遇策になっているところが大違いなのである。
確かに、国際的な経済情勢や原油安、また安倍政権が打ち出した金融政策や財政出動によって、
大企業はたいへんに潤い、大株主なども利潤を上げたであろうけれども、99.7%の中小企業や
一般庶民のところまでは、その恩恵はなかなか届いた実感を人々は持っていない。

つい最近2月26日の読売新聞の調査結果を下に引用する。

『読売新聞社は、安倍内閣の経済政策「アベノミクス」に関する全国世論調査(郵送方式)を実施した。
この3年余りの経済政策を「評価しない」は57%で、「評価する」の42%を上回った。
評価しない理由(複数回答)のトップは「収入が増えない」の60%で、評価する理由(同)は
「大企業を中心に業績が改善した」の44%がトップだった。
今後、景気回復を「期待できる」と答えた人は34%、「期待できない」は65%だった。
景気回復を「実感していない」は84%に達した。
アベノミクスへの厳しい評価が多数となったのは、企業の業績改善の効果が家計に
及んでいないこと
や、年明けからの株価の乱高下で日本経済の先行きに懸念が広がったことが
影響したとみられる。』


ただ…。
アベノミクス『新3本の矢』は、実は、上記左派経済学者たちが唱えるような経済政策と酷似している。
(1)希望を生み出す強い経済(2)夢を紡ぐ子育て支援(3)安心につながる社会保障――の3項目。
首相は「長年手つかずだった日本社会の構造的課題である少子高齢化の問題に
真正面から挑戦したい」と意気込みを示したという。

これが、安倍氏の政治哲学から出た真の政治姿勢ならいいのだが……。
私には、来る参院選向けのリップサービスにしか思えない…寂しいことではあるが。
安倍首相がその先に見据えているものは、安倍氏の思う『美しい日本』を取り戻す、
という個人の情念である・・・改憲と。


                ***


長々と消費税と軽減税率について書いてきた。
私は消費税増税にも、軽減税率にも原則的に反対である。どちらも生活の苦しいものにほど厳しい
逆進性の徴税法だからである。軽減税率のことについてはあまり書いていないが、これもまた
富める者ほど大きな軽減額となる。
上記のノーベル賞経済学者らもトマ・ピケティも、安倍政権の金融緩和策には賛成しているが
消費税増税に懐疑的か反対という。
この1月、政府は、軽減税率導入した場合の負担軽減効果の試算を発表したが、
減るのは、1人当たり12円、年4300円程度である。月にすると360円!!!

財務省は、軽減額は消費額が多い高所得世帯ほど増える一方、負担感を緩和する効果は
低所得者ほど大きくなると宣伝しているが、この数字を見て、軽減だ!と感じるひとは
一体どれほどいるだろう。

…私は実は、この記事で、消費税のことを書きたかったわけではない。
消費税にも軽減税率にも反対と書いたが、実は、北欧モデルのように、消費税を20にも
30%にもあるいはそれ以上にも上げて、それで国の借金が減って行き、その税の高負担の
代わりに、高福祉の保障が得られるのならば、そちらの方向でもいい
と思っている…
当然その場合は、軽減税率も導入されるであろう。

だが。わが国で、この北欧諸国のような、思い切った転換が果たして出来るであろうか。
前の記事でも書いたが、我が国はすでに多くの国家負債を抱え過ぎている…その返済が
社会福祉充実政策のための資金に食い込むならば、思い通りの高福祉を国民に返すことは
出来まい……
いや。いつかできるだろうか?国民が希望を捨てず我慢強くあるならば…

この長い長い消費税のシリーズを書いて来て、私がしみじみ思ったことは、
『その国の税に対する姿勢と政策は、つくづくその国の政治理念を
反映するのだな』
ということであった……

税の合理性を重視するアメリカ。
厚みのある文化政策が、軽減税率の対象の選び方にも出ているスウェーデンやイギリス。
社会を挙げての子育て支援に信じられないほど伝統的に厚みがあるフランス。
エネルギー政策や教育に先見性を持ち、弱者にやさしいアイスランド。
教育施策に対する意識が高く、世界一学力が高い国フィンランド。
国民が高負担高福祉の現実に満足しているため、なんと『減税に反対』(!)という国デンマーク。

我が国の、税に対する政府や国民の基本理念は、果たしてどうであろうか・・・
何なのだろうか・・・
そこに、なにかの哲学や理想は見えてくるだろうか・・・


私が、この記事を書きつつ、心の底から希求したこと。
それは
●この国の民が、政治を人任せにせず、もっと政治に関心と責任を持ち、
自分たちの意思を政治に反映させようとする
ようになってくれることである。
●この国の政治にもっと透明性が生まれることである。政治が国民に
見えるようになることである。
政治を語ることがごく日常の当たり前のこと、という国民になってくれる
ことである。

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Re:MATZ-TSさんへ

MATZ-TSさん。こんにちは。

はい。この長いシリーズ記事書きながら、私もいろんなこと考えました。
単に『消費税』というと、私などは自分が買い物する時の、いわば『出口』の
ところでの消費税のことしか考えないし知らなかった。
普通、論議されるのもそこで安いか高いか、きついかもっと負担を多くすべきか、
ということだけですよね。

でも、まあ、ビジネスやってらっしゃる方なら、当たり前に知ってらっしゃる
ことなんでしょうけれども、輸出業者への還付金などということも、私は初めて
知ったのです。輸出業者ったって、小さな企業もあるでしょうし、消費税の
仕組みを知っていれば、還付金の制度は、なるほどなあ、と思わないわけではないけれど、
その制度を利用して大企業など当然のように還付金を受け取れるものと、
下請け・中間の業者でかえって搾取されるものと、同じ制度でありながら差が出てくる。

法人税にもほんとにいろんなん抜け道があって、海外子会社が外国に払った税金を
親会社自身が払ったものとみなして法人税額から差し引く「外国税額控除」や
研究費の1割程度を法人税から差し引く「試験研究費税額控除」(研究開発減税)、
過去の法人所得の赤字分を差し引くことができる「欠損金の繰越控除制度」など、
大企業が利用できる税の抜け道がいっぱい。
トヨタは、08年~12年にかけて法人税を払ってないのですが(社長も認めている)
それも、これらの優遇措置を利用したからだと言われています。
あれほどの大企業でありながら、法人税は納めていないのに、株主への配当金は
その5年間で5年間で総額1兆542億円。内部留保の主要部分である利益剰余金
(連結)も、2807億円上積みしています。(『赤旗』記事より)
その上なお法人税減税ですからね。
トヨタばかりをワルモノにするのもおかしなことなんだけれど、
一体どれだけ大企業ってさまざまな面で保護されているの?って思ってしまいます。
小さな町工場が、海外に工場などを持って上記のような数々の法人税の抜け穴を
利用できるとは思えませんしね。

麻生財務大臣は、『この2年間で株価は1万7千円まで上がった。円安にも振れた』
『その結果として企業は大量の利益を出している。益を出してい ない企業は、
よほど運が悪いか、経営者に能力がないかだ』と、例のごとく言い放ったらしいですが、
長い不況から抜け出せないでいる多くの中小企業に対し、冷たい言葉ですよね。

『その国の税に対する姿勢と政策は、つくづくその国の政治理念を
反映するのだな』

というのは、記事を書いている間中の、ほんとに素直な実感でした…
良くも悪くも、という意味ですけれどね。
例えば、アメリカの『合理性』などというものは、これまた富者・権力者にとっての
『合理性』なのでしょうし。

日本の場合は、経済の基本理念はアメリカと似ているのでしょうが(ひな形?^^)
いい意味での『合理性』はない。
おっしゃるように、蓮舫議員が予算委員会で追及した民間子育て支援事業など
その最たる例ですね。
目的は一見よさそうだ。でも、あれが発表された時、私は『お金なんか集まるもんか』
と思いました。それよりなにより、あれは、本来政府が負うべき責任の軽減というか
体のいい責任逃れの一手、に、私には思えました。
それはこの政府のあれこれの政策に見え隠れします。
例えば自民党の改憲案。『家庭』を妙に持ち上げているんですね。
私はそこに、本来政府が負うべき責任を、『家族』『家庭』に押しつけようとする
意図がほの見えるのを感じ取ってしまいます。

第二十四条『家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。
家族は、互いに助け合わなければならない。』

というところなどがそうです。
老人介護も子育ても、『家庭の和』という美徳の名のもとに、家族に、とりわけ
女性に押し付けられてしまう恐れを含む条項です。
河野太郎議員などは、良識があって、これに対し、憲法に道徳を持ちこむな
と批判していました。そうなんです。
自民党の改憲案は、いたるところにこの、『国民の義務』というのがちりばめられている。
『公益及び公の秩序』というのがいっぱい出てきます。
24条も、せっかくあのベアテさんが、日本の女性のために一所懸命がんばって
入れてくれた条項ですが、自民党案には、上のような国民の義務事項、道徳、
みたいなのがくっついちゃってる。
これ。裁判などで悪用されると、大変ですよ。なんでも家族の責任にされかねない。
例えば、つい昨日最高裁判決が出た、あのご老人が徘徊して電車に轢かれ電車を止めた裁判ね。
あれだって、こんな条項が憲法に入れられたら、『やはり徘徊する老人は、奥さんが
いくら高齢でもちゃんと看ていなければならなかった。家族なんだから』
『したがって、JRに賠償金を支払いなさい』なんて判決が確定するかもしれません…

同様に、この国は、本来国が見るべき責任も、地方自治体に委譲するというか、
責任を移行させる政策をいっぱいとっているように思えます。

安倍政権の政治理念って、なんでしょうね。はっきりしてますね。
『まず国家ありきです。そして国民はそれに従順に従うべきもの。』
それと通底する理念で、なんというかなぁ…『社会の序列を変えない』というか…
本人は否定しているけれども、明らかに『トリクルダウン』…
『下の者は上からのおこぼれで我慢せえよ』という、上から目線の政治かなあ…
ひとことで言えば。
『既得権益の保護』…
そこには、戦中権力をにぎっていた者らの亡霊や子孫も含まれている…。

ジョセフ・スティグリッツ博士のTPP批判。至極もっともですね。
ヒラリーやトランプなどもTPPに反対の立場をとっているようだけれども、
あの人々は、アメリカの権益をさらに守ろうとする立場からの反対ですから、
スティグリッツ博士の意見とは、全く別物ですね。

TPPのことも書かなくっちゃなあ…

いつもありがとうございます!





No title

彼岸花さん こんにちは。

『その国の税に対する姿勢と政策は、つくづくその国の政治理念を
反映するのだな』
  ・・・・本当にそうですね。

昨日の参議院予算委員会で、蓮舫議員が 子供貧困対策を、税金でなく、民間基金でやっていることを取り上げてましたが
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12238106.html
これなども、税金の使い道を間違っている気がします。

ジョセフ・スティグリッツ博士は、TPPについても厳しい意見を言ってますね。
その意見に同意します。
http://shinsho.shueisha.co.jp/kotoba/tachiyomi/130604.html#3

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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

ペシャワール会
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