『蜜柑』


知人にお蜜柑いただいた。


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お庭に蜜柑の木があると聞いて、『ひとつ下さいな』と、桃太郎の猿たちのように
お願いしたら、こんなにたくさん。


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見事に大きな蜜柑なのだ。
でも、こんなちっちゃい子も添えてくださっていた。
先日友にいただいた林檎もそうだったけれど、中にこういうちっちゃい可愛い子が入っていると、
すごく嬉しい。最後まで食べないで残しておいて可愛がる。^^


実は、私が、ひとにおねだりするなんて珍しいことである。
大きくなった実の娘にさえ、『ママ、・・・が欲しいな』、などと自分から言ったことは、多分一度もない。

その私がどうしてお蜜柑いっこおねだりしてみたか。
甘みとともに酸味があって薫り高い美味しい蜜柑が店でなかなか手に入りにくく
なったからである。
林檎の時にも書いたが、私は、甘いだけの果物はそう好きじゃない。
ところが、今どきの蜜柑。なぜ、ああ早くぱあっと香りと酸味が抜けてしまうのであろう。
昔の蜜柑は、もっと実がパンパンに張りつめていて、少なくともお正月の頃くらいまでは
十分な酸味とむろん甘さと水気があった。小さくてもずっしりと重かった。
ところが、今の蜜柑は、酢っぱいのは、9月、青切り蜜柑の出回るあの時期の青い蜜柑
だけである。ひどい時には、まだ青いのに、既に酸味の抜けているものもある。
よほど高級品でも買えば美味しいのはあるのかもしれないけれど、私が近くのスーパー
などで手に入れられる蜜柑は、10月ごろにはすでに、なんというのかなあ、皮と身が
離れて、ブカブカな感じになっているものがあったりする。むろん、蜜柑特有のあの
清冽な香気や酸味は抜けてしまって、ただ甘いだけ。いや、甘みさえなく、ただぱあっと
した味である。正月ごろには、もう味が著しく落ちて何やらセメダインっぽい臭いがして
いるのさえある。
私はもう、9月のほんの1週間ほどの間のあの青切り蜜柑以外は、最近ほとんど蜜柑を
自分のためには買わなくなっていた…

ああ…ほんとのお蜜柑が食べたいな。昔の蜜柑の味をもう一度味わいたいな…
どうして最近、あのようなぱあっとした味の蜜柑しかないのだろう…
流通のため、完全に熟さないうちに早く収穫して『追熟』させたりするからかしら。
もぎたての蜜柑なら、昔のように美味しいのかしらん…
もぎたての蜜柑を食べて比べてみたいものだ…

そうずっと思っていたが、その知人の家に蜜柑の木があると聞いて、思わず一個下さいと
言ってしまったというわけだ。


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さて。
念願の、木からもぎたての蜜柑。
まずは、皮に爪を立ててほんの少し剥いて、その匂いをかぐ……。
ああ!これこれ! この香気ですよ!
蜜柑の香りはこうでなくっちゃ!

…もう、香りだけでも大満足だ…


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あんまり嬉しかったものだから、蜜柑の皮は、へたの方から剥いた方が、あの白い筋が
少なく剥けるのを忘れてしまっていた。
(あれ、あの筋の部分を含めた果皮の内側の白い部分を 『アルべド』っていうんですってよ。
ちなみに、外側の蜜柑色の部分は、『フラべド』。)
もっとも、私は、ふだんから、あの白い筋をそう気にしない。
少々白いのがあっても、袋ごと食べてしまう。
人によっては、ものすごく綺麗に丁寧にあの白い筋を取ってから食べる人もいるけれど。
も一つちなみに、蜜柑の皮をむくのがすごく下手な人がいるが、見ていてなんだか微笑ましい。
昔、友人で、そういう人がいた。
彼女が剥くと、皮がぽろぽろ小さくちぎれてしまって、焦れば焦るほど、ますますぷつぷつに
ちぎれて、そして非常に時間がかかる。(笑)
私が、こんな風にほとんどこぼさず皮をむいて、食べ終わったら、丸く元の形みたいに
して伏せておくのを、『どうしてそんな風にできるの~!』と驚いていたが、可愛い人だった。


さて!
蜜柑の美味しかったことったら!
う~……そうそう。この香り。この酸味♪ 甘さも十分。
これですこれです。昔食べたお蜜柑の味と香りは。
やっぱり、木からもぎたてのはこんなに美味しかったんだ!
目が覚めるような新鮮さだ。
やっぱりなあ…
ほんとに、一房一房。大事に味わっていただきました。
美味しいなあ…

私一人が、ただ記憶の中の蜜柑を幻のように求めているのかな、と思ってネットを少し
検索してみたら、『蜜柑が味が薄くて酸味がなくておいしくない』と書いている人が
いっぱいいた。やはり私だけじゃなかったんだ……。

ああ…この味・・・そして果皮のこの香り…


思い出すのは、昔々。おおむかし。
多分、私が4歳か5歳かそこらのことだ。
九州の高原の村。母の姉の嫁ぎ先で大きな婚礼があった。
私は、父と母に連れられて宴に出ていた。
田舎の家の広い座敷をいくつかぶち抜きにして、大勢の人がいて賑やかだった。
その時の祝い膳は…いわゆる『本膳料理』というやつで、座敷に座った一人ひとりの前に、
『高脚膳』で、本膳、二の膳、三の膳、与の膳、五の膳というのが並べられていた。
小さな子供の目にも『豪華だなあ・・・』と思えたものだった。
昔は正式の祝いの膳はそれが当たり前だったのだろうが、今、ああいうのはないだろうなあ。
画像検索してみても、私が記憶するような豪華さを彷彿させるようなものは見つからない。

ようやくあった!

本膳料理
写真はこちらからお借りしました。http://www.chufang001.com/lab/show/165.html

結婚式だったから、これよりもっと豪華だった気がするなあ。
大人たちが酒を飲みながらつまむ煮物や、刺身や、てんぷらや、酢のものなどといった
ものはむろん品数多くあったと思うが、子供の目を惹いたのは、寒天で作った富士山や
松や梅などの(多分そういう形の)お菓子や、色鮮やかな宝船や鶴亀などの形の蒲鉾だった。
一人ひとりの膳にはむろん、尾頭付きの大きな焼鯛がついていたし。
鯛は、檜の『敷き葉』の上に載せられていて、檜のいい香りが移っていた。
…赤飯やこうしたごちそうは、客は手をつけないで持って帰るのである。
持って帰る用の折詰箱が用意されていて、客は家で待つ子供らや留守番のおばあさん
などのために、これらをきれいに折に詰めていく。自分でやらないで、婚礼の家の手伝い衆が
詰めてくれたのだったかもしれない。

この時は私は、自分も式に行っていたけれど、家で留守番をしていて、父らが持って帰る
土産の折詰を、兄などと一緒に嬉々として食べたこともあったように思う。

…ああ…!
その折詰の香りが、この、少しまだ青みを残すような蜜柑の香りだったのだ!
本膳料理の、どこかの膳に、蜜柑を横に半分に飾り切りしたものが入っていた。
鯛の折に添えてあったのだったかもしれない。
香ばしい焦げ目のついた焼き鯛の下に敷いた檜の葉っぱと、この清冽な蜜柑の香り!
そして、杉や檜で作った折箱自体の香り。
その三つが、結婚式の祝い膳の香りだ。

もう、このような形式の結婚式自体がほとんど行われていまい…
私自身ももう結婚式に呼ばれて出ることもあるまい。


遠い遠い昔の、私がまだ幼くて、父と母が一緒に暮らしていたころの思い出。
私にとっては、永遠のごちそうの幻である。
眠くなった私を父がおぶって、暗い田舎道を母と三人で帰ったのはその時のことだったか…。


さてそして。
ひと房ひと房を惜しみつつ味わいつつ食べた一つ目の蜜柑。
『乱暴に食べる』二つ目以降の蜜柑。^^
どう乱暴に食べるか、と言うと。
『蜜柑』と言えばそりゃ、『こたつ蜜柑』ですよね~~~!
今日、炬燵を出しまして。 炬燵にすっぽり入ってぬくぬくほこほこしながら、蜜柑を剥くのです~。


ほんとにごちそうさま~~♪

















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Re: んさんへ

んさん。こんにちは~。

昨日のSONGS、中島みゆき特集だったのですね。
中島みゆき、お好きなのですか。私も好きです。

心がざわつく…
彼女の歌の強さの故にでしょうか…せつなさの故でしょうか。
激しさかな。
この世界の、あやうい動きの故でしょうか。人の世の見通せない
果敢なさへの不安感かな。
それとも…
何かに恋してでもいるような淡いときめき?^^

私も、夜はNHKのラジオ深夜便を低くかけています。
…こう…一人で起きているのがさびしいもんで…

愚痴。いつでもここで吐き出してくださ~い!(笑)


中島みゆき様

の、曲を聴くと何故か心がざわつくんだよなぁ・・・

さきほど、NHK「songs」という番組見てから、久しぶりに心、ざわついてます。

今夜はラジオじゃなく、CDをBGMにして・・・

あ、それじゃ胸のざわつきは収まらないのか・・・

愚痴というか、ざわつきの整理というか・・・なんか、私心でごめん。🙇

Re: んさんへ

お~!
んさんも、甘いだけのとかぱあっと水っぽいだけのお蜜柑嫌いですか。
最近そういうのが多くなりましたよね。
滅多に『これは美味しい!』という蜜柑に巡り合えない。
私も最近は、9月に出始めの頃の青い蜜柑を買うくらいで、
自分じゃほとんど買わないです。
お正月、娘たちが帰ってくるので、さすがに暮れには買うけれども。

いつから蜜柑、美味しくなくなったんでしょうね~。
子供が小さい頃は、まだおいしかったように思うなあ。何個でも食べられた。

果物の酸っぱいの好み。似てますね。^^
似てないのは贔屓の野球チームだけだ!(爆)

いただいたお蜜柑。美味しかったですよォ♪ ^^
これこれ!これが食べたかったんだ!って思いました。

わしの場合・・・

酸味「命」だからなぁ・・・

甘いだけとか、水っぽいだけのに当たっちゃうと思いっきりテンションダダ下がりしちゃいますよ。

しかも「早稲みかん以外は蜜柑にあらず!」的な思想してるんで。

正月過ぎの大きい蜜柑には全く手を付けない徹底ぶりだったなぁ・・・

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彼岸花さん

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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

ペシャワール会
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