『トランプ勝利に思うこと』


ドナルド・トランプ氏が、アメリカ合衆国第45代大統領になることがほぼ確定した。
『ほぼ』というのは、今日の『一般人による選挙人選挙』の結果を受けて、
『12月の第二水曜日の次の月曜日』という決まりだから今年は12月19日になるのかな、
その12月19日に、大統領選挙人たちによって投票が行われる。そこで勝利して初めて
トランプに確定、ということになるからである。まあ、今日の結果がそこで覆ることは
まずないのだが。

アメリカの選挙制度は複雑怪奇だ。日本の選挙制度もろくでもないけれども。

世界中が、クリントン敗北に驚き、がっかりしているようだ。
私も、同じ女性として、アメリカ初の女性大統領がそろそろ誕生してもいいのではないかな
と思っていたので、クリントンが負けたのは、やはり残念である。
朝日新聞に、ヒラリーの大学時代、ビル・クリントンとの出会いから今日までの
経歴がシリーズで掲載されていたけれども、好き嫌いは別にして、やはり彼女は
学生時代からずば抜けて優秀な、たぐいまれな女性であったのだなと思わされた。
一人の女性として極めて魅力的でもあった…。

しかし、残念ながら、ヒラリーほどの政治経験豊かな女性であっても、大統領の座は
遠かった。
ヒラリーのどこがいったいそんなに嫌われたのか?
その権高な性格か。オバマよりはタカ派なところか。…その詳しいことはわからないけれども、
トランプが、その経歴上、非常に自己イメージの操作に巧みであったのと反対に、
全くの局外者の私から見ても、ヒラリーの戦い方はあまり感心しなかった。
トランプに勝たせたくないばかりに多くのビッグ・アーテイストなどがヒラリー応援に駆け付け、
かたやトランプの方は、ムードを盛り上げるために音楽を使いたくても
当のアーテイストたちに楽曲使用を断られるなど、大新聞も有名アーティストも、
ヒラリー応援に一方的に偏ったという図は、ヒラリーが、『既得権益の象徴だ』と訴える
トランプ側の主張を、妙に心情的に民に納得させてしまうような所があったように思う。
その恵まれすぎているところが、自分の不遇を嘆く人々…とりわけ中下層の白人層の
心を解離させていきはしなかったか…。
愚直に、懸命に、自分の政策を訴える、という姿勢が果たして国民に見えたかどうか…



アメリカでは、日本のように、ある年齢に達すれば、全員に選挙権が自動的に
与えられ、選挙が近付けば、選挙管理委員会から何もしなくても知らせが来るという
仕組みではないのをご存じだろうか。
移民などで人口の流入や移動が昔から激しいアメリカでは、我が国のような戸籍簿が
よくも悪くも整っていない。
国民は、18歳になると選挙の資格を得はするが、自分で登録所に行って登録しないと
選挙権は得られないのである。
その登録用紙に 「 あなたはどの政党に所属しますか 」
という欄があり、その欄に、共和党、あるいは民主党と書くことによって、それぞれの党の
予備選挙に参加できる。 
この登録をしている人の割合は、1996年の大統領選挙のデータだと 54.2%。 
24歳以下の登録率は30%強と低く、年齢が上がると登録率も上がる。また、人種別では、
白人が56%、黒人が51%なのに対し、ヒスパニックは27%にとどまっていたという。
今は多分もっと比率は上がっているだろうが、それでも、弱者になればなるほど、選挙権という
国民としての最低限の権利からさえ遠ざかるというアメリカの実情に変わりはない。

2012年の選挙では、18歳以上で年収2万ドル(約200万円か)以下の米国民
1430万人のうち、890万人しか有権者登録をしていなかった。
理由の一端として、貧困ライン以下で生活する人々は引っ越しの頻度が多く、
有権者登録に際しての書類作業が煩雑になっていることがその一因という。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究によると、登録上の問題により2012年、
120万票が失われたと推定されている。こうした人々は投票所に出向いたものの、
登録に関する問題が原因で投票できなかった。
また、アメリカでは選挙は平日に行われるため、特に時給で働いている人々にとっては
投票所に行って長い間列に並ぶことそのことがもう大きな経済的ロスとなる。
さらには、投票所に行くための交通費も負担を増加させる。
こうした問題が、年収2万ドル以下の人々のうち28%が投票に行かなかった要因と
なっているというのである…。

つまり、生活苦にあえぐ人々は、自分の暮らしを良くするために一票を投じる
その権利さえ、構造的制度的に最初から奪われているのと同様なのだ。

クリントン陣営にも、トランプ陣営にも、こうした人々は目に映っていたのだろうか…。
『既得権益の打破』を訴えるトランプ自身の直近の人々は、私の眼には彼ら自身が
同じく『既得権益』の恩恵を十二分以上に受けている贅沢そうな人々に見えたのだが……


そう。そう。
ヒラリーは、国民皆保険制度を、その政治家人生の生涯の目的に掲げていたのだった!
彼女はオバマと協力し、一応曲がりなりにもそれを実現した。いわゆる『オバマケア』だ。
オバマケアについてはその不備がいろいろ言われているけれども、貧しい人々にも
安心して受けられる医療を、というその基本概念は絶対に間違っていない。
ヒラリーにはこのことだけでも、『ヒラリー、ありがとう』と言っていいのじゃないか。
また、女性が社会に進出するそのモデルでもあったことについても彼女は大きな
働きをしたじゃないか。

私は言おう。ヒラリー、ありがとう。
大統領選に負けてもがっかりしないでほしい。今度は野党の側から、引き続き
国民皆保険のような制度をより民にとって使いやすいものに磨き上げ、トランプの
共和党によって時代が逆行することなどないよう戦ってほしい。

そして。
ヒラリーが負けて、会場で泣いていた少女たちよ。今度はあなたたちが、ヒラリーの
跡を継いで、本当の男女同権、この世界に満ちた貧富の差や不幸の解消のために、
働く人になってほしい。
政治の世界に関心を持ち続け、あなたたちが女性大統領を目指して欲しい…



ホームレスアメリカ 
写真はこちらのサイトからお借りしました。



ともかく。結果は出た。

世の中の反応は、『株価が下がった』とか『いや持ち直した』とか、『円高の心配』とか、
世界経済、日米関係に与える影響とか、その心配もまあわからないではないけれども、
私が一番憂うのは、トランプ勝利に続けと、世界の『排外主義』や『差別主義』が
力を増していくことである。フランスの極右政党の党首マリーヌ・ル・ペンが、いち早く
トランプに祝辞を送ったことが象徴しているように。
あらゆる組織で、トップが変わると、下の者たちの雰囲気が良くも悪くも変わるのは、
今日本で、安倍政権下、歴史修正主義やそれに親和性のある言動が力を盛り返しているのと
同じこと。トランプのアメリカが世界の移民排斥運動や人種差別の雰囲気を進めるかも
しれないのが心配だ。

そして。
アメリカという国が、これで、大統領、上院下院、そしてその結果として最高裁長官人事も…
すべて共和党が握る、という『一強』の体制になったことである。日本と同じだ…。
どこの国にせよ、一つの色に国が染まり権力が集中するというのを本能的に私は嫌う。
オバマのアメリカとがらりとその雰囲気は変わり、共和党色がもろに全面に出てくるであろう。
トランプが共和党の中では異質のアウトサイダーであるということは、おそらくこの後は
なんら問題になることなく、両者は互いに歩み寄っていくであろう。
政治素人のトランプは、共和党人脈を頼らざるを得ないだろうし、共和党もまた、
今回その人気で、上下両院で共和党を勝たせたトランプを、そう無碍にするわけにもいくまい
からである。
同じく、世界に対しても、トランプは、選挙期間中に発言したような乱暴なことは
おそらくできまい。
今夜、勝利宣言をした途端に、トランプの顔が変わった!と思ったのは私だけでは
あるまい。これまでの『乱暴者』の顔をあっという間に振り捨てて、「彼は大統領の顔、
になった」、と私は感じた。
アメリカ合衆国第45代大統領という地位はやはり重い。その自覚が、人に変化を
与えるということもなくはなかろう。
一方で、女性蔑視や人種差別というような人間の根本的な性格は、変わりはすまい
とも思う。トランプが計算の上でか何だか知らないが、これまでにしてきた暴言の数々を
思い出せば、おぞけが振るう。

とにもかくにも、アメリカ国民はドナルド・トランプを次期アメリカ大統領に選んだ。
彼がどういう大統領になるのか、まあ、見ていくしかない。

実は、正直に言って、トランプの人種差別や女性や社会的マイノリティに対する
暴言や行動がもし無かったとしたら、彼の言っている主張の一部には、賛成だ、
と思わされることもあるのである。
たとえば、『既得権益層への批判』などがそうであるし、また
『アメリカがいつまでも世界の警察官でいられるわけではない』という主張などが
それである。
NAFTAやTPPの見直し、という主張もそうだ。
彼の『アメリカの不利を解消する』という立場とは違って、私は、『大企業の論理でことが
決められているそのこと自体』に反対するという大きな違いはあるけれども、TPP反対、と
いうことの一点においては、共通するところがある。
日米関係の見直し。いいじゃないですか。アメリカは沖縄から去ってくれ。金は払わない。

むろんこれらの彼の主張の根本にあるものに賛成しているわけではない。
その表に現れた形だけが一見似ているというのにすぎないが、ただ一つ。世界が今、
大きな転換点に立っていて、今までの考え方に縛られていては、今世界が抱える
難問の数々は解決しないどころか、拡大悪化する一方である、という点では、
認識が一致するところもあるのかな、と思うのである。

ただし。『既得権益をぶっ潰す』とか、『強い偉大なアメリカを取り戻す』とか、表現こそ違え
どこかの国で聞いたことのあるような、そんなキャッチコピーのような政治家の美辞麗句に
民は惑わされてはいけない。
既得権益をぶっ潰した先が、同じような既得権益の巣になるのでは何の意味もなく、
『強い国を取り戻した』つもりが、ただの強権国家になって、言論・表現・移動などの自由や、
国民の主権が奪われるような、そんな息苦しい国になったのではなんにもならない。
今アメリカを、いや、今世界を覆っている暗い雲は、中身を伴わない勇ましい言葉だけではむろん
解決されない。その原因が、元がどこにあるのかということを突き詰めて、その解消に
個人的レベルから、そしてまた世界的規模でまでで立ち向かわなければ、本当には
軽減されて行かないだろうと思う。

そうしてまた。何もかもぶっ壊した先が、これまで人類が営々と築いてきた人類の知恵をも
否定する反知性主義や、すべてがうまくいかないことの原因を自分よりさらに弱いものに
ぶつけるような、人心の荒廃、憎悪の増幅、などというものであってはならないのである。


私たちは今、大きな曲がり角に来ている…そのことは確かだ。
これを、すべての人々がより安心に生きていけるような世界にするのか、
それともこのまま一部の人間に富も権力も集中する、よりひどい格差社会にしてしまって
そしてそれがさらなる紛争や戦争を生む憎悪に満ちた世界にしていくのか、
私たちが選びとる時期が来ている。

トランプのアメリカがどうなっていくのか。
そして日本は世界はどうなっていくのか。わからないことだらけだが、しっかり見つめて行こう。


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Re: んさんへ

んさん。こんばんは~。

クリントン、負けちゃいましたね~~~…
私も、トランプよりはクリントン、と思って応援していたんですが、
あのような大差で負けようとは。
あの選挙人選挙の総取り制というのは、なんか変ですよね~。
まあ、そう言えば、日本の小選挙区制も、死に票がたくさん出るので、何とか
したいものだと思うけれども。
そうそう。選挙期間中、とりわけ直前の勝敗予想報道はやめてほしいですね。
これから投票に行くという人の心理に絶対良くも悪くも影響すると思います。

イギリスのケースと似てますね。
これから、こういう選挙経過が多くなっていくんじゃないでしょうか。><

んさん。ありがとうございます!



でも、負けは負け。
クリントン陣営は、人々の不満を掬いあげていなかった、ということでしょう。

うわっ!

また、負けおったわ!

密かにクリントンを応援しとったんじゃがのう。

批判、差別、蔑視しか売りの無いトランプなんぞを当選させおって、アメリカ人は何考えてんだか・・・

クリントン有利の報道で投票へ行かなかった人も居たりして・・・

ん?あれ?これってイギリスのEU離脱の是か非か投票と同じ構図・・・?
プロフィール

彼岸花さん

Author:彼岸花さん
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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
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暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

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