猫2題その一 『深夜の友』


オリオン座流星群を見ようと、ここ数日、深夜、家を抜け出て、空を見ていた。
一昨昨日に2回。一昨日にやはり2回。美しい流れ星を見ることができた。
昨日が流星のピークだということだったのだが、タイミングが悪かったかして、
私は逆に昨日は一つも見ることができなかった。

深夜、女が家を抜け出る、というのは、なかなか奇妙な感覚のものである。
つい1年半前、仕事をしていた頃までは、深夜12時、1時の帰宅は
当たり前だったのだが。

家の近くの道の、街灯の明かりがどこからも届かないような暗い一角に立って、
一体いつ来るかあてもない流星を求めて一人空を見上げている。
近所の家々はもうとっくに雨戸をたてきって、あたりは真っ暗である。
さっきまで、雨戸の上部の明かりとりからわずかに漏れていた家々の明かりも
もう消されてしまった。
起きて外にいるのは私だけ。
道は街灯が明るく照らしているが、私は物陰に身を置いて、
頭上に広がる星空をひたすら眺め続けている。
美しい星空である。
またオリオン座、というものは何であのように特徴的な、
印象的な形体をしているのであろうか。
綺麗に同じくらいの大きさで等間隔に並んだ3つの星。
そこから四方に伸びた、鼓のような形の星座・・・・・。

あれは別に、3つ並んでいるわけじゃないんだよな。
地球から見るとそう見えるだけで、3つの間には途方もない大きさの空間が
横たわっているんだ・・・・
それを、この小さな星、地球の上で、私というちっぽけな人間が
一人起きて、こんな暗がりに一人立って見上げている、この、今、という時も
不思議なものだよなあ・・・・・。

そんなことを想いながら、立ち続けている。
少し飽きてくる。だいぶ、飽きてくる。
とにかく暇である。
もう帰ろうかなと思う。
それでも待っている。
変な女!と自分でつくづく思ってしまう。

そんなとき。
私の立っている暗がりの後ろの闇から、ふいに物の動く気配がして
はっとした。
それは一匹の黒っぽい色をした猫であった。

「あっ!あの猫だ!」
それは10月17日の私の記事『猫めっ!』の中で、我が家の木に巣作りを
していた鳩を襲ったあの猫に違いなかった。
3メートルくらいはあるカイヅカイブキの木に下からよじ上って、
親鳩から激しく攻撃されても懲りずに、翌日、とうとう思いを遂げた、
あの若々しくしなやかな体つきの、尻尾の長い黒い猫。

猫は、私のすぐ後ろあたりの塀から、音もなく地面に降り立って、
ささっと4、5メートルほど身を低くして走ると、
ふいに立ち止まって暗がりにいる私を振り返った。

ちょっ、ちょっ!私は小さく舌を鳴らして猫を呼んで見た。
深夜徘徊のお仲間である。
猫はちょっとの間、そこに凍りついたように身を低く構えたままでいた。
ちょっ、ちょっ!今度は手も動かして猫を呼ぶ。

一瞬、迷いを見せて、こちらに近づいてくるかな、と思わせた黒い猫は、
また、ささっと、近くの塀に跳びあがって消えてしまった。
それは、鳩を襲った晩に、私が二階の窓から見たあの時と同じ、
野生の本能を失わないまだ若い猫の、人間など小馬鹿にしたような、
どことなく生きものの誇りを感じさせる、しなやかな動きであった。

あああ。
なんとなく何にともなく漏れ出るため息。
もう、やめ。
今日はだめ。でも、もういいや。

それを汐に、私も深夜の星空観察に見切りをつけ、家に引き揚げたのであった。

流れ星に願いごとは?
した。
前の2晩で、願いはちゃんとかけた。
その中身は?
ひみつです。

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テーマ : 思うこと
ジャンル : 学問・文化・芸術

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流星群は見たことがありますが流星雨は見たことがありません

オリオン座の流星群は見ませんでした。

昔、夏のペルセウス座流星群を極大日に徹夜したら、87個の流れ星と1個の人工衛星を見ました。
こんなに見てしまうとありがたみも何もありません。


そういえば、猫の星座というのは、無かったような気がします。
少なくとも日本から見ることができるヨーロッパ星座の中には……

と思ったら山猫座がありました。

No title

>あれは別に、3つ並んでいるわけじゃないんだよな。

当たり前のようで、あまり気付かない・・・。
日常のソレは着眼点や発想するポイントがヒトそれぞれ違うから
ヒトから聞いた言葉には思いがけない突然さを感じます。
近い将来、自分でも気付いたかもしれない。
でも一生気付かずに終わることも沢山あるように思えます。

普段はくだらないことばかり・・・恥ずかしくて口では語れないことも
ブログのようなツールを使えば、絶対知り合わないようなヒト達と
簡単に触れ合うことができる。
いい世の中ですね。(笑)
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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

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