『72年目の夏に思うこと ②』

昨日の記事で、
『インパールは、時代を超えて、辺野古とつながっている…
そしてそれは、福島第一原発事故ともつながっている。
さらにそれは、加計・森友問題、自衛隊日報隠蔽問題ともつながってくるのである・・・・・・。

過去を凝視しないものは現実をも見ようとはしない。

過去を一つの視点からぎりぎりと徹底して見つめていけば、それは必ずいつか
『普遍』とつながっていくと信じて私は記事を書いている……。』

と書いた。
少しく補足しておこう。それはたとえばこういうことだ・・・

25日深夜(26日午前0:50~)のNHKスペシャル『戦慄の記録 インパール』を、
是非ご覧になっていただきたい。
このインパール作戦の作戦立案の時点から作戦の経過、そして最後に責任者たちの
責任の取り方までの、一連の軍上層部の信じられないような杜撰さや凝り固まった精神主義、
前線の兵士たちに過酷な無理を強いる一方で軍上層部内での妙な温情主義など、
そしてそれらが引き起こした何万という兵たちの無残な死まで。
そのすべてを、あるいは部分を、論じている文章の中で、私が、とても共感したのが、
山本七平氏の『一下級将校の見た帝国陸軍』の中のこの文である。
(分かち書きは、私がした)

『いろいろな原因があったと思う。そして事大主義も大きな要素だったに違いない。だが
最も基本的な問題は、(中略)
一言でいえば、人間の秩序とは言葉の秩序、言葉による秩序である。
陸海を問わず全日本軍の最も大きな特徴、そして人が余り指摘していない特徴は、
「言葉を奪った」ことである。
日本軍が同胞におかした罪悪のうちの最も大きなものはこれであり、
これがあらゆる諸悪の根元
であったと私は思う。

何かの失敗があって撲られる。「違います、それは私ではありません」
という事実を口にした瞬間、「言いわけするな」の言葉とともに、その三倍、四倍のリンチが
加えられる。黙って一回撲られた方が楽なのである』


『帝国陸軍では本当の意志決定者・決断者がどこにいるのか、外部からは絶対にわからない。
その決定が「命令」との形で下達されるときは、それを下すのは名目的指揮官だが、
その指揮官が果たして本当に自ら決断を下したのか、実力者の決断の「代読者」
にすぎないのかは、解らないからである。そして多くの軍司令官は「代読者」にすぎなかった。
ただ内部の人間は実力者を嗅ぎわけることができたし、またこの「嗅ぎわけ」は、
司令部などへ派遣される連絡将校にとっては、一つの職務でさえあった。』(
中略)


・・・ああ!
この2つの文を読んでいて、なんと!安倍政権のやり口と似ているのだろう!と思う。
そしてまた、下の方の文は、なんと!このたびの森友・加計問題、自衛隊日報隠蔽問題の
例にぴったりと当てはまるのであろう!

『言葉を奪うこと』。
このことは、安倍政権の、とりわけ数回にわたる衆参両院選挙で圧倒的多数を得て後の
安倍政権に際立って見える特徴なのではないかと私は思っている・・・
逆に言えば、『(国民から)言葉を奪うこと』の効果を、この政権は知り尽くしていることだとも言える。

自分に批判的なジャーナリズムの口を封じようと、じんわりと圧力をかける・・・
国会において、野党の批判に『ニッキョーソ、ニッキョーソ!』などという野次でもって応じる・・・
批判されると、相手の野党の失点(とりわけ民進党の)をあげつらって、論点を変えてしまう・・・
安倍氏だけではない。
『沖縄の二紙を潰さないといけない』、と言った、安倍総理の親しい友人にして前NHK
経営委員の作家。
『(マスコミに対し)私らを落とすなら、落としてみろって』『あんたらどういうつもりで書いているか
知らんが、我々はお金払って(新聞を)買ってんだよ。』と言った、二階敏博前自民党幹事長。
そして、菅義偉官房長官は、加計学園問題に絡んで証言した前川喜平前文部科学事務次官
について、『地位に恋々としがみついていた』などと、前川氏個人を非難することで
証言の信頼性に疑問を投げかけるような、そして彼の証言をそれ以上は封じるような
発言を記者の前でする・・・
記者の追及に立腹して、『出て行きなさい!』と言った今村元復興大臣・・・

こういった安倍政権の態度は、日本の報道の自由度のランキングをさらに下げ(世界180カ国中、
なんと72位。民主党政権時の2010年の11位に比べると、その下げ方の甚だしさ!)、
さらに今年6月、国連の人権理事会報告で、デービッド・ケイ氏が日本政府の報道関係者への
圧力を懸念する表明をしたことは記憶に新しい。日本の報道の自由について、世界が見る目は
こういうものだ、ということを、私たちは自覚しておいた方がいい・・・。

そして。2つめの文章。
本当の意志決定者・決断者がどこにいるのか、外部からは絶対にわからない。
その決定が「命令」との形で下達されるときは、それを下すのは名目的指揮官だが、
その指揮官が果たして本当に自ら決断を下したのか、実力者の決断の「代読者」
にすぎないのかは、解らないからである。そして多くの軍司令官は「代読者」にすぎなかった。
ただ内部の人間は実力者を嗅ぎわけることができたし、またこの「嗅ぎわけ」は、
司令部などへ派遣される連絡将校にとっては、一つの職務でさえあった』

と言う、山本七平氏の、インパール作戦における日本陸軍に対する批判は、
『実力者』を『総理』や『防衛大臣』に、『指揮官』『軍司令官』『代読者』『連絡将校』などと
いう部分を、『首相側近』『首相のとりまき』『大臣』『官僚』などという言葉に置き換えれば、
なんと!森友・加計問題や、自衛隊日報問題で登場した人々の上下関係や、
不思議な『忖度』構造と酷似しているのであろうか!!!

この、『意思決定の過程の曖昧さ』・・・『下の者が上の者の意図を汲んで動く』・・・
『明確な責任者の不在(もしくは雲隠れ)』・・・そうして『誰も最終的に責任をとらない』・・・
『組織的証拠書類等の隠蔽体質』・・・
などといった、旧日本軍の体質的病理は、なんと、今の日本政府の・・・それだけではない、
今の日本の多くの組織のそれと酷似してはいないだろうか。

福島第一原発が、あの取り返しのつかない過酷事故を起こすに至った過程と、その後の
処理などを巡る東電や原子力ムラ、政府・行政等のやり口も、酷似している・・・・・・。
あれほどの重大な事故を起こして福島の人々の、憲法第25条に保障された『すべて国民は、
健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。』という『生存権』を侵して
置きながら、誰一人としてあの事故の責任をとっていない、というこの構造!

そのような組織的無責任構造のもたらしたことが、常に末端にいるもの・・・戦場においては
彼我の最前線の兵士たちや無辜の民、現代においては、末端の労働者や一般市民に
犠牲を強いていくこともまた、とてもよく似ているのではないだろうか?


インパールと福島第一原発事故の関係についてもう一つ。
上層部がその多くは戦後、悲劇について、口をつぐんだり徹底した言い訳に終始したのに比して、
前線にいて、辛くも生還した兵士、下級将校らは、戦後何十年の時を経て、ぽつぽつと
その惨状について語ってきだしていた・・・・・・
あるいは黙して語らずとも、戦後の自らの生き方そのもので、行き場のない強い『批判』の想いを
示した人もいたのだろうかと想う。

その中の一人に、美倉重夫という人がいる。
彼はインパール作戦に従軍。戦後、1988年より和歌山県日置川町町長を務めた。
同町に出来した原発誘致問題において反対の姿勢をとり、中止への原動力となった。
その根本には本作戦での体験が影響しているという・・・・・・。

・・・そうなのだ。インパール作戦しかり、南京虐殺しかり。人間がしでかすことの恐ろしさ、
おぞましさをひとたび知ってしまった人が、どうして『原子力発電』などというものに、
その日本への導入のいきさつの胡散臭さに、その危険に、無頓着でいられるだろう?

和歌山には紀伊半島にはなぜ、原発がないのか。それには、この美倉重夫さんという元日本軍兵士や、
『熊取六人衆』と呼ばれていた小出裕章さんら京都大学原子炉実験所の科学者たちの応援も得て
反対運動をした住民たちの力があったのだ。
美倉さんのことを書いた1988年の毎日新聞の記事を見たくて、今日図書館に行ってみたが、
毎日新聞の縮刷版は置かれてなかった・・・


もう少し、この記事続きます。




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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

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