『勘違い』

人の気持ちを読むことは本当に難しい。
今度の選挙、なんだか思惑のすれ違いが甚だしくて、それで、見ていて
虚しくなっちゃったんじゃないかしら、などと考えてみる。

まず、第一の勘違い。
民主党は、とりわけ菅さんは、国民が何を望んでいるか、を読み違ったな。
国民の希望は、ひとつの事象にこんなにはっきりと表れているのに。
その一つの事象、というのは、蓮舫氏の、圧倒的高得票獲得ということ。
彼女は、選挙で危なそうな同僚議員の応援に駆り出されて、ほとんど自分の地盤の
東京で、選挙活動をしていない。それにもかかわらず、あの圧倒的勝利。
それは国民が、彼女のこの数カ月の仕事ぶりを大きく評価した、ということの
何よりの表れである。
つまり、国民の意志は、国の経済の安定を望んではいるけれど、それは増税という方法では
まずなく、まず、徹底的に無駄を洗い出してほしい、ということだったと思う。
それを菅さんは読み切っていなかった。

消費税の増税についての、国民へのアンケートの結果を見ると、
増税も将来的にはやむなし、と考えている人が、とりわけ働き盛りの男性などには
多い、ということがわかった。国民はちゃんと現実を見ている。
だから、言われているように、菅さんが増税のことを選挙前にいきなり持ちだした、
そのことが今回の民主党の絶対的な敗因、というわけでもないのではないだろうか。
それならば、同じく消費税増税を考えていた自民党になぜ、今回国民は投票した?

要するに、やり方が、民主党、とりわけ菅さんは下手だったのである。
もうちょっと云い方の順番と比重を変えていればよかったのである。
事業仕分けは、今後も厳しく続けます。
現在のところ数字はこれこれで、今後の見通しは、こうなっていきます…
それをはっきり国民に示して十分に説明したうえで、それでも国はこれだけの
財政赤字を抱えている。将来的には増税も検討せざるを得ないかもしれない。
そうした場合の考え方はこれこれで、私が標榜する通り、貧しいものへの保護を
手厚くするよう、具体的課税率は、一律にするのではなく、こういうふうに、熟慮いたします。

…そんなふうに、最初から言えなかったものか。
そもそも、一律の消費税として、貧しいものからも取る、というのが間違い。

第二の勘違い。
政党支持率の結果の気にしすぎと、読み違い。
これは、民主党と国民。自民党と国民…。いたるところであったように思う。
鳩山さん、菅さん。政党支持率を気にし過ぎて、大事なことを読み違ったのではないか。
まあ、民主党全体がそうだが。
また、もし菅さんが消費税増税発言をしなかったならば、おそらく相当
厳しい選挙戦を戦わねばならないことになっていたであろう自民党、みんなの党、などが、
云わば敵失によって今回の選挙で勝利を収めて、谷垣さんなどが
顔を輝かせながら勝利宣言をしているのなどを見ると、
そりゃ、大きな勘違いですよ、と、大きなため息をつきたくなってしまう。
同時に、民主党の慌てぶりなども。何をそんなにバタバタしているの?

国民は馬鹿ではない。蓮舫議員のように必死で仕事をやっているな、という者には
理解があるし厚い支持もするのである。
だから、高校無償化問題、高速道路料金の問題、事業仕分けが思うように進まぬこと…
官僚との意思疎通や協力、またその悪習の是正、などといった難しい問題が、
マニフェスト通りにはなかなかいかないことを、隠したり、ふらふら方針を
変えたりするのではなく、国民の前に広く実情を明かせばよかった。
そうすれば、国民は理解したはずである。
マニフェストを何が何でも実行する無謀よりも、臨機応変の柔軟な方針返還を
する方の勇気を、国民はこころの奥で望んでいたのではないか。

政党支持率、という人気のバロメーターの数字を気にし過ぎて、
民主党は政権の発足当時から、ちょっと己を見失っていたのかもしれないな、と思う。

それは同時に国民にも言えることで、マスコミが面白おかしく書きたてる、
政党の人気度、というものに、私たちはいつも踊らされすぎるのではなかろうか。

こんなにくるくると政権が代わる国がどこにあるだろうか。
これでは、諸外国は、日本の誰に向かって、経済関係、軍事を含めた友好関係
などの、長いスパンで、長期的な哲学的展望を持って語り合わねばならない問題を、
交渉していいかまったくわからないだろう。
これではそのうち、いや、もうそうなってるかな、日本の外交は世界から
笑いものになって置いて行かれてしまうだろう。

確かになあ。自民党時代から民主党になってからを通じ、ここ数人の歴代総理はひどすぎた。
こんな人物に政治は任せられない。早く、早く、やめさせて!
そう思うような人ばかりだった。

しかし…。ブッシュだってひどかった。イタリアのベルルスコーニ首相なんて、
よく続けさせるよなあ、とはたからは思われる。
けれども、政権は続く。
ろくでもない政治家が総理の座に居座る…これは悲劇である。
しかし、日本の政権交代劇はあまりにも、過剰反応、短絡的にして、
視野が狭すぎの、激しく変わりすぎの…、情けない茶番劇に陥ってしまっている。

こうしょっちゅう、代わっていたのでは、育つ政治家も育つまい。
国民の信を問うのは、選挙や政権の顔を変えることによってではなく、
十分な国会での論戦と、粘り強い政策実行によってであってほしい。
国民は、多少の欠点には目をつむって、(ともなかなか言いにくいが)
もっと長い目で政治家のすることを見ていく必要がある。

パフォーマンスの旨さ。口当たりの良さ。かっこよさ。そんなものはいらない。
一人一人の政治家の発言から、その人間の、その政党の目指す政治の方向を見極めることこそ
大事なのではなかろうか。

それには知識と想像力と忍耐がいる。
『構造改革』という美しい言葉が盛んにもてはやされてきはじめたとき、
国民の誰がいったい、その本質に潜む政治的残酷を想像しただろう。
でも実は、鋭敏ならば、先は読めていたはずである。
現在国民の多くが舐めている苦しみや歪みのある部分の多くがこの時生まれた。
それを直視することなく、またしても、民主党が駄目だからと言って、
安易に自民党に戻っていくのだろうか?
本質はどこにあって、それはどう変わったのだろうか?

この、日本人の、『顔をすげ替えさえすれば、なかみも新しくなる』的な発想。
障子を張り替えさえすれば、部屋が明るくなる。この安上がりな家の構造。
長年日本人は、そういう風にちょっと手を加えさえすれば、表向き
気分が変わって新しく生まれ変わったような気がする、ということを、
殆ど体質的ともいえる習慣にしてきた。
よく言われるように、日本は河川の水が豊か。なんでも汚ないものは
川に、海に流してしまえば済んだ。
『いやなことは、直視せず、徹底的に分析して反省したりせず、とりあえず
水に流してしまおう』的な発想の仕方。
それに私はうんざりしているのかもしれない。
そうして、それは、自分自身の中にも色濃くあるから、余計にうんざりするのである…。

特に鳩山さんの身の処し方を見ていると、ああ、まったく日本人的だよなあ、と
私などは思ってしまった。
したたかでないのである。あっさりしている。そうして、八方美人である。
そうして八方美人であることを隠すこともできず、すぐ見透かされてしまう。
要するにお人よしなのである。
彼には、もう少し詳しく聞いてみたい、理想があった気がするのだがなあ。
そしてそれは最近の日本の政治家としては珍しいことであったのだがなあ。
『国民が私の話に耳を貸さなくなった』という、あの例の発言。
すっかりマスコミなどで笑いものにされてしまったが、私には痛々しい発言に聞こえた。
一国のリーダーとしては確かに彼は弱すぎたかもしれない。

しかし、鳩山さん、菅さんに限らず、自民党政権の時も、何か総理としての
瑕疵が一つ発見されると、寄ってたかって、それを汚して引きずり降ろそうとする傾向。
それで、いい政治家が育つだろうか。

国民全体が、今、短兵急になってはいないだろうか。
拙速になってはいないだろうか。
すぐに効果が上がり、すぐに結果を出すことを求め過ぎてはいないだろうか。
日本だけでなくアメリカなどを見ても、今、世界がそういう風になっているのかもしれない。

安易に首をすげ替えることでは本当の改革は生まれない。
じっくり皆で知恵を持ち寄ること。とことん議論し合うこと。
そうして迅速に行動すること。
その根本に、他者に対する想像力があること。未来に対する理想があること。

…そんなことが大切なんだがな。
なんだか皆がどこかでボタンの掛け違いをしているような…そんな虚しさの残る選挙だったな。
大変なのはこれから。
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Re: ららさんへ

そうなんですよね。
今の政治のまずさは、自分たちが一票を投じた選挙の結果だ、ということを
国民は忘れてはならないと思います。
そう思えば、批判ばかりはしていられない。いや、正当な批判はいいのですが、
個人の資質を根本的に否定するだけのような、不毛の批判は避けたいですね。

私自身も、そういうことをしていないわけではないのですが…。反省反省。
ただ、いつごろからかなあ、私が気になりだしたのは、野村監督夫人野村沙知代さん
に対する一大バッシングあたりからかな、日本人がマスコミにわけもなく煽られて、
個人的関係を持たない人にさえ、ひどいバッシングをするようになって来たことです。
それも、一夜にしてくるくる変わる。感情的なんです。
昨日まで持ち上げていた人を今日は皆で地べたに引きずり下ろす。
バッシングは不毛ですよね。本当の批判ではない。
批判は一対一で、自己の発言に責任を持って行うべきもの。
バッシングは大勢の中に自らは身を隠して行う卑怯なことですよね。
…それに近いような体質にどうもなっていっている気がして心配です。

まあそれほど、国民が疲弊し、閉そく感を抱いているということでしょうか。
それらを招いたのは長年、自民党だけに政治を任せてきた、そのつけが
今回ってきているだけなんですけどね。だから野党に回って、しれっとして
民主党批判をしている自民党には、私は個人的には本当に腹が立つのです。
と言って、記事にも書いたように、民主党に満足しているわけでもない。
他の野党も情けない。

困った状況ですが、とにかく、政治を育てていくのも、マスコミを育てるのも、
それは国民の穏やかな理性と良識であろう、と思うんです。
世界に誇れるような政治であってほしい、そうしていきたい…本当にそう願います。

ららさん、真面目にこういう記事に応えてくださって本当にありがとうございます。


> 政治家として完璧な人はだれもいないので、総理は誰がなったとしても批判の矛先が向けられると思います。とくに長く続く不景気で広がる閉塞感、やり場のない不満は総理に向けられるのも仕方ないのでしょう。
> 確かに民主党政権、ほんとうに下手なやり方をして随所で失敗をして・・・でも国民の批判は総理を育てていくものではないでしょうか・・でも、批判をしながら長い目で支持する姿勢が今の日本人に
> 全くないのがちょっとだけ気になります。前の選挙で選んだ責任は国民の側にあります。短絡的な国民の判断・・・それを煽っているようなマスコミ。日本が世界に対して誇れる国であってほしいな~と思います。一人一人が選挙で選んだことを誇れるような政治と国民の関係であってほしいです。
> ほんとうはみなさんと同じように政治家の批判をしたいところだけれど、あえて国民の側のことを書いてみました。

No title

政治家として完璧な人はだれもいないので、総理は誰がなったとしても批判の矛先が向けられると思います。とくに長く続く不景気で広がる閉塞感、やり場のない不満は総理に向けられるのも仕方ないのでしょう。
確かに民主党政権、ほんとうに下手なやり方をして随所で失敗をして・・・でも国民の批判は総理を育てていくものではないでしょうか・・でも、批判をしながら長い目で支持する姿勢が今の日本人に
全くないのがちょっとだけ気になります。前の選挙で選んだ責任は国民の側にあります。短絡的な国民の判断・・・それを煽っているようなマスコミ。日本が世界に対して誇れる国であってほしいな~と思います。一人一人が選挙で選んだことを誇れるような政治と国民の関係であってほしいです。
ほんとうはみなさんと同じように政治家の批判をしたいところだけれど、あえて国民の側のことを書いてみました。

Re: そらまめさんへ

そらまめさん。ご意見ありがとう~。

そうですよね。あんまり事細かに政党支持率などの世論調査の結果が今は出て、
それをまたマスコミが面白おかしく書きたてるものだから、政治家自身も
国民も、なんだかそれを気にし過ぎて、右往左往しているような気がします。

> 票を入れたくなるのは政治家としての『信念を感じられるか』
> どうかだと思うのですが、その場でどんなに評価を受けなくても自分の強い
> 信念があれば貫き通せると思うし揺るがないと思います。

ほんと。それが一番情けないですよね。何かね、プロの政治家が少なくなってるんですね。
福田さんにしても安部さんにしても、親世代の方がプロっぽかったなあ。
良くも悪くも、肝が据わってましたね。
長年議員やってきて、何も学ばなかったのか!と言いたくなるのは、
民主党議員だけではなく、自民党の二世三世議員も同じですね。ひ弱。
そういう意味では、たしかに小泉さんは、うまかったですね。
自分の言葉の力も承知していたし、言葉の怖さも知っていた。
攻撃をかわすすべもうまかったです。
今、民主党でそれが出来るのは小沢さんなんだけれど。ねえ。影がついて回るから。

どこの党でもいいから、自分の選挙のことを第一に考えるのではなく、
国民のために、理想を持って政治に取り組んでくれる人がたくさん出てこないかなあ。
年をとっていても菅さんたちのように性根が据わってないのなら、いっそ
活きのいい若手に任せてみたい、と私なども思ってしまいます。

ねじれ、なんて言ってられない状況に、日本はありますね。
なんでも反対、何が何でも通す、ではなく、大人の議論が出来る国になってほしいですね。

ありがとうございました。

No title

支持率の気にし過ぎ・・私もそう思います。
(マスコミのせいもありますが小泉政府から国民目線が重視されすぎてる感)
選挙でも結局、票を入れたくなるのは政治家としての『信念を感じられるか』
どうかだと思うのですが、その場でどんなに評価を受けなくても自分の強い
信念があれば貫き通せると思うし揺るがないと思います。
それが解かっていない。
景気があまりにも変わり過ぎたせいで対応できていないのかもしれませんね。
(じゃぁ、やっぱり若い議員に託すしかないのか?)

信念・・・それこそが未来を見通す国を掌る【政治】なんだと思います。
小泉さんに皆が指示したのはその強い信念を感じたからだと思います。
その結果はよく解かりませんが(受け取り方次第ですので)信念は貫き通さ
なければキチンとした答えは出ないと思うので。

民主党でガッカリしたのが鳩山さんにしても管さんにしても、あれだけ長い
月日を議員さんしていたのに『何も勉強して来なかったのか?!』という疑念
が生まれたこと。

党内で『ねじれ』が生まれている民主党・・・。今の自民党なら全部反対なんて
愚かな事はしないと思うので期待したいです。
プロフィール

彼岸花さん

Author:彼岸花さん
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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

ペシャワール会
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