『インコの恋 』


先日、体調をちょっと崩し、元気もありませんでした。
いつもの川原のお散歩もしなかった。
川べりの道を行くと遠回りになるので、その気力もなく、幹線道路の方を
通って買い物などに行っていました。

帰り道の途中。一軒のペットショップがあります。
でも、そこが扱っているのは、今大ブームと言っていい小型犬や猫などではなく、
小鳥や熱帯魚やカブトムシなどです。
ひところは、この小鳥や熱帯魚を飼うのはとても盛んだったけれど、
犬や猫を飼える人の方が少ないくらいだったけれど、今はもうすっかり様変わり。
店は閑散としています。つくづく時流を読まない店主のようです(笑)。

なんとなくその時さびしかった私。
店先に大きなケージに入れられて出されている、白い大きなオウムをかまうことにしました。
だれもまわりにいなかったから。
普通私はあまりそういうことはしない人間なのですが、今日はなぜか。
でも、指を出したりはしません。かみつかれますからね。

チビちゃん、という名前が書いてありました。
ケージに身をかがめて「チビちゃん!』と呼んでみました。
彼はつつつつ!と枝を伝ってこちらにやってきました。
「こんにちは」と言ってもなにも言わない。
「何かお話しして」と頼んでも、勿論なにも言わない。
そして、私に向かって、とさか部分をふわあっと広げ、羽も思いきり
膨らませてきました。
まあ、おナマね。喧嘩売る気?(笑)

私は、ケージのそばを離れました。

...たったそれだけの話です(笑)。

あ。そうそう。タイトルは『インコの恋』でしたね。
その話をするのだった。

10年ほど前。娘は世田谷区は下北沢という、若者などの人気スポットの
近くに住んでいました。
そこに一軒の古本屋さんがありました。
3,40代くらいのもの静かそうな店主が店番をしています。
奥の上がり框のある一畳くらいのスペースに座机を置いて、レジスターを置いて、
空いたところで、本の手入れなどを静かにしている。

娘と私がふと見ると、店主の横の、その机の上に、一羽のコザクラインコがいます。
ケージに入れてなくても、おとなしくしていて、店主のそばを離れない。
しきりに何かをしています。
見ると、インコ君は、一冊の文庫本を開いて、それを声に出して読んでいたのです。

…まさか!(笑)

すみません。ちょっと皆さんをからかってみました。
彼は、文庫本のページを器用に嘴で切り取って、長さ15センチ、幅1.5センチくらいの
細いテープのようなものを一本一本作っていました。

インコにそんなことができるかって?
出来てたんです、驚いたことに!

足でしっかり本を抑え、嘴をパンチのように紙に入れていって、紙を器用に切り取る。
そうして、切り取ったテープのようなものをどうするか、というと、
頭をぐっと回して、自分の尾羽の中にそれらを挿しこむのです。
十分綺麗な色の尾羽なのに、その間に、何本も何本もテープを挿しこむ。

私たちは驚いてしまって、じいっとそこでインコを観察していました。
店主と2言3言は言葉を交わしたでしょうか。
あとは店主は、静かに本の手入れを続け、私たち母子は立ち尽くして
インコを見ていた。

そのうちに、尾羽は、テープでいっぱいになります。7,8本もあったでしょうか。
すると、店主は、静かに手を伸ばして、それらのテープをインコから
抜き取ってやるのです。そうしてそれを自分の作業台の隅にそっと置く。
見ると、そこにはどうでも6,70本のテープがすでに貯まっています(笑)。
インコは、抜き取られても騒ぐわけでもなく、またせっせと文庫本を
切り取り始めます。
その繰り返し。
どうやら、インコと店主は日がな一日、それを続けているらしい。
インコちゃんの文庫本は、そうだなあ、200ページくらいはありそうな厚みの
本でしたが、、もう3分の2くらいは切り取られて、薄くなっていました。

インコのこの行動。なんとご覧になりますか。
動物行動学の専門家の方なら、「ああ、それはこういう意味」とすぐに
おわかりになるのでしょうが、私はこれを、『インコの恋』と捉えました。

このインコくんは、今、恋をしているのです。誰に対してかって?
勿論、もの静かでやさしげな、自分の主人に対して、です。

自然界の鳥も、恋の季節になると、自分を恋人に対して強く立派に見せようとして、
派手なディスプレーをします。羽を想い切り広げ、胸をふくらませ、
とさかをたて、歌を歌い、踊ってさえ見せる。
自分を飾り立て、相手によく思ってもらおうとします。
インコくんは、店主に恋をして、それで一所懸命、自分を飾り立てているのでは
なかったでしょうか。
カラスの仲間が、繁殖期にこんなふうな行動をしませんでしたっけ?

だから、折角たくさん切り取って尾羽に飾ったテープを、店主に静かに抜き取られても
文句一つ言わないのでは?
だって、それは恋するあなたへの贈り物でもあるんですもの。
ぼくのまごころなんですもの。

えっ?どちらが男役でどちらが彼女役か、って?
自然界では、そうした婚姻のためのディスプレーをするのは雄です。
だから、インコくんが彼。彼は店主を自分の美しい恋人(笑)、と
思ってるんじゃないかなあ。
 
…これは飽くまで動物行動学の知識もない私の勝手な憶測です。
インコのこの行動を欲求不満の表れ、などという見方をする人もいるかもしれない。
巣作りの材料にする、というのも考えられる。それだったら尾羽には挿さないな。
やはりこれは、恋人へのラブコール。私にはそうとしか思えません。

あの古書店店主の、もの静かな佇まい。
その横で、自分専用の文庫本と居場所を貰って、せっせと紙を切り続ける
そして自分を飾り続けるインコ君のあの満ち足りた姿。

あれを恋人同士と言わずして誰をそう呼べるでしょうか!
…ちょっと大袈裟かな(笑)。

それにしてもそれは、どこか大変静謐な幸せに満ちた、稀にみる
印象的なひとときと空間だったのでありました・・・・・・。


今日の音楽も、鳥関係で。古い曲ですみません。

http://www.youtube.com/watch?v=Vd6Pj12RC7A



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ジャンル : 学問・文化・芸術

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Re: 依里さんへ

依里さん。こんばんは。

はい。このインコ、とってもとっても可愛かったです。
おとなしくて、飼い主をほんとに信頼してる感じ。
そうしてまた、古書店の店主が、もの静かな感じの方だったんですよね。
私たち母子も、古書店では静かに夢中になって選ぶ。
しばし、静かなものが集まって、無言の時が過ぎてゆきました。
でも、とても豊かな時が流れている気がした。

インコ君が店主に恋をしていた、というのは私の勝手な想像ですが、
鳥のディスプレー行動というものがあるところからすると、そうはずれては
いないかも。
インコに限らず、人間に長く飼われてきた動物は、本当に一途ですね。
犬の飼い主への気持ちなど、ほんとに『上等』という気がします。
人が人をこのように愛せるか、というと・・・。う~ん、自信がないですね。
相手のことを想っているようで、実は自分の気持ちが第一だったりする。
わが身に引き比べてみると、恥ずかしくなりますね。

恋愛に限らず、対人関係での努力は足りない気がしないでもありません。
「ありがとう」「すみません」のほんの一言が、どれほど人のこころを
和らげるかしれないのに、そのほんのちょっとのエネルギーを惜しむ。
自分中心主義が、はびこってきているのかもしれません。
私も反省反省・・・。
もう少し、やさしさに満ちた世界になってくれたら、どんなにいいでしょうね。
そう、まずは自分から、そうすることですよね。

依里さん、ありがとう。

No title

鳥ってどちらかと言えば苦手なんですが、そのインコはかわいいですね。
一生懸命自分を飾ってアピールする姿、私も見てみたかったです。
しかしそう思うと、人間の方が努力が少ないのかなぁ。。。なんて思ったり。
最近、努力をするより、相手を羨んで切れてしまう、と言う話、よく聞く様な気がするんですよね。。。
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彼岸花さん

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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

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