『線香花火に寄す』

線香花火。
二種類あって、よく見る、こうぞ紙をこよりにして火薬を包んだものが、長手牡丹。
紙こよりのではなく藁すぼに火薬を塗ったものをすぼ手牡丹という。

私はこの線香花火が、昔から大好きだった。
点火してぼおっとひとしきり燃えあがった後、直径5ミリくらいの
赤い火の玉が出来る。この状態を花火師さんたちは『牡丹』と呼ぶそうだ。

最初に勢いよく弾けるように火花が散って、カヤツリグサのように見えるのが『松葉』。

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ぱちぱちと勢いよく弾けていたのがやがて下火になって、すうっとした枝垂れ
になるのが『柳』。

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やがてその柳も、ほんとにか細い短いものになっていって
今にも消えそうになる、その消えがての状態を『散り菊』と、呼ぶのだそうだ。

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そんな呼び方は知らずとも、私たちはずっと昔から、この線香花火の
燃えるにつれて刻々と姿を変えていくのを楽しんできた。

今日私が燃やしたのは、私が子供のころから親しんできた、藁すぼの線香花火。

この線香花火の材料は黒色火薬(硝石と硫黄と炭)。この炭が本来のものは
赤松の根っこを燃やして集めた油煙の煤。これはあの墨と同じ作り方。
この赤松も枝を燃やしたのではだめなのだそうで、何十年かたった根っこでなければならない。
日本ではこの松の根っこが入手しにくくなったため、現在日本でこの本物の
すぼ手花火を作っているのは、福岡県八女市にあるお店、一か所だけなのだそうだ。


…この夏も終わる。

…美しく年を重ねていかなければ。
暗くなった部屋で、なお夕暮れの残光をしずかに蓄えた障子のように、
消えがての炎がなお人を魅了する線香花火のように、
最後まで美しくいなければ。


…ああ!髪や衣服に黒色火薬の匂いが残っている!
なんと悩ましい晩夏の香り!


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                              ・・・余情の美






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テーマ : 思うこと
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Re: 乙山さんへ

乙山さん、ありがとうございます。

線香花火いいですよね。
私も実に20年ぶりくらいに花火をしてみました。
しかも線香花火だけ。こより巻きのではなく、昔から関西や九州では
主流だったという、藁すぼや葦に直接火薬を塗りつけた素朴なもの。

いまどきの中国産のもののように途中でぼたりと落ちてしまうことなどなく、
最後まで燃えきってくれました。

帰ってきたら、衣服や髪に黒色火薬の残り香が。
蚊取り線香の香りと共に、夏の懐かしい二大香りですね。

♪仕掛け花火に似た命~、という古い古い歌がありましたっけ。
打ち上げ花火とおもちゃ花火。
江戸の人はよくこの文化を生み育ててくれたものだと感謝したいくらいです。
こんなすてきなコマーシャルがありました。

http://www.youtube.com/watch?v=QhYeIyMjaR4

線香花火

彼岸花さん、こんにちは。
線香花火、いいですね。
もう何年も花火を楽しんでいません。

以前、池と小さな広場が近所にあるところに住んでいたとき、
池のほとりで花火を楽しんだことがあります。
もちろん最後は線香花火で〆。

赤い玉ができて、落ちそうになっているところからも
ときおり火花が出る瞬間、
そしてふっと消えゆく瞬間、

まるでそれが生き物か何かのように思えてきて、
そのあり方がおのれの生の縮図のように思えてきて、
妙にしんみりした気持ちになります。
プロフィール

彼岸花さん

Author:彼岸花さん
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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

ペシャワール会
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