『畢生の仕事』

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ご存知、ハヤカワ書房のポケミス、こと、ハヤカワ・ミステリ。

今日私は、ちょっと買い物に出たついでに、本屋を数軒、古書店を一軒
回って見てきた。
で、買ったものが、上にある、『機械探偵クリク・ロボット』。
ん~、読みたいから買ったというよりは記念に。

なぜ記念か、というと、長い間、この早川のポケミスの表紙を担当してこられた
勝呂忠さんが、今年の3月15日に83歳でお亡くなりになり、この本が
最後の本になったからである。これが第1737冊目。
勝呂さんの抽象画、イコール、ポケミス、と言えるくらいに長くこの表紙の仕事を
担当してこられた。
次の1738冊目からは31歳の若きデザイナー、水戸部功さんが担当することになって、
この8月に、新生ポケミス第一号が出た。
私がこれらのことを知ったのは、8月29日の朝日新聞で。

実は私がポケミスを手にしたのは去年が初めてである。
中身も勿論それぞれ楽しめるのだが、私は何よりも、このシリーズの体裁が
一目で気に入ってしまった。
実にすでに1730冊くらいも出た後で好きになったも何もいえたものではないが(笑)。

普通の文庫本よりちょっと縦長の体裁。
表紙は勝呂忠さんの鮮やかな色彩の抽象画油絵。ビニールカバーがかかっているのが特徴的。
何より私がこのシリーズを気に入ったのは、天地と小口に塗られた
う~、これはカナリアイエローとでも言おうか、鮮やかな黄色が、素晴らしく綺麗だと
思ったから。本文の用紙もかすかにクリーム色を帯びて美しい。

このブログの記事ででも一度扱っている。

勝呂さんという、洋画家で多摩美の先生などをしてらした方。
第何号から表紙を単独で担当されることになったのか、詳しいことはわからないが、
長い間、お疲れさまでした。
こころからご冥福をお祈りいたします。

一つの仕事を長く続ける、というのは大変なことである。
画家という職業の大変さと現実。絵を描き続けていくこと自体が、なかなか大変な
ことである。経済的な問題、また自分の情熱を保ち続けるということ、どちらの意味でも。
そうしたことからも、ずうっと一つの仕事を続けてこられた勝呂さんに
拍手を送りたいものである。

…畢生の仕事の持てた人生は幸せである。


表紙絵担当が新しく変わったポケミスは、表紙のロゴも変わった。
絵の形式などはその中身ごとに変えて、写真もつかったりするそうだ。
確かに新しく出た『卵をめぐる祖父の戦争』という本は、従来のとはイメージが一新。
ただ嬉しいのは、版型と、天地、小口の黄色と本文の紙質が変わっていないこと。

日本人はどうも、『新しいこと』=『素晴らしいもの』とい考える癖があるようで、
すぐいろいろなもののモデルチェンジを良くも悪くもしてしまう国民である。
それが日本人のエネルギーでもあるのだが、よいものを長く飽きずに使う、
伝統を作って守っていく、ということも大切。

ポケミスも、この大きさ、形と、この黄色の小口の美しさだけは
変えないでいてほしいなあ。


あ。他には、岩波新書の『新唐詩選』(手帳さん、買いましたよ♪)
新川和江詩集などを買いました。
『など』の部分については、またいつか書きます。

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ジャンル : 学問・文化・芸術

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Re: 乙山さんへ

乙山さん。こんにちは。
ポケミス。私はまだ、ちゃんと読んだのは2冊だけ。
持ってるのは3冊だけという、ポケミスファンとはとても言えない者です。
ただ持ってるだけで嬉しい、という、装丁のファンなのかな。
この小口などの黄色や全体の色調が、私の生きてきた5、60年代を
想わせるといいますか、なにか懐かしいのです。
掌に持ってやさしい大きさも好きですし。
ビニールカバーをしてくれたいるところなども、本を愛する人々が
作ったんだなあ、という感じがしますね。
執筆陣も凄いんですよね。私はミステリーにも詳しくないのですが、
それでも今見ると、錚々たるメンバー。

これを100冊くらい並べたいなあ、という野望もありますが、
表紙が変わったらあまり食指が動かず。これはやはり、乙山さんおっしゃるように、
古書店で、勝呂さんの表紙のを見つけたら買う、というのが良さそうですね。

ありがとうございました。

ポケットミステリー、少しずつ

彼岸花さん、こんにちは。
ハヤカワのポケットミステリーを少しずつ読んでいます。
天地、小口に塗られた黄色。
このおかげで汚れをあまり気にせず手に取れますね。

じつはね、ポケットミステリーの表紙を担当されていた
方のことはほとんど(いや、まったく)知りませんでした。
ただ、作風から同一人物が描いているとは思っていました。

乙山のウェブログのコメント欄でも書きましたが、
やはり古本屋さんで入手がいいですよね。
こちらでは神田界隈のような古本屋街がないのが残念です。

Re: れんげちゃんへ

カナリアイエローって、たしかに言葉の響き良いですよね。
この本の天地と小口の色、ほんとに綺麗なのよ。
大きな書店なら置いてあると思いますから、買わなくても見てくださいね。
昔はこんなふうに、天地や小口を塗ってある本が結構ありました。
金箔塗りとかね。
でもこれはぺーパーバックの廉価版なのに美しいところが好き。

そういえば、折り込みチラシにも、黄色い紙のがあるわね(笑)。
レモンイエローのと赤みがかった黄色のと。
赤みがかった黄色のやつは、たいてい赤い字で印刷してあるな。
あれ、同じの何十枚と重なってたら結構きれいだろうな。
現代アートです、なんってね(笑)。

昔、黄色の服が好きだった。
今でも着たいけれど、顔の色艶がね、ほら、もうそんな鮮やかな色に堪えませんから(笑)。

No title

カナリアイエローかぁ♪
いいな、なんかいい響き~。(気に入りましたぁ♪)
黄色い折込チラシも好きです。(笑)

Re:依里さんへ

私も実は3冊しか持ってないんです。
だから本当はこうして語る資格もないようなものなんですが。
ただ、新聞記事で、勝呂さんという方がそんなに長い間担当してらしたのか、と、
そのことに妙に感動したものですから。

私も、あれこれ手を出してはみますが、何一つ、自分でこれ!と思ったものに
巡りあわないまま60年が過ぎてしまいました。
そんな自戒を籠めての記事です。

また、仮に絵を生業にしたとしても、今はよくても来年の保証はない
不安定な職業。つくづくその2つの意味で、画家としてここまでずっと
一つことを続けるのは凄いなあ、と思ったのです。

ポケミスの本の仕様がとても好きでした。

No title

ご無沙汰してました。
ハヤカワは読んだ事ないんですが、このような表紙はよく目にします、本屋で。

ハヤカワの表紙絵、と言えば勝呂さん、ぐらいの有名な方だったんだろうな、と思います。
恥ずかしながら、私はよく知らないのですが・・・。

畢生の仕事。。。ですか。
私には縁遠い話で実感が湧かないのですが、私の周りはクリエイティブな仕事をしている人がチラホラいます。
常に情熱とかインスピレーションとか持ってるんだろうな。。。なんて、勝手に感心してたんですが、常にそう言う訳でもなさそうですね。。。
才能がある人ならではの悩み、と言う事なんでしょうか。。。

私なんかは創造力が全くないので、何かを生み出したり作り出したりする事を仕事にしている、尚且つ好きでやっている人を見聞きしたりなんかすると、何やら羨ましい気もしますが。。。

Re: 手帳さんへ

手帳さん。すてきな情報ありがとう。

ようやく夜も昼も涼しくなって、これからは本当に読書の季節。
楽しみに読んでいきたいと思っています。
どちらも読みとばす本じゃないですものね。

新唐詩選は、書店で拾い読みしただけでも、じんと。
新川和江さんは、単発的にこれまでも読んだことがあって、
いいなあと思っていました。詩集として買ったのは初めて。
手帳さんがお好きでいらして、嬉しいな。
また、全部読んだら、両方の本の好きな詩について書いてみますね。

ありがとうございました。

No title

彼岸花さん向きだったでしょう?

私新川和江さんの詩集が一番好きです。
彼岸花さんも好き?
どの詩が好きかなって楽しみに待ってます。
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彼岸花さん

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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

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