『熊取6人組のこと』

こんな映像、ご紹介します。
これは、hasutamaさんの ところで、こういうものがあるということを
ご紹介いただき、ぜひ皆さんにも見ていただきたいと思ったので、ここに
掲載します。4つに分かれていますが通しで見ても50分ほどの番組ですので、
是非見て欲しいです。

『なぜ警告を続けるのか ~京大異端児』

http://www.youtube.com/watch?v=-pqrpabtm4s

http://www.youtube.com/watch?v=a4c2Dca-Brg&feature=related

http://www.youtube.com/watch?v=e0AFOOyglC4&feature=related

http://www.youtube.com/watch?v=kjvmsnVqAPg&feature=related



京都大学原子炉実験所。
大阪府熊取町。大阪のベッドタウンの中に埋もれるようにたっている
原子炉の研究所。
そこには今約80人くらいの研究者がいる。
その中に、かつて『熊取6人組』と呼ばれる研究者のグループがあった。

と言っても、原子力を積極的に推進する立場に立って研究しているのではない。
むしろ、原子力発電の安全性に疑問を持ち、それを止めるために、日夜
原子炉の研究をしている学者たちのグループである。

原子力推進を自民党政権の頃から国策として進めてきた日本にあって、
京都大学という、国の運営する大学で、原発の危険性を訴え続け、
それをやめるために研究をしているグループというのは、原子力研究の学会にあっては
全くの異端児である。
しかしながら、原発に疑問を持って研究するこれらの学者の存在を許している京都大学は
まだいい方である。いや、珍しいと言っていい。

今回の福島第一原発の事故がテレビなどで報道される過程で、
テレビに出て政府や東電の言う通り、『ただちに健康に影響はありません。』
と言い続けている学者の人々。それらの多くが東京大学大学院工学研究系の
学者であるのを、奇異な感じにご覧になった方も多いと思う。
4/23付け、週刊現代の記事に出ていた。詳しくお知りになりたい方は、お読みください。
これは、一週刊誌のバイアスのかかった文ではなく、秘密でもなんでもない、
知る人は知っていることであると思うから。

まあ、簡単に言うと、東京大学を頂点にして、国公立、また私学の一部の
原子力研究の学者たちには、電力会社から多額の資金援助がなされている。
その見返りと言ってはなんだが、学者たちは電力会社の意を汲んで、
原子力発電を安全だと言いがちになってきたのである。
また、そこから出た人々はやがて国の原子力関連委員などになって、
官僚と共に、原子力政策を推進していく。
要するに、電力会社とその関連会社、国、そして学者が一体となって
原子力発電を推進してきたのである。いわゆる『原子力ムラ』である。

そんな官民一体の原子力ムラにあって、脱原発のための研究を続ける6人の学者たち。
当然、周囲からの風当たりは強く、学会にあっては冷飯を食わざるを得ない。
一人は故人となり、3人は定年退職して、今、実験所に残るのは、小出裕章氏
(4/5の私のブログで、ご紹介した『あえて最悪のシナリオとその対処法を考える』
http://www.videonews.com/on-demand/511520/001784.phpで登場していられる。)
それから今中哲二氏の二人だけ。
二人は61,60歳という年齢で、いまだに京都大学にあっては助教(昔でいう助手。
不安定で大変な仕事だけはおしつけられる身分である。
他の4人も助教、よくて助教授の身分だった。

そのように、学会にあっては明らかに不遇の身分でありながら、6人は
自分たちの学者としての良心に従って、原子炉を閉じるための研究と、
原発の危険性を訴え続けるという活動を、粘り強く、しかし細々と
続けてきた人々である。

しかし、とにかくこの映像を見ればお感じになると思うが、彼らの言動の
なんとすがすがしいことか。
世の栄達を望まず、自分たちの良心と使命感で地道な研究をしてきた人間の
すがすがしさ。

その彼らを揶揄し、彼らの言動が偏見に凝り固まっていると笑う『原子力ムラ』
の人びと、マスコミなどもいる。
いったいどちらの言い分が正しいのだろう。
あるいはどちらもバイアスがかかっているのであろうか…。

しかし、私はどちらを信じたいか。勿論この6人組の方である。
私は、この6人の話を聞いたとき、作家の村上春樹さんが
イスラエルの文学賞を受けることを決意し、そこで行った受賞スピーチ。
それを思い出すのである。以下に転載してみる。
なお、訳文は47NEWSさんからお借りしました。

途中略

「高くて、固い壁があり、それにぶつかって壊れる卵があるとしたら、私は常に卵側に立つ」
ということです。

 そうなんです。その壁がいくら正しく、卵が正しくないとしても、私は卵サイドに立ちます。
他の誰かが、何が正しく、正しくないかを決めることになるでしょう。
おそらく時や歴史というものが。しかし、もしどのような理由であれ、
壁側に立って作品を書く小説家がいたら、その作品にいかなる価値を見い出せるのでしょうか?

 この暗喩が何を意味するのでしょうか?いくつかの場合、それはあまりに単純で明白です。
爆弾、戦車、ロケット弾、白リン弾は高い壁です。これらによって押しつぶされ、
焼かれ、銃撃を受ける非武装の市民たちが卵です。これがこの暗喩の一つの解釈です。

 しかし、それだけではありません。もっと深い意味があります。
こう考えてください。私たちは皆、多かれ少なかれ、卵なのです。
私たちはそれぞれ、壊れやすい殻の中に入った個性的でかけがえのない心を持っているのです。
わたしもそうですし、皆さんもそうなのです。
そして、私たちは皆、程度の差こそあれ、高く、堅固な壁に直面しています。
その壁の名前は「システム」です。「システム」は私たちを守る存在と思われていますが、
時に自己増殖し、私たちを殺し、さらに私たちに他者を冷酷かつ効果的、組織的に
殺させ始めるのです。

 私が小説を書く目的はただ一つです。個々の精神が持つ威厳さを表出し、
それに光を当てることです。小説を書く目的は、「システム」の網の目に
私たちの魂がからめ捕られ、傷つけられることを防ぐために、
「システム」に対する警戒警報を鳴らし、注意を向けさせることです。
私は、生死を扱った物語、愛の物語、人を泣かせ、怖がらせ、笑わせる物語などの
小説を書くことで、個々の精神の個性を明確にすることが小説家の仕事であると
心から信じています。というわけで、私たちは日々、本当に真剣に作り話を紡ぎ上げていくのです。



この、村上春樹氏の作家としての良心の表明。
それはそのまま、清貧に甘んじながら、学者としての自分の良心に
従い続けてきたこの6人衆に通じる気持ちなのではないだろうか?
そうして、この場合の巨大な『システム』とは、官民あげて1950年代から行われてきた
原子力行政、そこで生まれる巨大な利権をむさぼり続けてきた電力会社、官僚、
政治家、マスコミ、その他の企業のことを指すのではないだろうか?

彼らのしてきたことはある点で国のためであり、正しかったのかもしれない。
しかしながら、そこに利権が生じ、それをむさぼる人々が現われて、
そのために、原子力発電の安全管理が二の次になっていたとしたら、…

彼らがどんなに立派なことを言おうと、私はやはり自分はいつも『卵』の立場に
立っていたいと思うし、清廉なこころに突き動かされて、原子力発電の
危険性を訴え続けた来た、この6人の『卵』の側の人々のいうことの方を
信じたい、尊重したいと思うのである。



この番組は、2008年。毎日放送。ディレクター津村睦夫氏、プロデューサー米阪研二氏。
6人の研究者たちと、この番組の制作スタッフにも、感謝と称賛の拍手を送りたい。
こんにち、福島第一原発で斯くも悲惨な事故が起きたから、雑誌やネットなども
彼らのことをクローズアップする。
しかし、官民あげて『原発はクリーンで安全なエネルギー』『大事故など想定する必要なし』
と長く言い続けていた時代に、あえて流れに逆らっても良心に従って研究を続け、
またそれを報道した志と心意気を、私は尊いものに思うから。





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Re: はなさかすーさんへ

こんばんは。
過分な褒め言葉、ありがとうございます。
でも、とっても嬉しいです。

『6人の侍』…ほんとそうですね。^^
原子力ムラの6人…。
実際は口でおっしゃるよりずっと、居心地の悪い環境でしょうね。
でも、それを気にせず、淡々と学徒としての道を歩んでこられた人々。
こういう人生はいいなあ、と思ってしまいます。
何ものにも縛られず、自由で強い。
功名心や嫉妬や、焦燥や、…そんなものがあると人は縛られますね。
小出先生の研究室の佇まいがいいですね。
自転車で通ってらして、暑い日にも冷房なしで研究続けて、昼がくると
手作りのお弁当食べて、また研究して…。

ただ、とっても悲しそう。
別の小出先生の対談があるのですが、その途中で何度も溜息をつかれてる。
『知る』が故の悲しみだと思います。
『知る』ことって、悲しみを伴うんですよね~。

はなさかすーさんにブログご覧いただけるうちにと思って、先日お話した
記事、一所懸命書いているのですが、まだまとまりません。
明日あたりまでお待ちくださいね。

とてもすてきに褒めていただき、胸を熱くしております。
ありがとうございます。
わたしも、清冽に生きていきたいなあ……。難しいですね(笑)。

6人の侍

彼岸花さん、こんばんは^^

1人少ないですけど、七人の侍ですね。京都大学は、面白いなー!

小出先生のことは、色々Webやブログで見聞きして来ましたが、
彼岸花さん、すがすがしいですね。流石^^尊敬に値します。

原発建設には、やくざの子会社も絡んでいますし、利権の構造が
凝縮されているのでしょうね。小出先生、尾行されたりしているそう
ですから、人間の裏には冷たい風が吹いているのですけど、反対に
暖かい風も吹いていることに感動を憶えます。人命を何とも思わず
殺戮する守銭奴のような残酷な人たちを、江戸時代のように市中
引き回しの刑にでも処すればいいものを、と思いますがまだそこまで
社会は成熟していません。これから暴かれていくのでしょうね。

彼岸花さん、光が出てますよ^^

Re: れんげちゃんへ

れんげちゃん。ありがとう。
こんなに長い記事、読みに来てくださることもさることながら、
れんげちゃんのような若い方が、エネルギー問題に興味を持ってくれて、
そして、誠実に勉強しようとしてくれてるってのが、すっごく嬉しい。
なんか、とっても力を貰ってる。

この映像は、hasutama さんとそれから、その日暮らしさんのところでも
紹介されています。
こういう生き方をする学者さんたちもいるのね~。というか、
学者たるもの、こういう風に誠実であってほしいなあ。

あのね。今、原発とは直接関係ない記事書いてる。
それも、興味深い内容を含んでいると思います。
また、長くなると思うけど、読んでみてくださいね。
途中でいくつかに分けようかな。

彼岸花さん。一所懸命勉強してるよ。
ありィ?フランス語どこ行っちゃったのかな(笑)。

No title

あぁ~、これは見てないなぁ。
hasutamaさん、ありがとう!!
彼岸花さんも、見なくても良いくらいに(笑)ありがとう!!
しっかり見させていただきまーす!!

Re: その日暮らしさんへ

あっ、あんまり書きすぎましたかしらね(笑)。
全部私がしゃべっちゃったかしら。

でも、やはり皆さんに映像は見ていただきたいです。
その日暮らしさんを初め、ご存じの方が多くていらっしゃるでしょうが
まだの方には是非。
私などがいくら説明しても伝わらない雰囲気というものが
映像からは伝わってきます。
このお二人の淡々とした語り口と、飄々とした態度。
六ヶ所村の菊川さんという女性の声の出し方と話し方の美しさ。
そういったものから滲み出る人格と言いますか、また、悲しみや怒り、と
いうようなものは、いくら私が書いても伝わりません。

ぜひ、みなさ~ん、見てくださいね~。

その日暮らしさん。ありがとうございます。

熊取六人衆

彼岸花さん、こんばんは!

もう、映像を観なくてもいいかも知れませんね。
プロフィール

彼岸花さん

Author:彼岸花さん
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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

ペシャワール会
http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/pekai/signup.html
国境なき医師団
http://www.msf.or.jp/donate/?grid=header02
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