『理不尽』

日米が共同で、モンゴルに使用済み核燃料などの貯蔵・処分施設を作る計画が
昨秋から進んでいたそうだ。

5月9日付。毎日新聞。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110509-00000001-maip-soci

ご存じのように、日本では、青森県上北郡六ヶ所村弥栄平地区に、1993年から
使用済み核燃料の再生工場が建設されている。当初の計画では
7600億円の予定だったが、まだ完成に至らず、2011年2月現在で
2兆1930億円にまで建設費用が膨らんでいる。

敷地内にはウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、
高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターが併設して建設されている。
今後 MOX燃料工場の建設も予定されており、核燃料サイクルのための
核燃料コンビナートを形成する。

ところがこの六ヶ所村の施設は、基本的に、核燃料サイクルと言って、
日本全国の原発で燃やされた使用済み核燃料を集め、
その中から核燃料のウランとプルトニウムを取り出し、それをもんじゅや、
普通の軽水炉で燃やして、何回もそれをサイクルさせようという考えの
もとにつくられた施設である。核のゴミ置き場ではない。
しかし、プルトニウムを燃やす高速増殖炉もんじゅは、計画自体が頓挫。
核燃料を『サイクル』させるという謳い文句とは異なって、日本では
毎年毎年、各原子量発電所から大量に使用済み核燃料が出て、それの
行き場がないのである。プルサーマルなどと言って、ウランにプルトニウムを
混ぜたMOX燃料を軽水炉に使用してはいるが、危険な使用済み燃料は
溜まっていくばかり。
仕方ないので、各原発の施設の中に、使用済み核燃料プールを設け、
そこで冷却を続けている。
福島第一原発4号機の、使用済み核燃料プール、あれなどを見ればどんな感じか
おわかりいただけるだろうと思う。

アメリカではネバダ州ユッカマウンテンにブッシュ政権時代、巨大な地下処分場を
作っていた。が、地下水の問題が指摘されて、オバマ大統領が計画の中止命令を出した。
日本もアメリカも、どんどん出てくる使用済み核燃料の処分場がないのである。
いや、世界各国にこの問題は共通している。

そこで、アメリカと日本はモンゴルに目をつける。
モンゴルは地盤が固く、また、原子力による経済発展を望んでいた。
その両者の思惑が合致し、昨年の秋から、極秘裏に3国の間で計画が進められて
来たらしいのである。

しかしながら、日本で今回の大地震が起こり、原子力推進の動きは一時
凍結に近い。モンゴルに、使用済み核燃料の最終処分場を、という
日米の思惑は、これからどうなっていくのかまだ分からない。

今回の事故でよく一般の人も知ったことと思うが、使用済み核燃料、とは言っても、
それは巨大な崩壊熱をまだその内に有する、大変に危険なものである。
そうしてそれは、安定的に、5年も6年も水の中につけて冷やし続けなければならない。
そうして後、初めてプルサーマルに回すために再処理されるか、あるいは
アメリカのように、そのまま地中深く埋めてしまおうとするか、とにかく
次のステップがようやく踏めるようになるという厄介なものである。
プルサーマルで再利用とは言っても、全部が使いきれるわけではなく、
一回で処分してしまう場合に比べて、僅かに、1.5倍ほど有効なだけ。
プルサーマルの過程で、さらに多くの高レベル放射性廃棄物や低レベルの廃棄物を
大量に生み出す。それらの貯蔵場所も、日本はじき満杯になってしまう。

皆さんも、今回の福島原発1~4号機の内部の設備が、映像や図で繰り返し
紹介されたので、各原子炉建屋には、原子炉格納容器そのものの他に、
使用済み核燃料のプールがあるのをもう、ご存知でいらっしゃるだろう。

2年前、『故郷の廃家』で私自身が書いた記事を一部転載する。
参考文献等はそちらでご覧いただきたい。

  『100万kW 級の原子力発電所を1年間稼働させるのには、40000本弱の燃料棒が
  必要で、一年間運転すると少なくとも30トンの使用済み燃料が取り出される。           
  
  『2004年版原子力白書によれば、日本の原子力発電所の
  使用済み核燃料貯蔵量の合計は、11,110トン。
  管理容量が16,940トンというから、使用後の燃料を各原発で一時的に
  貯蔵して置いても、いずれ近いうちに、いっぱいになってしまう。
  解決法の見つからぬまま、多くの国ではしかたなしに、使用済み燃料は
  30~35年もプ-ルに入れたままにしておくこともあるという。』

2004年時点でこの数字である。いまはいったいどのくらい溜まっているものやら!

核のゴミは、そうやって各原発などに溜まっていくばかりなのである。
いっぱいになれば、原発の稼働そのものが行き詰ってしまう。
そういった意味でも、日本の原発は、実はもう限界にきているのである。                  

だから、日本もアメリカも、処分場を見つけようと必死である。
しかし、考えてもみよう。
いくら、モンゴル政府自身がそれを経済発展のために望んでいるとはいえ、
日本やアメリカ、つまり他国の核のゴミを、自国に持ち込まれるのである。
なぜそんな危険なものを、お金のために持ち込ませるのか?と思うだろう。


ああ。しかしながら。
日本では、これまでそれを散々国内でやってきたのである。
つまり、地味が痩せていて、あまり耕作に向かないような僻村。
他にめぼしい産業もなく、働く場所もなく、村全体の所得レベルの極めて低いような
地方の村や町。経済的に行き詰ったようなそんな村に、巨額のお金をちらつかせて
原子力発電所を作ることに同意させる…。

私は、日本の経産省、アメリカのエネルギー省、そして、誘致した
モンゴル外務省が計画している、この核の処分場の話を聞いたとき、
思わずため息が出てしまった。

ああ!またしても、札びらで貧しい地域のひとの横面を叩き、
強者が原子力関連施設を作るのか!と。
そうしてそれらは、いよいよの時が来るまで、大抵は水面下で一部の人びとによって
話が進められていく。
六ヶ所村に石油コンビナートの計画が持ち込まれたときのように。
そうして、心ある人が、これはまずい!と反対の声をあげても、
その時にはもう立地は承認され、工事はもう決定してしまい、お金も動いて、
流れは止めようがなくなってしまっている。
後は、もう『決まったことは仕方がないよ』『出来ちゃったものは仕方がないよ』
と、あきらめるのである…
そうして、いったん今回のような重大事故が起きると、誰ももうそれを止められない。
真っ先に被害を受けるのは地元民である。そうしてそれは地元にとどまらない。

今、神奈川、静岡のお茶に暫定基準値以上のセシウムが検出され、
岩手、宮城など、東北地方の牧草もまた、汚染されているとのことである。
海の汚染に至っては、これからどこまで広がっていくことか。
日本だけの問題ではすでにない。
そうしてそれは、2012年という一時点ですむことでさえなく、これから
何年も、何十年も、正直に言えば数百年も監視を続けなければならない汚染を
この地球に、そして私たちの子供たちに残したのである。

私がかくも腹を立てているのは、この理不尽に対してである。
この、馬鹿馬鹿しいほどの不条理に対してである。

いったい誰が、原発事故に、永久的な責任を負えるのであろう?
推進してきた人々の、いったい誰が?
もう、決まったことは仕方がないよ、と言って流れのなすがままに任せてきた
私たち自身の、いったい誰が?
私たちは、自分たちがふんだんに電気を使うために、モンゴルの人びとに
危険な放射性廃棄物をお金の力で押しつけるのか?
モンゴルの人びとは、それをよく承知しているのか?

なぜ、なぜ、こういう大事なことが、早い段階で明らかにされ、
決定までに十分な情報が提供され、十分な議論が国民の間でなされたのち、
国民の総意を問う形で決定される、ということが出来ないのであろうか。



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Re: その日暮らしさんへ

福島第一原発の事故が起こって、今はこの話はどうなっているか
わかりませんが、国民の生活に大きな影響を与えかねないこうした重要な問題が、
政府などのえらいひとの間で、いつの間にか水面下で進められ、
ことが動き出してから、ようやく国民に知らされる。
まあ、そうは言えど実は小さな報道はなされているのかもしれないけれど、
よほど問題に関心がある人でないと気づかないような発表のしかたしかされない。
多くの人が、これはまずいんじゃないの?と思い始めたときは、
もう計画は実行に移されていて、引き返しがきかない…。

こういったことがどれほど多いことでしょう。
なにも原発関連の問題だけではない気がします。
例えば国立大学の独立法人化など…。

モンゴルの人々の果たしてどれほどのひとが、この問題の重要性を認識していることでしょうか。
あの広大な土地を持つアメリカでさえ、放射性廃棄物の最終処分場は見つけられないでいる。
日本も、高知県東洋町や北海道幌延町、また遠隔地の孤島などに処分場を
検討してきたけれど、まだ見つけていませんね。
それなのに、国は今回の事故前は原子力による発電の割合を50%にまで
持って行こうとしていた。核の廃棄物の置き場もないのに、
いったいどうするつもりだったんでしょうか。モンゴルをあてにしていたのかなあ。
とんでもない話ですよね。

人間の幸せって、なんなのでしょう。
…私は最近それをよく考えます。

No title

 こんばんは!

 朝日新聞から毎日新聞に替えていたので、この記事は読みました。姑息です。情けなくなりましたね。この日米同盟のやることに!

Re: 鍵コメさんへ

鍵コメさん。ありがとうございます。

怒ってばかりで、私も少々疲れました(笑)。
でも、本当に、あちこちで、動きが出ていますね。
私もそれを大変嬉しいことに思います。
次回はそうした動きを追ってまとめてみたいと思っています。
嘆いてばかりじゃ仕方ないですものね。
これからどうしたい、という方向を少しでも示さなくっちゃ。
希望を語らなくっちゃ。
一人一人の声は小さいけれど、それが集まったら大きな力になりますね。

私はやはり、もう自分に人生の時間があまりないと思うものだから、
ちょっと短気になってるのかな…。

鍵コメさん。ありがとう。勇気がわきました。
そうですね。きっと山は動かせる。
私もそう信じたいと思います♪



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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

ペシャワール会
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