『一人遊び』 私の「もの」がたり⑪

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おや、なんだか美味しそうなものが。
私が焼いたクッキー。な~んてのは冗談で、
実はこれは、クッキーの古い空き缶の蓋の写真(笑)。
中に何が入っているかというと。


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紙の着せ替え人形である。

昔。今からもう30年以上前になるかな。
子供がまだ小さい頃。
一橋大学の近くの小さな洋書店か、銀座イエナ洋書店かのどちらかで買ってきたもの。
両方で買い集めたのだったかもしれない。
最初からこういう風に切ってあるわけではなく、絵本のようになっているのを、
一人ひとり、丁寧にハサミで切り抜いていくのである。
ここにあるだけで、4,5冊分の量かな。
本はこんな感じ。
これはもともとフランスで出版されたものがさらに、アメリカ、カナダ、イギリスで
発行された、とある。


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季節はちょうど今頃、1月か2月頃だったろうか。
寒い冬の夜である。
ストーブの暖かく効いた団地の部屋で、
若い母親の私が、一所懸命かたい紙を切り抜いている。
4歳くらいの娘は、私のすぐそばにぴたりと座って、
私が人形を一体一体、ドレスを一着一着切り抜いていくのを待っている。
娘の息が、かすかに私の手元に感じられるほどに近く座って。
早く早く次のを切り抜いて!という願いが、その息遣いに感じられる。

でも、母親の私は急がない。
細かにハサミを動かして、一人一人丁寧に切り抜いていく。
勿論、一晩で一冊に数十個もある衣服や、帽子、傘、靴など
一度に切り抜けるわけもないから、ある程度して疲れたら、
「また明日ね。」と言って、缶の蓋を閉めるわけである。

翌晩は、もしかすると丁度今日のような雨の日だったかもしれない。
ひょっとしたら夜半から雪に変わるかもしれない、という、
今日のような夜。
また、娘が缶をいそいそと自分の小さな机から取り出してくる。
夕食の片付けも終わった、夜8時9時。
私の切り抜き作業がまた始まる。
私の手元を覗き込む娘の小さな鼻息!
だいじょぶ。娘の目を誤ってハサミでつついたりするような、
そんな不用心なことは、若い母親だったけれど私は絶対にしない。


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「この人は?」
「これはねえ。ダフネさんよ。足元にそう書いてある。
ダフネって沈丁花のことよ。もうすぐ沈丁花の花が咲くよ。
いい香りなの。咲いたら教えてあげるからね。」



♪ 『冬の夜の一人遊び』 
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は~い。私、ダフネ。日本語では沈丁花よ。
沈丁花さんって人がいらっしゃるの?私、その方に似てるかしら。
「似てない」って誰かが言ってるわね。
ところで、沈丁花さんってどなた?(笑)

このドレス。わたくしに似合って?


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「は~い!あたくしたち、ダフネさんの友人。
左がカロリヌで右にいるのがベアトリスよ。
まあ!すてきな殿方も見てらっしゃるのに、普段着姿で恥ずかしいわ!
早くドレス着せていただかなくっちゃ!」



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「ああ。これでほっとしたわね。
ところで、ねえ、ダフネ、今度の舞踏会で何を着ていらっしゃる?
ドレスはたくさんあるのだから、もっともっとお着替えしてみたいわね。」
「そうね。みんなで鏡の前で比べっこしましょう。」


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「そうよ。もっともっと。」
「だって、あたくしたち、30年ぶりにクッキーの缶の外に出たんですもの。」

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テーマ : 思うこと
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Re: えめるさんへ

確かに皇妃エリザベートのドレスに似たものがあるかもしれませんね。
ダフネさんが着ているものでしょうか。

エリザベートは身長170センチくらいで、ウエストは50センチ。
靴のサイズは22センチというんですから、どれだけ華奢なの?という感じですね。
でも、彼岸花も若い頃はウエスト58センチくらいでした。
今は?訊かないでくださいね。

えめるさんも紙の着せ替え、おやりになったんだ!
小さいえめるちゃんは、どんなお話を紡ぎだされていらしたのでしょうか。
きっととってもロマンティックなところのあるお嬢さんでいらしたんだろうな。

私の娘はね、ままごと嫌い。
だから、着せ替えで役どころを決めて劇をやったりするというよりは、
私が切り抜くのをそばで待ちかねていて、でき上がったのをクッキーの
缶の中に入れる、ただその行為だけを楽しんでいたようでした。
わさわさと、ドレスや小物、人形などが増えていく、その感じが
ただ好きだったようですよ。
蒐集癖はすでにその頃からあったか!という感じです。
三つ子の魂百まで、というところでしょうか。

コメントありがとうございます。
FC2ブログは不具合で昼間大変だったんですよ。
もう直ったかなあ。

No title

あっ! このお人形のドレスはっ。皇妃エリザベートのドレスでしょうか。
たまたま今日その人のことをネットで検索したんです。
慎重も高く、ウエスト50センチ。体重50キロぐらい。
彼女は美貌を保つため、非常な努力をしたそうですね。

紙の着せ替え、懐かしいです。私もやりました。
女の子ってみんな、おしゃれが好きなんですよね。

Re: 乙山さんへ

コルセットはともかく、クリノリンという言葉をご存じということに
驚きました。
この時代に限らないのかもしれませんが、女性たちは美のために、
そうして殿方たちの気に入られるように、まったく涙ぐましい努力を
してきたのですね。
ウエストなど、男性の両手の親指と人差し指を輪にしてすっぽり握れるくらい細く
コルセットで締め上げていたといいますものね。
『風と共に去りぬ』の映画の中でも、スカーレットが、乳母やにぎゅ~っと
コルセットの紐を締めさせるシーンがありましたっけ。


冬の静かな夜に、ちょっと昔を思い出して遊んでみました。

・尾原が

クラシックなスタイル

こんばんは、乙山です。
おお、映画や写真、昔の挿絵の中でしか見られなかった、
クリノリンやコルセットが……
もちろん、コルセットが見えているわけではないのですが、
中に仕込んでいないとそのようにウェストがくびれて見えないのでしょう。
背筋が伸びてますね。
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彼岸花さん

Author:彼岸花さん
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『しだかれて十薬忿怒の息吐けり』

『南亭雑記』の南亭師から頂戴した句。このブログになんともぴったりな句と思い、使わせていただきます。
十薬とはどくだみのこと。どくだみは踏みしだかれると
鮮烈な香りを発します。その青い香りは、さながら虐げられた若者の体から発する忿怒と抗議のエネルギーのよう。
暑い季節には、この強い歌を入口に掲げて、私も一民衆としての想いを熱く語りましょう。

そして季節は秋。
一足早いけれども、同じく南亭師からいただいた、この冬の句も掲げておきましょう。

『埋火に理不尽を焼べどくだみ荘』

埋火(うずみび)は、寝る前に囲炉裏や火鉢の燠火に灰をかぶせて火が消えてしまわぬようにしておいた炭火などのこと。翌朝またこの小さな火を掻き立てて新たな炭をくべ、朝餉の支度にかかるのです…

ペシャワール会
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